日本の「たばこ訴訟」が東京高裁でも22日に敗訴した。喫煙による肺がんや肺気腫などの患者・遺族6人がJTや国を相手取って、6000万円の損害賠償と広告の差し止めなどを求めていた。裁判の判決が流れてからのブログ上の反応は原告に厳しいものが多い。
「[SMOKE]東京高裁、喫煙患者側の控訴を棄却」の「『もし病気になっても誰かが何とかしてくれる』と考えているような奴は最初から煙草なんざ吸うな」といったあたりが代表的な発言だろう。しかし、起きたことは、好きで吸ったというほど単純ではない。
判決は一審の踏襲らしいので禁煙広報センター
「たばこ訴訟」にある一審の判決要旨を読めば足りよう。「たばこの製造・販売自体の違法」の項にある「たばこ事業法等の国の法律は,たばこの製造・販売そのものを適法行為と取り扱っている」がポイントであることは直ぐに分かる。判決で違法性を認めることは、たばこ事業法の枠組みをひっくり返すことに直結する。原発訴訟で特定の1基分だけ不法認定するよりも社会的影響は甚大だ。そんな度胸がある裁判官は希だろう。
Googlemのニュース検索でたばこ訴訟を調べたら、偶然にも5月末に英国でも初のたばこ訴訟判決があったらしく、勝ったタバコ会社の株が上がったと伝えていた。巨額42兆円の和解に至った米国とは事情が違う国が多い。
日本の厚生労働省は最近、急にタバコ抑制に振れているように見える。私の
第135回「たばこ依存脱せぬ日本人を考える」に掲示しているグラフにあるように、肺ガン死がガン死因トップになり、さらに上昇の勢いが収まらぬ深刻な事態に立ち至ったからにすぎない。戦後、まずまず豊かになってから50年間も野放図にしてきたツケ、医療費の大膨張を目の前にして慌てているだけだ。判決は1972年以降、外箱に注意表示があったと弁解がましくしているが、当初は本当に誰も気に掛けぬ風だった。
お隣の中国もタバコが税収の1割も占める財政構造にあり、肺ガンが胃ガンからトップの座を奪ったと報じられたのに、広告の抑制など有効な手が打てない。しかも、国際的に見て異例に重い葉質のタバコときている。日本の経験からして10年後に肺ガン死が深刻な事態になったとき、中国でたばこ訴訟は起きないのだろうか。その時「好きで吸ったのさ」という逃げは効くのだろうか。