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by ydando
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敢えて一石を投じてみた理由
 16日の「専業農家の救出を急がねば稲作は崩壊 [ブログ時評87]」に色々な問題意識のコメントをいただきました。年末の忙しい時期にこんなエントリーを書いた理由も入れて、こちらからもコメントします。

 inoue0さんの議論はちょっと乱暴ですね。「経営が破綻したなら、田畑売ればいい」――農地法の規制があって売ろうにも売れないのが実情です。専業農家を追い込んでいる窮地は、自己責任で完結する企業経営者とは次元が違います。「集落どころか、農業そのものを畳むべき時が来たんです」とは、やはり思えません。輸入すれば買える私たちの時代はともかく、日本の次代が生きていく上で稲作を残すことはどうしても必要です。

 「図録・中国の食料消費対世界シェアの推移」で中国の膨張する「世界の胃袋ぶり」を見てください。世界消費シェアが豚肉56%、野菜48%ですよ。中国の人口は間もなく停滞に入りますが、後を追うインドは人口の抑制は効かず、経済発展によって同様に、あるいはそれ以上に大量の食糧を呑み込むようになるでしょう。

 東北の農家の長男さんは、山下一仁氏の「発想はうまくいくとは到底思えない、というのが実感です」と書かれています。兼業農家は損を承知で作っていること、なかなか農地を手放そうとしないことはもちろん知っています。山下案が全能の特効薬とは思っていませんが、今、実務的に進んでいる政策見直しには全く未来が無いのです。今日の読売新聞経済面「08税・予算」の見出しは「政府『大農家優先』見直し 与党の全般支援要望強まり」です。『大農家優先』とは「大企業優先」とダブる表現ですね。実態はどうか、読まれた通りです。農水省を担当している記者には私の問題意識は無いのです。敢えて書いておく必要を感じた由縁です。

 これまでに書いた記事、1997年の第21回「コメ作りの破局を見ないために」や2000年の第91回「無策コメ農政が専業農家を壊滅へ」 などで何度も警鐘を鳴らしてきたつもりですが、2007年暮れの段階でこれほど深刻になるとは予想していませんでした。第91回の文中に「世帯員1人当たりの家計費比較がある。勤労世帯を『100』とすると、95年の時点で、農業外の収入に主に依存している第2種兼業農家は『135.8』もあるのに、専業農家は『91.6』しかない」と書いているように、早くから見えていた専業農家の窮地です。
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by ydando | 2007-12-18 16:54 | 政治・経済
専業農家の救出を急がねば稲作は崩壊 [ブログ時評87]
 福島県米需給情報検討会議の模様を伝える、12月中旬の朝日新聞地域版には恐ろしい数字が並んでいた。県内稲作農家の10アール当たりの所得が2004年には53,266円だったのに2005年48,701円、2006年41,142円と減り続け、2007年は34,000円程度に落ち込むとの試算が公表された。10ヘクタールの大規模専業農家の年収が、2004年の532万円から2007年は340万円になる激減である。減収は来年以降も続こう。2000年の第91回「無策コメ農政が専業農家を壊滅へ」で警鐘を鳴らした当時はまだ「豊作貧乏」の段階だったが、いま起きている収入激減はコメの商業生産をしている専業農家に廃業を迫る。数で少数派ながらコメ専業農家こそが日本の稲作を支えている。明日に見えるのは稲作崩壊だ。

 「一体誰のための米価下落阻止大会なのか? NO2」(大泉一貫の日記)は米価下落阻止にしか関心がない農協の運動に疑問を投げる。「大変なのが、稲作専業農家。わが国の稲作システムは専業農家の作り上げた付加価値への吸着、搾取で成り立っているというのに」「一律に米価を上げろ、緊急対策しろと言った要求に耳を貸す必要があるのだろうか?」「売れる米を作っている専業農家にも、より一層転作をしろと言う必要があるのだろうか?」「対象を大規模零細稲作専業農家に絞ったセーフティネットの構築こそが必要なのに、みんな自分のことしか考えない」「農協維持のためには、数が大事とでも考えているのだろう。兼業農家組合員160万戸、農地持ち非農家80万戸、自給農家120万戸、さらにそれ以上の准組合員の参加がある。40万戸の専業農家はどうなっても良いのかも知れない」

 政府は2007年の稲作から中山間地の小規模水田を切り捨てて、ある程度以上の水田規模しか支援対象にしなくなった。平地の集落ならば「集落営農」で兼業農家の小さな水田を統合、機械力がある専業農家の力を借りて大規模経営に移行しようとした。コメ生産調整のたがは緩み、「望ましい作付面積」156万ヘクタールに対して全国で7.1万ヘクタールの過剰作付けが発生した。作況は平年作なのにコメ余り必至の情報が広まり、年々下がっている米価の下落に拍車がかかった。

 参院選の地方1人区で惨敗した自民党の危機感もあり、政府は808億円を投入して備蓄米の空き枠34万トン分を買い込んだ。さらに12月初め、なるべく農水省関与を減らし市場の流れに委ねようとしてきたコメ改革の方針を転換し、2008年産米について都道府県別「需要量に関する情報」を発表した。事実上の生産目標を示して減反を強化する。2007年産の作り過ぎ府県にはペナルティー分が上乗せ減反になっている。何十年も前の締め付けに復帰する政策だが、既に生産調整不参加となり政府支援を受けないでいる農家に何の強制力もない。コメ所の東北農政局「米の生産調整の実効性確保に向けて」は2月に「生産調整方針未参加農業者4万2千人(4ha以上:約2千人。4ha未満:約4万人)に対し、農政局長名等の要請文を送付」するとしているが、生産調整参加者が43万人なのだから「ザル」も相当なもの。生産調整が成功する可能性はまず無いだろう。

 「コメの将来 現場の混乱どう避ける」(農業ニュース)は生産調整の報を見て気をもむ。「価格が下がれば小規模農家以上に、大規模生産者に深刻な影響が出る恐れもある。担い手がコメ作りの意欲を失っては元も子もない」「需給調整をどう図るか、担い手をどう育てるか、消費者にとって魅力あるコメをどう作るか、販路をどう拡大するか――政治、行政、生産者それぞれの課題は重い」「肝心なのは生産者が安心して農業に取り組める環境をいかに実現するかだ。腰を据えた論議が求められる。改革によるコメの将来が見通せない中、生産現場を混乱させることだけは避けたい」

 民主党が夏の参院選で勝った大きな要因に、全ての主要農産物販売農家に対し農業者戸別所得補償をすると訴えたことがある。政府・与党も切り捨てたはずの小規模農家への対策を考え始めた。しかし、農業、特に稲作にとって焦眉の急はコメ専業農家を窮地から救出する対策ではないか。冒頭の試算では既に子どもの教育費すら危うい。遠くの大学に行かせるなんてとんでもない。

 衆参ねじれ現象下では、政策はなかなか法律に結実しないのだが、裏で全てが決まった時代と違い議論は大いに出来るはずだ。これまで余り省みられなかった、次のような主張こそ吟味してみたい。山下一仁氏が経済産業研究所上席研究員だった際に書いた「本格的な農政改革の完成を望む」である。「望ましい農政改革」と題された第4節をそのまま引用する。

 「零細副業農家の米販売額109万円のうち農業所得はわずか12万円(2002年)にすぎない。これは米価16,000円/60kgが1,800円低下しただけで消える。生産調整を廃止し、米価を需給均衡価格9,500円程度まで下げれば、副業農家は耕作を中止し、農地は貸し出される。一方、一定規模以上の主業農家に耕作面積に応じた直接支払いを交付し、地代支払能力を補強すれば、農地は主業農家に集まり、コストは下がる。価格引下げと対象農家を限定した直接支払いが構造改革による農業の効率化に必要なのである」「農業団体が農家選別だと反対する理由はない。零細農家が自ら耕作すれば直接支払いは受けられないが、農地を主業農家が借り入れれば零細農家も直接支払いの一部を地代の上昇として受け取ることが可能となる」「また、この直接支払いは農地への需要を高め、耕作放棄地を農業・食料生産に有効に活用する効果も発揮する。耕作放棄地を単に維持管理するためだけの規制や課税よりも優れている」

 衆議院調査局農林水産調査室の「『新たな経営所得安定対策等』についての学識経験者等の見解」(2006年1月)に所収の論文という。専業農家を国の補助金直接支払いで強化し、趣味の領域に近い兼業零細農家の水田を集め生産力を高めて米価下落に対処する。零細農家にも消費者にもメリットはあるし、世界規模の貿易交渉でもEUの農業保護施策などと対抗できる。日本の農業補助金は国際的にも巨額と非難されている。農業そのものにではなく、基盤改良工事などを通じ周辺の建設業者らに多くが落ちる仕組みになっているからであり、補助金無駄遣い解消にも大きな効果が見込める。

 今年から始まってしまった集落営農との折り合いをどう付けるかなど、厄介な問題は存在する。しかし、現在の集落営農では専業農家は痛めつけられ、いずれ廃業に追い込まれよう。既に集落の中に専業農家が1戸しかないところも珍しくないと聞く。一方、集落営農に踏み切ろうとすると兼業零細農家にも資金負担を求めざるを得なくなり、経済合理性がない集落営農をまとめるのは大変な難事業なのだ。

  ※関係の親サイト分野別入り口・・・《政治・経済》
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by ydando | 2007-12-16 00:32 | 政治・経済
子供が科学に関心を持てない日本の悲劇  [ブログ時評86]
 経済協力開発機構(OECD)による2006年・国際学習到達度調査(PISA)の結果が公表され、2003年調査で読解力の順位が落ちてショックを与えたのに続き、今回は数学と科学の応用力(リテラシー)まで地滑り的に低下、世界のトップクラスに属するとは言えなくなった。参加国が増えた点などを取り上げて、必ずしも日本の学力が落ちたと言えないと抗弁する向きもあるが、理科学習への関心や意欲を尋ねたアンケート結果はそれを吹き飛ばすものだった。毎日・朝日両紙によると「役立つ」や「将来の仕事の可能性を広げる」など動機付けの関わる項目でOECD諸国平均より14~25ポイント低く、科学についての読書、番組視聴、記事閲覧が参加57国・地域で最下位だった。

 2000年調査から日本の順位を並べると、「読解力」8位→14位→15位、「数学」1位→6位→10位、「科学」2位→2位→6位。読解力で韓国、数学で台湾、科学でフィンランドがそれぞれ1位になっている。文部科学省の「国際学力調査」ページには、過去との比較や上記アンケート結果の発表部分が無く不満だ。前回結果発表で「ゆとり教育」で学習内容や授業時間数を大幅削減したことに批判が集まり、既に元に戻す方向に舵はきられているのだが、今回結果を受けてさらに前倒しする勢いになった。

 「PISAの結果をどう考える?」(大学プロデューサーズ・ノート)は「実際、今回の結果については、『授業時間を減少させたことが原因だ』と論じているメディアも非常に多いです。ただ、興味深いことに、今回も栄えある一位となったフィンランドは、日本よりも学習時間が短いんです」と指摘する。必修の指導時間(平均値)は次のようだという。
          日本    フィンランド
     7~8歳 707時間  530時間
    9~11歳 774時間  654時間
   12~14歳 869時間  796時間
 そして、良質の教師をそろえ落ちこぼれが出ないように努力しているフィンランドに対し、日本の事情は違うとする。「日本の小中学校教員の労働時間(授業以外の事務も含む)は世界トップクラス。教育現場にはあまり余裕がないと聞きます」「ただ授業時間だけを増やしたら、かえって『たくさんの子が置き去りになり、それを教師がフォローできない』という、フィンランドとはむしろ逆の環境に繋がってしまう可能性もありますが、どうなのでしょうか」

 「応用力低下の元凶は日本社会自体の問題だ」(べそかきpaintboxの言いたい放題)は体験を交えながら理系冷遇社会が元凶とする。「日本の現代社会で、活躍して名前がマスコミに踊っている人たち、そして高給を得ている人たち、のほとんどは文系の人です。理系の人間で、多額の特許報酬を求めれば、青色レーザー発光ダイオードを開発した中村修二さんのように、特許はおまえ一人の努力ではない、などと言って袋叩きにするのです」「私のように国産OS、国産CPUの開発を目指して、連日徹夜の努力を続けた人間の行き先は、離婚して最愛の子どもと生き別れ、いくら国産のITビジネス振興を訴えても誰も振り向きもしない。これでいて高校生に理数系を目指せ、と言う方が無理ですね」

 「12月5日(水)PISAの結果発表」(校長日記)は「『理系への夢』が日本の子供たちにはあったと思う。どうしてこのようになったか?」「手っ取り早く『お金をいっぱい稼げる仕事』『アルバイトに精を出し』『しんどいことはいややねん』『楽しいことがしたいねん』『数学知ってなんの役に立つの』等々、『製造業や科学技術の世界から離れたところに子供を追いやったら日本は終わり』だ。額に汗し、手を使って物を作る喜びを感じさせてやりたい。大学の工学部で学び鉄鋼会社で物を作る喜びで人生を過ごしてきた私だけに、なおさらそのように思う」と書くのだが、子どもたちの心に響くかどうか。

 理系冷遇について「青色LED和解で理系冷遇は変わるか [ブログ時評07]」などで分析してきた。データが古くなったので、人事院「民間給与の実態」を使って2006年ベース、企業規模500人以上で文系・理系の幹部の平均給与月額を並べてみる。
          44-48歳   48-52歳   52-56歳  
  支店長    748,508円  779,207円  775,261円
  事務部長  717,250円  748,124円  761,504円
  事務課長  602,360円  609,667円  617,661円
  工場長    611,446円  725,078円  750,205円
  技術部長  654,825円  694,189円  718,234円
  技術課長  590,206円  607,898円  614,505円

 これは毎月決まって支給される額でボーナスは含まない。ほぼ同格と思われる事務部長と技術部長の間で、給与格差が5万円前後とはっきりしている。これでも10年前のデータを使った上記の連載記事の表よりはぐんと縮まっているのだ。同じような規模の企業に勤めてこの文理格差になる原因は、日本の製造業が薄利多売に走った創業期体質から脱出できず、いつまでも利益率が低いからだと考える。それはまた、国内で同業メーカーがひしめくからでもある。そうした日本メーカーの体質・行動は世界規模で歪みを生じ、科学技術立国の次代を担う子供たちをして科学に関心を持てなくさせる悲劇につながる。ケーススタディとして第151回「日本の自動車産業は世界を幸せにしない」(改)を挙げておく。
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by ydando | 2007-12-09 20:14 | 社会・教育