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by ydando
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臨界事故が沸騰水型は欠陥原発と証明 [ブログ時評77]
 【注:福島第一原発の炉心溶融で来訪された方へ】
 最新のエントリーは「Blog vs. Media 時評」でご覧ください。「福島第一原発3号機も炉心溶融、後手の連続」(2011/3/13)などが読めます。


 北陸電力志賀原発1号機の1999年臨界事故発覚は、まず7年間の隠蔽事実そのもので原子力全体への大きな不信を生んでしまった。その後、東京電力など4原発で同じような複数本の制御棒同時脱落事故があったと公表され、一般的な不信感を問題にしている時ではなくなった。国内の原発を加圧水型と折半している沸騰水型炉が、フェールセーフの約束を無視した欠陥原発だったと判明してしまったのである。

 核分裂反応を一定の範囲にとどめることが原発の至上命題であり、反応を進める中性子を吸収する制御棒の出し入れが決定的な役割を果たす。この制御棒を、加圧水型炉は炉心の上から吊る方式であり、制御不能になっても最悪でも炉心に落ちてくれる。沸騰水型炉では炉心上部で蒸気が発生している事情から制御棒を炉心底部から上方向に挿入する。

 重力に逆らって重い制御棒を上に突っ込む点に沸騰水型炉の危険性があると指摘されたが、電力会社や国は「制御棒の落下には機械的な歯止め『ツメ』が付いており安全」と言ってきた。しかも制御棒は1本ずつしか動かさない仕組みなので「事故解析は制御棒1本の挿入失敗や脱落を検証すれば足りる」と裁判の場でも突っぱねてきた。ところが、志賀原発1号機で起きたのは3本もの同時脱落だったし、他の4原発でも2、3本の脱落だった。

 3月20日になって、これまで隠されていた機構上の秘密が表に出てきた。制御棒は水圧を使って動かしていて、弁の開閉を間違えると異常な水圧が発生することがあり、その場合はツメは強制的に外されてしまうのだった。これが安全装置かと問いたい。

 「謝りゃ良いというものでもなし 其の参」(旅限無)は驚き、こう指摘する。「『開閉する弁の順番を誤った』のは人間で、記事を読む限りではこうした人的ミスを想定した設計にはなっていない事になります。ならば、絶対にそんなミスをしない人間をその操作に当たらせねばなりませんが、それは人間を理解して居ない傲慢な態度でしょうなあ。どんなにメチャクチャな操作をしても、絶対安全に自動停止してくれないと困りますぞ!」

 各地の住民が起こしている裁判で弁操作について危険性指摘はあった。「志賀原発1号機のスクラム信号は『中性子束高高』」(東電不正事件と老朽原発)が報告している。「制御棒が引き抜かれ,スクラム信号が出ても制御棒が入らなかったのは、閉めてはならない弁(F101弁)を誤って閉めたからと言われていますが、今、静岡地裁で係争中の浜岡原発運転禁止請求事件でも、現場検証の際にこの弁が問題になりました。原告側はこの弁を閉めたらスクラムがかかっても制御棒が入らないこと、なのに弁には閉止禁止のふだがなかったことを確認しています」

 志賀原発1号機で起きた臨界事故がどれだけ危険な状況だったか。炉内中性子束のグラフを入手、公開しているブログがある。「これが志賀原発のモニターのコピーだ!~手書きで『点検』と姑息な隠蔽工作!」(情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士)を見ると中性子量が激増して振り切れている。15分間に12回の警報音が中央制御室で鳴り響いた、恐るべき事態が想像できる。無事に収束できて幸運としか言いようがない。グラフには国の専門官に見せて問題にならないよう「点検」と書き込んで、実際に起きたことではなく機器点検中のエピソードのように誤魔化す工夫もされている。こうした記録は事故前後の部分だけ削除されて、北陸電力には残っておらず、職員が個人で持っていたという。

 事故隠蔽は発電所長が判断し、現場だけで行われたことになっている。伝えられている動機は、2号機の着工を間近に控えて影響を心配したという。それだけだろうか。ブログではさらに踏み込んだ考察がある。

 「志賀原発の制御棒脱落=臨界事故はもっとも危険なものだった」(薔薇、または陽だまりの猫)は経緯をまとめて訴訟対策だったとみる。「93年に運転開始した志賀原発は当初からトラブル続きですが、この前年の98年には復水器内部の防熱板が落下し、復水器細管を破損するという事故を起こしました」「市民団体は志賀原発の差し止めを求めて訴訟を起こしていて、この時は名古屋高裁金沢支部の判決が下された直後でもありました。98年9月の判決です」「裁判は最高裁に上告されており、臨界事故の時はまだ棄却決定はされていませんから、この事故が明らかになっていれば実質審理が再開され別の結果になった可能性だってありました」「この臨界事故は、裁判で原発の固有の危険性として主張している『制御棒挿入失敗は安全審査での想定を上回ることが起こりえる』『制御棒挿入失敗は人為ミスや操作ミスでもあり得る』『ECCSも機能しない可能性はある』という主張がそのまま実際に起きたものであり、1号機訴訟でも2号機訴訟でも原告側が主張していた内容に沿った事故であったわけです」

 経済産業省の原子力安全・保安院は国会で「誤操作によって制御棒の歯止めが外れ、引き抜かれた」と答弁し、構造上の問題ではないとの立場だが、この弁明は通らない。原子力で言われてきたフェールセーフの原則は、どこに行ってしまったのか、説明する義務がある。起きうる事故の想定も従来とは全く違ってしまうはずだ。安全審査の有効性が根底から覆ろうとしている。

※続いて「東電福島第一・7時間半もの臨界事故に驚く」を執筆。
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# by ydando | 2007-03-21 17:57 | 科学技術
奇怪、不可解、Windows Vista肥大化 [ブログ時評76]
 1月末の「Windows Vista」発売から1カ月、パソコン売り場からは旧バージョンOS「XP」は消えかけているのに、Vista購入者のブログからは「使い物にならない」「旧バージョンに戻した」などの発言が巻き起こっている。私も新OSに魅力を感じつつも、大学に入る子どものためにはXPパソコンを駆け込み注文したばかり。もともと基本ソフト(OS:Operating System)を数年ごとに改良、新商品として売るのはマイクロソフト社の都合でしかない。今回、これほど肥大化したOSから聞こえてくる誤動作、バグは相当に奇怪であり、「超・複雑化したシステム」への「人知の限界」を感じさせなくもない。

 まず、全体の普及状況。3月7日の記事「インターネットコム株式会社とJR 東海エクスプレスリサーチが行った Windows Vista に関する調査」が「官公庁、自治体、民間企業に勤務する20代から60代の男女330人」に聞いたところ、「自宅 PC の OS が『Windows Vista』と回答したのはわずか0.9%だった。また、勤務先で同 OS が導入されているところは皆無だった」。日本より急速に普及と思われた米国でも意外に緩やかと伝えられる。

 プロ級ではない、普通のパソコン利用者と思わしき方あたりから紹介する。「Vistaはなかなか手ごわい」(水俣の街の片隅から)は「新OSはそれなりに素晴らしいが、あえて言えば、私のような使い方の範囲では改めて新調することもないようだ」「バグもあるようで、私のホームページが誤作動してしまう。インターネット・エキスプローラの問題かもしれないが、前のパソコンでは問題なかったのだから、やはりバグと言うべきなのだろう。ここしばらくはそんな状態が続くだろうから、旧バージョンで確認を取らなければ更新も危ういものになりそう」

 これが3月10日付の記事。旧バージョン機が、まだ側にあれば辛抱ができなくもないが、更新したウェブをダブルチェックしなければならないとは……。

 周辺機器メーカーから出た奇怪な情報で最も気になったのが、キヤノンの「デジタル一眼レフカメラ『EOS-1D』、『EOS-1Ds』をご使用のお客さまへ」で2月28日付。「デジタル一眼レフカメラ『EOS-1D』、『EOS-1Ds』で撮影したTIFF(RAW) 画像データを一定の条件下で回転または編集した場合、オリジナルの画像データが消失することが判明いたしました」とあり、回避方法としてはWindows標準ソフトを使わずに、キヤノンの標準添付ソフトを使うように求めている。

 こうなると、際限がない「特殊」モグラ叩きゲームになると思われそうだが、実は、ごく普通の場面でバグが続出している。

 「Vistaのバグ(その1)ファイル名を変更できない!」(UsefullCode.net)は、ウインドウの大きさとの相対関係でファイルに長い名前を付けてしまうと変更ができなくなり、後でウインドウ内をクリックするとファイルが見えなくなってしまうと報告している。さらに「Vistaのバグ(その2) 残り時間が表示されない!」は「ファイルの移動やコピーに関するバグとして致命的なのは、ファイルをエクスプローラー間でドラッグ・アンド・ドロップした直後にエクスプローラーのウインドウを閉じたときに、移動やコピー操作が勝手にキャンセルされてしまう」「この現象はタイミングの関係なのか、いつも起きるというわけではないため再現するのが難しい」と述べる。

 これまでに取り敢えず修正されたバグは多数あるようだが、そんな機械の気紛れに、実務をしている人間がお付き合いしている暇があるのだろうか。

 NIKKEI_NETの「Vista講座最終回・今夏、今冬、来春…Vistaの本当の買い時は?」は、どうしてVistaが未完成に見えるのかを考えて「ムーアの法則」(CPUなどコンピューターパーツの性能は、18―24カ月ごとに倍になるという、米インテルの共同創業者ゴードン・ムーアの説)を引き合いに出しWindows Vista構想「2000年の登場当初は動作周波数が1.5ギガヘルツだったPentium 4は、2007年に約9ギガヘルツで動作するはずだった。しかし2000年代後半からは、消費電力あたりの性能が重要視されるようになり、現在でも最高クロックは3ギガヘルツ前後に留まっている」。そのために予定された多くの機能が見送られて途中から構想を変更、再開発に至った。「この方針転換がVistaで見受けられる数多くのバグに影響を及ぼしている可能性はありそうだ」とみる。

 こうした専門家たちは、「実用段階」のバグの数々を、お金を払って購入したユーザーの「協力」で潰した挙げ句、1年後くらいには出される改訂版OSをお買い得と考えているようだ。「XP」はパソコンの主記憶メモリーから100MBくらいを占拠してしまうと言われた。「Vista」機では主記憶メモリーが1000MBでも足りないと言われていることから、数百MBを独占してしまうのではないか。これは数億の命令が書かれたシステムがあるのと同じことだ。

 この巨大システムの中で全てが整合して行われる保証をどう取り付けるのか。家庭に入り込んでしまうパソコン――やがては家庭内機器全部の制御も想定されているだけに、「高機能化=複雑化」とは違う道を考える時期に来ているのではないか。
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# by ydando | 2007-03-12 00:37 | 科学技術
安倍内閣は産科医療崩壊とは思わない [ブログ時評75]
 「産科医減少は出生数が減って医療ニーズが低減した反映」(柳沢厚生労働相国会答弁)――「医療崩壊が産科から始まってしまった [ブログ時評59]」などで警鐘を鳴らしてきた私には、手足から力が抜ける、虚脱感を呼ぶ発言だった。柳沢厚労相の以前の失言連発には取り合う気にもなれなかったが、今回は厚生労働省の本音が白日の下にさらされた。衆院予算委答弁から数日して安倍首相も柳沢厚労相もマスメディアの質問に答える形で、お産のリスクと産科医の激務ぶりにコメントしたが、後出しフォローは額面通りに受け取れない。

 発言自体は2月7日の予算委であり、民主党の枝野議員が「医師の数がなぜ産婦人科と外科だけ減っているのか。大臣はどう理解されていますか」と問い、柳沢厚労相は「産科は先ほど来、触れたと思いますが、出生数の減少で医療ニーズがはっきり低減していることの反映と承知いたしております」と答えた。

 私の「ブログ時評」へ13日に「産科医師数が減っている理由は少子化とは関係ないでしょ」(Candysays’s Diary)からトラックバックをいただいて知った。「私は、周産期医療に赤ちゃんたちのケアをする立場として従事してきたので、産科医療の実情には多少は通じているつもりです。今回の厚生労働大臣の発言を日本の産科医師が知ったら、多くの産科医師はがっかりするでしょう。私は、産科医にもいろいろな人がいるのを承知しているつもりですが、正直に働いている産科医のやる気を削ぐような発言に対しては強烈な嫌悪感を感じます」と嘆かれている。

 既に産科医、医療関係者の間では、大問題として議論になっていた。だからこそ、当日、予算委を取材していた在京メディアが1社として反応しなかったのにも驚かされた。朝日新聞が17日朝刊でようやくブログやネット上の動きを伝えた。今回は完全にブロガーたちの問題意識が先行した。

 厚労省には例えば「各診療科別の医師受給について」のようなデータが用意されている。「産婦人科医数と出生1000人当たり産婦人科医師数推移」グラフを見れば、出生1000当たりの産婦人科医師医数は、平成6年の「8.9」が平成16年で「9.1」と何の問題もないかのようだ。経済通の柳沢厚労相には「需給バランスの問題ですよ」と進講する官僚の言い分がすんなりのみ込めたのだろう。ところが、そうではない。産婦人科医師医数は1万人以上いるのだが、日本産婦人科学会が2005年末現在で調べたたら、お産を扱っている医師数は7873人にまで減ってしまっていた。残りは産科を止め、婦人科だけを担当しているらしい。

 新人医師の研修医制度が変わって、拘束時間が長く深夜の出産も当たり前の産婦人科は敬遠されている。大学病院は本体が医師不足に陥り、系列病院に派遣していた産婦人科医を引け揚げつつある。それが各地の病院で産科休止を招いている。お産を扱うリスクの高さは、福島県大野病院での医師逮捕、刑事罰適用で全国的に注目されるようになった。体力的・精神的に限界を感じ、個人的に見切りをつけて辞めていく医師も多い。「【産科・小児科 休止一覧】 日本全国 今後の崩壊予定」(勤務医 開業つれづれ日記)に休止や縮小の情報が集まっている。以前に科学部の医療担当をしたことがある私には信じられないほどの規模の病院が並んでいる。過疎地どころか都市部で「お産難民」が発生している状況が目に見える。このブログ別項では予算委答弁の議事録が起こされてもいる。

 朝日新聞の記事についてブログの反応。研修医が書く「産科医減少「少子化の反映」 柳沢氏答弁に医師反発」(side Bの備忘録)は「ようやく報道にのりました。でも、反発しているのは産科医だけではありません。『産む機械発言の余波』で反発したわけでもありません。ただ純粋に、社会情勢を解さない厚労相に社会保障行政は任せられないと思っただけで」「インターネットという『武器』が、逆にマスコミを動かしうるんだとも感じました」と手応えを感じている。

 「がんばれ!柳沢厚生労働相」(とりあえずティッピング・ポイント)が「『失言』とは、わたしが思うには、本音がこぼれ出てしまったものでしょう。もし、まるっきり考えてもいないことをしゃべってしまうのなら、精神状態に問題ありですが、本音をしゃべってしまうのは究極の情報公開とも言えます」「日本の福祉や医療が崩壊しつつある中、彼のように為政者の本音を知らせていただける貴重な人材には、ぜひとも永く厚生労働相を勤めていただき、その発言を厚生労働省および政府の本音と受け止め、これからの日本のあり方についてみなで想いをはせるのがよいのではないかと思います」と書いている。

 私も柳沢厚労相には長期、留任を支持したい。安倍内閣のスタンスもこれで断然と明確になった。それにしても厚生労働大臣が昨年来のお産の危機についてのニュースや新聞報道を、少なくとも意味を汲んで読んでいないことが明らかになった。事実上、お産難民は医療需給バランスから生まれた当然の結果だと言っているのに、夏の参院選を戦えると思っている安倍首相にも呆れる。
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# by ydando | 2007-02-18 15:19 | 食・健康
TV情報番組の捏造にどう対処するか [ブログ時評74]
 捏造疑惑続発のフジテレビ系「発掘!あるある大事典」に続いて、TBS系情報バラエティー番組「人間!これでいいのだ」でも「行き過ぎ」が指摘された。通常の可聴範囲を超す2万ヘルツ以上高周波音の研究者から断られたのに研究論文を掲げ、高周波音は「頭が良くなる音」と断定した。高周波音が出る風鈴を茨城の学習塾に運び込み、生徒が勉強する風景を撮影して塾の責任者に「勉強に役立てている」と言わせたのだから「捏造」と言って差し支えない。

 視聴者にも呆れを通り越した驚き、さらに面白がりが見られる。「捏造がいっぱいあるある大事典♪」(kakokakokakokakokakoのつぶやきどすえ~♪)は「よほどマイナーなものやよほど曲解して紹介している場合もあるのだろうけど、とりあえずは一応どこかにあるものを『発掘』して来て、それをセンセーショナルに取り上げてるんだろうと思っていた。しかしその『学説』自体すらが捏造まがいだったの?」「こりゃまたもう、面白過ぎる!」「でもなんにせよ、わくわく楽しい『捏造』騒動♪」「いい加減だということは、ある程度は見る方も承知の『お約束』だと思ってたんだけど、あそこまでいい加減だったとは♪ほんと笑える!」「いやはや、ほんとに今さらながらマスコミっていい加減ね!と楽しめた次第でした。ほんと、怖いですね」

 ただし、取材される側のプロ、研究者らには冗談ではない話である。実は同様な「取材」が他の場面でもまかり通っているらしい。「マスメディアの内容の真偽について」(霞が関公務員のLateral Thinking)はこう証言する。

 「先日などは、とあるテレビ局の記者(かなり偉い立場の方)から取材を受け、とある法律の内容について説明を求められ、これについて色々と手間をかけて内容を教えたにもかかわらず、誤った内容をテレビで喋られた。取材中のやりとりでは、『こういう理解ではまちがっていますか?』と聞いてきたので、『少し違います。こうです』と正しい理解を示し、『法律の内容ですし、これから関係者にも周知を図っていく必要があるのでここで誤った情報が流れると誤解を招いて困ります』と伝えたにもかかわらずである。相手は『まぁ完全に間違いでなければいいですよね』とか、『それではニュースとして面白くないので、何とかこの内容で』とか粘ってくるのだが、結局は無視して押し切られた形である」「事実に反することを流して番組が中止に追い込まれた例について、非常に話題になったばかりなので皆さん記憶に新しいことと思うが、それと何も違わないのだ。政府機関にわざわざ取材をして、事実を確認しておきながら、面白いニュースになるからと誤った情報を流すのは『捏造』である。残念なことに非常にこうした手合いが多い」

 ここまでマスコミ側の倫理がいい加減なら、メディアリテラシーの問題だとはっきり宣言するしかない。

 「テレビは好きですか。」(大学生の告白)は海外に留学している立場から、テレビとの関係を相対化して説く。「ではでは、『テレビが全てだと思ってる人』はどうですか。私は、そういう人とは話が合わない。もっと正確に言うと、『情報源をテレビばかりに頼っていて、自分から真偽を確かめようとしない人』と、話が合わない」「テレビはテレビなんだ、製作する人がいて、製作する人には『考える頭』があるんだってことをもっと理解する人が増えてほしい。じゃないと、やりたいようにやられっぱなしになっちゃうと思う。自分の頭で考えることが苦手になっちゃうんじゃないかな」「私の友達は、『日本は平和だねぇ、納豆のことでこんなに騒ぐんだもん』って言ってた。確かにそれもあるけど、単にそういうことだけでもない。納豆騒動のことを大きく取り上げるのもテレビ。大きく取り上げた納豆騒動の裏に何があるか、製作者サイドの視点を考えないと、泥沼に嵌っていってしまう」「日本から離れてみて、より一層そんな風に考えるようになりました」

 多くの家庭や職場で自由にインターネットが使えるようになった。「あるある」捏造発覚のきっかけになった納豆ダイエットだって、調べたければ、きちんとした機関が収集した情報を得ることが出来る。

 独立行政法人、国立健康・栄養研究所が開設している「『健康食品』の安全性・有効性情報」にある「健康食品」の素材情報データベース(50音別・アルファベット別一覧)で「ナットウ(ナットウ菌)」を調べよう。「すべての情報を表示」ボタンを押しても、「ヒトでの評価」各項目は「調べた文献の中で見当らない」がほとんどなのが分かる。納豆を使ってされた定量的・定性的な研究が極めて少ないからだ。なら「ダイズ」で調べよう。こちらには循環器などに様々な研究成果の抜粋があるが、肥満については「調べた文献の中で見当らない」としか書かれていない。

 たった、これくらいのリサーチをしない、出来ないプロデューサーが番組を作っているのが、テレビ界の実情だと知ることができる。「あるある」制作元・関西テレビは「何度もチェックをした。下請け、孫請けの問題」と言い逃れようとしている。視聴者の多数が、こうした公開データベースを使うようになればTV情報番組は存立基盤を失おう。
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# by ydando | 2007-02-12 21:21 | 科学技術
科学をなめている「あるある大事典」捏造
 毎日新聞が28日朝刊トップに「『あるある』98年も捏造 『レタスで快眠』実験改ざん」を出しました。納豆ダイエットのケースでは血液採取しても測定をしなかった――などの捏造でしたが、今度は千葉科学大の長村洋一教授(健康食品学)に、マウスを使った実験を依頼、ジュース状にしたレタスを与えた群と同量の水を与えた群を比較したのですが、ほとんど変化が起きなかったそうです。それなのに実験途中でおとなしくしていたマウスの映像を使って「レタス汁を飲んだマウスは、眠ってしまった!」とテロップを流したとのこと。番組開始が96年10月ですから、初期から捏造を繰り返していたことが証明されました。

 「発掘!あるある大事典」のホームページは既に閉鎖されているが、米国にある「web.archive.org」に昨年5月くらいまで収録されています。インターネット時代、そう簡単に「過去を消せない」仕組みになった訳です。98年10月の「発掘!あるある大事典 第102回『快眠』」から始まって、「3. 眠りを誘う…究極の食材 ついに登場!」が問題のページです。文字化けする方はブラウザの「表示」→「エンコード」で「日本語(自動選択)」に設定してください。

 これを見るとネタ元は、イギリスの絵本『ピーターラビット』で「『レタスを食べ過ぎると催眠薬のように効く…』(プロプシーのこどもたち)とあり、お話の中のウサギたちは、そのせいで眠り込んでしまったという」。「うさぎ:レタスを食べて2時間後眠った」「犬:レタスジュースを飲んで1時間半後、トロンとした」「猿:レタスジュースを飲んで2時間後、眠ってしまった」がまず掲げられています。「眠りを誘う成分ラクッコピコリン」がレタス100グラムに20ミリグラム含まれているからだと説明されます。

 さらにマウスの実験です。「一方にはさまざまなレタスの汁、他方には水を与えたマウスで比較をしてみると、水を飲んだマウス以外は大人しくなり、30分以内に眠ってしまった」と実験事実に反した報告をし、「即効性があります。レタス100g~200gで静かな眠りにつける」(田島眞教授/実践女子大学)とのコメントが付いています。田島教授は毎日新聞に「一般論で話した。マウスで実験したとは知らなかった」と証言しています。

 ネット上を探索して「質問日記2」―「レタスのラコックピコリン???」に行き当たりました。筆者はテレビ番組関係者からたびたび質問、問い合わせを受ける、野菜関係の研究者のようです。「科学文献のデータベースにも『ラクッコピコリン』などという物質は出てきません。レタスには『lactucopicrin』(ラクチュコピクリン)と呼ばれる苦味成分が含まれますが、これを健康関連番組で書き間違えたのでしょう」「『ラクッコピコリンが100g中20mg含まれる』ように書かれています。普通の人がこれを読むと、レタスの『生』の葉100g(約1人前)に20mg含まれるように思います。実際は元の文献を調べると、乾燥した葉100g中の量で記載されています。実際に100gの葉を食べても、摂れるのは1mg程度ということになります」

 ネット上には、レタスに催眠効果があると無条件に書いているブログが多数あります。「ラクチュコピクリンの睡眠効果について、元になる文献を調べておりますがみつかりません。もし、本当にないのなら、科学的実証よりも先にマスコミの発したデマがインターネットで増幅されてあたかも真理のように流布していることになり、ゆゆしき事態であると思われます」と警鐘を鳴らしていらっしゃいます。

 私も前に脳内物質の連載を書いたことがあり、随分経ってからテレビ関係の会社から問い合わせを受けたことがあります。古いノートを引っ張り出すのは無理なので、「こういう風にすればJOISなど科学文献データベースから引き出せます」と、お教えしたのですが、相手はそうしたデータベースの存在すら知らないようでしたし、原著論文を読む力も無いとお見受けしました。今回のケースでもインターネット検索は使っても、科学文献データベースには当たることすら考えていない――それでいて絵本『ピーターラビット』をヒントにレタスの催眠効果を証明しようと企画――実験はしても不都合な結果は改ざん――一般論を語る研究者を見つけて権威付ける――では、科学をなめているとしか思えません。

 科学的にはどう考えるのが正解か、日本植物生理学会の「質問コーナー」で「質問:レタスの不眠症改善能について」に行き着きました。JSPPサイエンスアドバイザーの今関英雅氏が「18世紀末にアメリカの医師がレタスの乳液を乾燥させたものを阿片の代用物として処方しています。動物実験ではレタス乳液乾燥物に強い催眠作用をもつことも知られるようになりました」「今日では、レタス乳液やその薬効成分よりもレタスの煎じ汁を『睡眠障害』『不安症状』『小児の神経過敏症』などの療法として用いているようです」とまとめた上で、「『レタスをたくさん食べたら不眠症にも不安症状にも効果がありますよ』などと言うのは間違いだと思います。『ラクッコピクリン』の話を信じてその効果が出るほどレタスを食べるにはどの位のレタスを毎日食べる必要があるのか計算する気にもなりませんが、そんなことをしたらそれ以外の成分も同時に大量に摂取するわけですから何が起こるか予測できない危険なことです」と指摘されています。

 「レタスを200グラム食べたら眠れた」などのブログの記述は、信じることで効果を発揮する「偽薬効果」そのものでしょう。
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# by ydando | 2007-01-28 17:53 | 科学技術