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by ydando
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カテゴリ:政治・経済( 35 )
ドイツ総選挙と比べながら考えた [ブログ時評34]
 日本の総選挙に続いて投開票されたドイツ総選挙は野党のキリスト教民主・社会同盟が予想外に伸びず得票率35.2%で225議席を獲得、与党社会民主党の34.3%、222議席に3議席差を付けただけの接戦になった。選挙前に想定していた「キ同盟+自由民主党」「社民党+90年連合・緑の党」いずれの連立の組み合わせでも政権が出来ず、候補者死亡で10月2日に残したドレスデン選挙区の成り行きを見ながら、二大政党大連立を含め駆け引きが続いている。

 日本と同様に「改革」がテーマでありながら、日本の自民党の大勝利とドイツのキ同盟の勝利とも言えない「辛勝」は、いずれも世界を驚かせた。「民意を歪めてまで安定政権をつくるのか」(Cityscape Blog)がまとめているように、日本では自民党が得票率38.18%で296議席なのに、民主党が31.02%あって113議席しか獲得できなかった。「ドイツの選挙制度は小選挙区比例代表併用制で、日本の小選挙区比例代表並立制と名前が似ているが、全く違う制度」「小選挙区中心の日本の並立制とは違い、比例代表中心の制度といえる」。つまり、制度の違いで自民圧勝になった。

 ブログ上では、では日本がドイツだったら結果はどう違ってくるのか、シミュレーションをしているサイトが散見される。違う国の制度を当てはめるのだから、前提の置き方によって色々と変わるので、私なりの計算をしてみようと思い立った。大阪市立大の「概説:現在ドイツの政治 野田昌吾(法学研究科)第八講 ドイツの選挙と政党」を参考にした。

 ドイツでも日本のように有権者一人で2票を入れる。「第1票は小選挙区の候補者に、第2票は各州単位でつくられた政党の候補者名簿に対して」である。連邦議会の定数は598で、その半分が小選挙区から、残り半分が政党候補者名簿から選出される。日本と違うのは、各政党の獲得議席の大枠は第2票による比例代表選挙で決まってしまい、16ある州別に議席は算出される。日本の「ドント方式」ではなく「ヘア・ニーマイアー方式」で、これは議席数を計算して整数部分で足りない分を補充するのに、小数点以下が大きい党から順に繰り入れる仕組み。ただし、小選挙区の当選者を最初に「当選」と認定する約束なので、州別に比例配分した議席数よりも多くの小選挙区当選者を持つ党が出てくる。「超過議席」と呼ばれ、この当選も有効になるから、選挙が終わってみると議会定数以上の当選者が出ることになる。

 また、小党乱立を防ぐ趣旨で、比例選挙では5%以上の得票率がある政党か、小選挙区で3つ以上の議席を獲得しないと比例配分は受けられない。今回、日本の総選挙では自民党を追われた郵政法案反対派は国民新党と新党日本、それに無所属に分かれて戦ったが、ドイツ式の選挙を戦うなら「反郵政党」とでも呼ぶべき党を立ち上げていたはずだ。国民新党と新党日本の得票率は十分でないが、「小選挙区で3つ以上勝つ」条件はクリアーしているので、この新党を仮想したい。実際は田中真紀子氏のような異質部分も含むが国民新党と新党日本、無所属を一つにして計算する。鈴木宗男氏の「大地」は5%以上の得票率にも、小選挙区の当選にも該当しないから除外する。

 こうして日本の総選挙結果を小選挙区と比例区の数はそのままに計算する。比例代表の計算では「自民184、民主148、公明65、共産37、社民27、反郵政19」の合計480になる。しかし、自民党が北海道をのぞく10州で、反郵政党が九州で比例配分数より勝ちすぎていて、以下の通り超過議席を得る。

   ◆ドイツ式に計算した総選挙の議席数◆
     自民 民主 公明 共産 社民 反郵政 合計
 北海道  7   8   2  2   1   0  20
 東北  17   13   5  2   3   2  42
 北関東 27   16   7  4   2   3  59
 南関東 28   16   7  4   3   2  60
 東京  23   12   5  4   2   2  48
 北陸信越13   10   3  2   2   2  32
 東海  21   19   7  3   2   2  54
 近畿  34   22   12  8   4   3  83
 中国  16   9   5  2   2   2  36
 四国  11   6   3  2   1   1  24
 九州  25   17   9  4   5   8  68
 合計  222  148   65  37   27   27  526

 結果として自民党が単独過半数を占めることなど出来ず、過半数263に対して自公連立が287で成立するだけだ。「勝ちすぎ自民党」をドイツに持っていけばこの程度の勝利でしかない。逆に得票率13.25%で31議席しかない公明、7.25%で9議席の共産、5.49%で7議席の社民党がかなり大きな存在に変わる。ドイツでは連立交渉で苦労しているのがよく理解できる。

 自民単独過半数を見て「連立解消だ」と喜んだ人がブログでかなり見られたが、選挙の現場を見ている私たちから観察すれば、自公とも、もはや単独で選挙を戦えなくなるほど自公複合体は完全になった。ばらばらになれば直ちに民主に敗れるだろう。ドイツではどうだろう。緑の党が5%の壁を破るために連立を組む社民党支持者が応援することがあったし、逆に社民党に超過議席を一つでも多く取らせて連立を安泰にするために緑の党側が小選挙区を応援することもあったという。このあたり何か似ている。

 今回ドイツ総選挙では5番目の党「左派党」が全国政党として登場した。東ドイツの旧共産党系に社民党の一部が合流した。緑の党を超える得票率8.7%54議席の第4党として社民党の左に出た。二大政党が改革を競う状況に不安を覚える層を吸収したと見られ、従来型の連立工作を難しくした。日本の実情を考えると、この動きも無縁ではない。「ほっとけない 世界有数のこの格差社会を」(tamyレポート)は平均的な所得の半分以下しかない貧困層がどれだけいるかを示す貧困率がOECD加盟27国中、日本が15.3%と5位で、欧州諸国より突出していると指摘する。「1億総中流」など昔のこと、米国型格差社会に急接近しているのだ。小泉政権に委ねられた改革の中身がどうなるのか、吟味を怠らないようにしなければならない。
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by ydando | 2005-09-25 15:45 | 政治・経済
再生の困難に船出する前原・民主党へ [ブログ時評33]
 歴史的な総選挙大敗をしたからといって時は待ってくれない。国会の召集が迫る中で、民主党は43歳の新代表、前原誠司氏を2票差の接戦で選出した。代表選を争った菅氏が受けてくれなかったので鳩山由紀夫元代表(58)を幹事長に、若手グループの野田佳彦氏(48)を国会対策委員長に、松本剛明氏(46)を政策面の取り回し役、政調会長にする布陣が発表された。もう一人のキーパーソン小沢一郎氏には代表代行を要請するという。前原氏が本当は何者か、まだ私にも、また読者の皆さんにも分かっていないことを前提に、民主党の今後を考えたい。

 旧社会党系と旧民社党系のグループに声が掛からなかった点が、今回の人事を象徴している。「前原民主党、新体制の骨格」(sissyboy)が指摘する三大特徴「旧党派色に対する配慮を排除した」「保守二大政党を目指す姿勢を鮮明にした」「代表トップダウン型の政策形成を目指した体制」は多くの方が首肯すると思う。

 総選挙の敗北要因として、支援する労組との関係を「既得権擁護」と小泉自民党から突かれた。「前原誠司の基本姿勢」で「労働組合、各種業界との関係などについて、既得権擁護的議論は根絶する」と主張したことを実行したのだろう。「地域で頑張っている仲間と歩き、直接に国民の喜び、悲しみ、楽しみ、怒りを実感するのが真の政治家」と言っているのだから、「05年9月:民主党再建の方向性」(YamaguchiJiro.com)の「問題は、労働組合という組織と働く市民とがずれているという点にある。これは第一点とも関係するが、連合を構成する大労組に所属する労働者は、比較的恵まれた層であり、既得権も持っている。そうした労組の組織率は低下する一方で、不安定な非正規雇用が急増している。そして、そのことが国民年金や国民健康保険などの社会保障制度の土台を揺るがしている」との指摘にも留意してもらいたい。

 森前首相は選挙後に「候補者の皆さんには自分の力で当選したなどと思わないで欲しい。自民党には、地域に商工会議所など一生懸命働いてくれた組織があるのだから」と、例のマドンナたちに苦言を呈した。あちらも既得権益どっぷりの手足を殺ぎ落とす番になっているとは言え、自民と違う、拠って立つ足場をどう構築するのか。

 「前原民主党の厳しい前途」(使者の世迷い言)は辛らつに言っている。「しかし、労組に代わって安定的な支持層を作れるのかというと疑問である。民主党は今まで一般有権者に対して自分たちのための政党だ、と思わせるような努力、いい方を変えればファンの獲得する努力をした形跡が無い。いつも自民の失態と、気紛れな無党派層に頼った選挙しかしてないのだ。これを何とかしない限り、旧社会党のような万年野党に堕してしまうだろう」

 とは言え、若さ、清新さへの期待がブログのあちこちから読み取れるのも事実だ。「期待感を持たせる民主党の前原新代表」(阿木雅芳の「春夏秋冬」)の「18日朝のテレビの報道番組を次々とハシゴして前原氏の発言を聞いて『この人が党のトップなら4年後には民主党政権が実現するかもしれない」と思わせた。清新な印象だ。発言内容も一本、筋が通っている。『民主党が、労働組合から支持を受けているからといって、労働組合のいいなりにはならない』ときっぱり言い切ったところがいい」などである。

 40代で英国・労働党を再生したブレア首相や、同じ43歳で大統領になったジョン・F・ケネディを持ち出す人もいる。一方、自衛権をめぐる憲法改正問題への危惧など不安に感じる方も多い。しかし、私は、小泉チルドレンに働きぶりを見る猶予を与えるのと同様に、しばらくは前原・民主党も見守るのが筋だと考える。とてつもない困難が待っている。代表の任期切れは1年後だ。小沢一郎氏は2年後の参院選をにらんで局外に出た。この1年間、苦労する前原氏とどちらが有利か。政治のドラマとして、これも注目である。
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by ydando | 2005-09-19 02:25 | 政治・経済
勝った以上は『改革の党』にさせよう
 衆院解散からあまり休めず、投開票日は2時間仮眠のほぼ徹夜、今日は思い切り寝ていました。ネット上では新聞社内の話をしない原則にしていますが、今回、私が見たこと、考えたことを説明するために出来る範囲で緩和します。

 新聞社には世論調査部というセクションがあります。ふだんなら一般的な世論調査もありますが、選挙の際には「情勢調査」、つまりどの党、どの候補者が、強いのか、弱いのか、選挙情勢を世論調査データをベースに過去に蓄積した統計データを駆使して評価する仕事をします。公選法で人気投票は禁止されていますし、生の支持率が実際の得票状況を反映しないことも広く知られていることです。各メディアの情勢調査が公表されれば、それを見た有権者が投票行動を変える可能性もあります。いわゆるアナウンス効果です。しかしながら、その効果まで織り込んで、「まだされていない投票結果を予測してしまうのが情勢調査である」との建前になっています。

 数日先に選挙で延期していた異動があり、それまでは「世論調査部兼務」になっていて、今回総選挙でもこれが大きな仕事でした。投開票日の1週間くらい前に出た情勢報道を覚えていらっしゃる方も多いでしょう。「自民優位、民主劣勢」は共通していても、当選者数の予想は多くは外れでしたね。無理も無いことなのです。長年蓄積されてきたデータと違う行動を、有権者が採ってしまったからです。

 何が一番違うか、それは有権者一人一人が自分なりに考えて行動したことでしょう。情勢調査のための世論調査を実施すると、選挙期間中、ある時点の有権者の意識模様が選挙区ごとに切り出されます。これが投票日までほぼ保存されるとの前提で、これから起きることを推定します。その選挙区の雰囲気のようなものが出来ていて、有権者の行動はそれに影響されていくのです。詳しく説明することは社外秘に触れるので出来ませんが、今回の総選挙ではこの前提そのものが崩壊しました。意識模様がどんどん変化し、投票日に向かってダイナミックに自民優位に変化していくことを生データから読み取ったときは、本当に愕然としました。自民300議席もと直感しました。

 調査時点から後で投票先を決める人が自分で考えてみると、小泉首相が言っていることの方が、民主党の主張より、はるかに意味がある――これに尽きるでしょう。今日の読売新聞朝刊「有識者に聞く 衆院選座談会」(注:これもよくある、ネット上には公開されない新聞のコンテンツのひとつです)宮沢喜一元首相がこう言っています。「小泉さんは、演出、演技を徹頭徹尾よくやった。郵政民営化という、大して重大と思えない問題を『(焦点を絞った)シングル・イシュー』にして国民投票のようなことをやった。自分の政治に対する考え方に従って思った通りにやってみたということでしょう」。これに応えて渡辺正太郎氏は「有権者に『これは本当かもしれない。これなら政治決定に参画しよう』と思わせた」「今まで政治にそれほど影響力がない、あるいは無関心だった人を政治の舞台に引き連れてきた。これから2年ぐらいは政治の季節になるのではないか」と指摘しています。

 従来の自民党選挙ならあり得なかった、地元と無縁の公募した落下傘候補が各地で、1ヶ月ほどの運動なのに地付きの民主候補を撃破してしまいました。こうして自民党衆院議員296人中、最大「派閥」になった無派閥88人の多くが「小泉チルドレン」でできています。「改革の党」として勝った以上は、この人たちにまずは気持ちよく働かせるべきです。年次を無視して閣僚になる人も出そうです。「次の総選挙までたっぷり4年ある」と言う方もいますが、再来年夏の参院選だって小選挙区同然です。民意の動かし方を知った有権者が失望して逆に動けば、底なしの大敗だってあります。それに今回の選挙での動き、今後求められる改革は、自民党の従来型支持基盤を壊す方向にあるのは明白です。小泉後継とも目される方たちが超大勝に慄然としているのは当たり前のことなのです。
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by ydando | 2005-09-13 23:39 | 政治・経済
『世界』10月号も"小泉郵政解散賛否まとめ"→携帯で読める
 岩波書店総合誌『世界』への今月の転載は、皆さんから好評をいただいた「小泉郵政解散へ賛成論と反対論まとめ」にしました。ただし、見開き2ページに収まる分量ではなかったので、3分の1圧縮版を作成しました。すると、たまたまiモード携帯電話のページ限度「5KB」にぴったりだったので、私の携帯電話版サイトにも載せました。これなら数分で読めます。携帯でも既に500人以上の方に読んでもらっています。

 ずっと総選挙取材を継続していて、今回ほど有権者の皆さんが自分で考えている選挙は無い、と思っています。そして、衆院解散から後でそれほど議論は深まっていない観がありますから、「小泉郵政解散へ賛成論と反対論まとめ」は考える材料としてまだ十分使えます。明日の投票を控えて、もし、手短にと言われる方があれば、私の携帯サイトをご紹介いただければと思います。
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by ydando | 2005-09-10 16:14 | 政治・経済
自民党から私にも声が掛かりましたが……
 「Sent: Tuesday, August 23, 2005 3:01 PM」で自民党から「メルマガ/ブログ作者と自民党幹部との懇談会」のご案内、と題したメールが、私にも届きました。『記者コラム「インターネットで読み解く!」』団藤保晴様宛なので、メルマガ作者扱いです。「■開催日 平成17年8月25日(木) 午後7時~8時 ■場所 自由民主党本部 4階 総裁応接室」に、新幹線ではるばる行かねばならない私が行けるはずもなく、パスです。

 もっと余裕がある設定なら出席しなくもなかったんですよ。ただ、現在、自民党と最も仲の悪い新聞、幹部が取材拒否を口走るほどの○○新聞記者であることも知らないのでしょう。いかにも準備不足で、リサーチが足りないことは歴然としています。20、30人を対象にしているそう。「Grip Blog 私が見た事実」の泉あいさんが押しかけてレポートしてくれるそうです。
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by ydando | 2005-08-25 20:23 | 政治・経済
小泉郵政解散へ賛成論と反対論まとめ [ブログ時評32]
 今回の衆院解散について、ブログで書かれている膨大な賛否両論から読むに価するものを拾って記録しておくことにした。ブログ隆盛期にぶつかった大衆の関心を呼ぶ特大事件として、ただ盛り上がったとするには惜しいからだ。代表的なものを選んだが、同様趣旨の議論がいくつもあったことを付記したい。その賛否両論に入る前に、政治学で英国留学中に書かれている「郵政民営化:小泉政治が日本の政治文化に与えた影響」(かみぽこぽこ。)で提示されている見方は重要なので読んでいただきたい。あろうことかホリエモンまで引っ張り出した“刺客”騒ぎで見えにくくなったが、小泉首相と反対派の殴り合いは政治闘争であり、感情論でやり口が汚いと言っても仕方がない。両者をイーブンに見てあげる位置に立って始めたい。

 「英国では総選挙で審判を受けて首相になった者は、選挙での公約をそのままトップダウンで実行する」「与党内に反対者が現れるような状況になったら首相は『人事権』を徹底的に使って反対を抑える」「強力な『人事権』は民主的に選出された首相に与えられた権利であって、それを自由に行使するのが民主主義的にも当然という考えが英国では普通だと思う。つまり、私は小泉首相が、自らの政治手法を『民主的であり全く問題はない(あるいは何が問題なのかわからない)』と考えているんじゃないかと思うのだ」「小泉首相と反対派は、激しく罵倒し合っていたけれども、『民主主義とはどうあるべきか』について、乱暴な言葉使いながら理論闘争をしていたという見方もできる。これをもう少し大きく捉えると、これまで『ボトムアップでコンセンサスを得ながら物事が決まっていくのが民主主義』と考えられていた日本で初めて、『国民の信認を得た政府がトップダウンで物事を決めていくのが民主主義』という考えが出てきた、ということだと思う」

 ◆賛成論◆

 敢えて言わせてもらうと今回の郵政民営化法案は、民営化の将来像が十分に描けていない生煮え案だと考えている。賛成論の方にも、それは認識されている。「衆議院解散の意味」(ロンドン投資銀行日記)は「実際問題としては、今回議案に上がっていた郵政民営化法案はどちらかというと三事業の区分を明確にするというレベルのものであって本格的な民営化からは程遠かった」としつつ「今回の一連の郵政民営化のポイントは、ちょっとでも郵政民営化の改革を進める気がある、つまりは日本の金融部門そして引いては企業と金融の健全な関係の確立と日本経済の再生を進める気がある政治家が誰で、利権と票集めにしか頭が回っていない無責任な政治家が誰かを見極める踏み絵になったと個人的には見ている」と主張する。確かに「踏み絵」の機会を作ったことに多くの方が賛意を表明している。

 背景にあるのは、失われた十年、いや十数年、分かっていながら進まない本質的な改革に、絶望的な思いすら広がってきたことだ。「政治家として嘘や夢物語を語らない、現実的な苦渋を伴う政策を主張し実行するというのは、残念ながら選挙では受けが悪い。もしこれで小泉首相が負けることがあれば、常に私が危惧している、日本は何も改革ができずこのままじわじわ弱体化し続け、それでも基礎体力があるから当分の間危機には達さず、大国の終焉を今後20年間見続けることになるということが実際になってしまうかもしれない」

 首相に問いかけられているのは国民だ、と「なぜ、郵政公社を民営化するべきなのか?」(趣味のWebデザイン)は呼びかける。「今回の選挙で問われているものがあるとすれば、それは国民の意識です(毎度のことですが)。郵政を民営化して、私の明日の生活にどんな利益があるのか? 田舎でサービスが低下するんじゃないのか? そんなことばかり考えている国民は、どうぞ民営化反対論者に与したらいい。人類ってのはそうして滅んでいくんですよ」「私は、この郵政民営化よりももっと大事なことがあると言う人がたくさんいるのも知っています。しかし、この郵政事業を民営化できないでどんな大改革ができるんですか。と、首相はいいました。選挙に勝たねばならないから、首相は国民の悪口はいっていない。けれども、この発言の内実は、まさに国民に対してぶつけられているのです。郵政民営化の先にある真の大改革とは何か。それは年金支払額のアップと給付額のダウン、医療補助の削減と保険料の上昇、大増税と行政サービスの大幅な低下です。戦後の混乱期を乗り越え、高度経済成長を達成してからの30年間、問題を先送りしてきたのは誰なのか。それは国民自身です」

 この首相メッセージがどう届いたか。一例をあげる。「衆議院解散(歴史的転換点)」(叡智の禁書図書館)は「8時台の総理の解散にあたっての記者会見を聞いて、ちょっと胸が熱くなってしまった。これは感動ものだと思った。かなり率直に総理が考える政治指針を政治姿勢を国民に語りかけていると思った。勿論、今回の選挙が自民党を決定的に潰す恐れが、現実にあるからなのだろうけど、それでもやはり心に響いた内容だった。日本にとって必要だと自分は政治家として確信しているし、それを党の公約としても言ってきたのだから、それを実施する為に可能な限りのことをする。そしてそれをYESというか、NOというかをまさに国民に課題として投げかけたわけであり、これについては率直に一国民として答えていきたいと感じた」と語る。

 そして、「勿論、その内容が正しいかどうかは、別である。決断しても、間違っている場合だってある。しかし、どの政治家を選べばいいかを国民の手に委ねた訳である、私達にとっては素晴らしい機会を手に入れたのだと思う。みんなが各人の判断で選んだ人が、まさに日本の未来を変えていくのだから、これはオリンピックとかとは比較にならない興奮モノである」と、総選挙にわくわくしている。各メディアが調べた内閣支持率が解散から上がり続けているのは、法案の是非を越えて、政治の選択を密室の中で行わず、総選挙という形で国民に委ねたことが、個人の胸に響いたからだろう。

 小泉ファンの間では、邪魔者を追い出して、これからこそと期待が高まっている。「郵政ぶっ潰れ解散!面白くなってきた!」(D.D.のたわごと)は言う。「郵政民営化自体は今一番に考えなければならないほど重要な問題ではないと誰もが思っているはずですが、腐りきった道路公団をナアナアで骨抜き民営化した問題、腐りきった厚生労働省と社会保険庁をナアナアで放置している問題など、とにかくうっぷんと閉塞感がたまりまくってます」「ところが純ちゃんも好きでこれらの改革を骨抜きにしたわけではなく、元凶の多くは純ちゃんの政治基盤である自民党の族議員どもにあるわけです」「今回、たとえ郵政民営化に反対したという別件逮捕的な罪状であろうとも、首相であり自民党党首である小泉純一郎の政権方針ならびに選挙公約にはっきりと逆らう連中があぶり出されたわけで、これらを自民党の公認から外すことができたのは大収穫!」

 減り続けていた小泉内閣メールマガジンの読者が再び増加に転じたことが示すように、見限りかけていた多くの小泉ファンに希望が見えてきた。おまけに胸のすくリーダーシップだったのだ。「郵政法案否決・衆院解散-小泉純一郎というリーダー」(堀義人blog)も「強引すぎる」などの世間の批判を退け、リーダーとして絶賛する。「調整型リーダーは、今のようなスピードが早く、改革を必要とする時代には必要ないのでは、と思う。今の時代は、明確なビジョンを提示して、常に一貫した姿勢で臨み、シンプルにコンパクトに組織をまとめ、わかりやすい言葉で説明する。そして、決断して、前に進める。抵抗勢力や感情論を持った人々に耳を傾けながらも、ビジョンと理念とで押し切る。それでも抵抗する人は、外に出てもらい、ノンストップで前に進める。そういうリーダーが必要とされている時代だと思う」

 ◆反対論◆

 郵政改革に従わぬ反対派を追い出し、本当に自民党を改革の党にするとの主張は額面通りだろうか――批判する側はそこにまず疑問を持つ。「郵政解散:小泉戦略の弱点は何か?」(ビジネス戦略を考える)は自民党という組織が変わる困難さを指摘する。「目指す自民党組織文化が何か具体的に分らないのは問題です。郵政民営化がすべての改革の入り口であるという論理は分りますが、改革が文化ではありません。必要な改革を果断なく生み出すことができる組織なら文化の一部と呼べるでしょう。それが見えないから、さまざまな批判も飛び出します。郵政民営化一点に絞った争点は、選挙戦略としては大変すぐれたものと思いますが、仮に勝ったからと言って自民党が改革党になるわけではありません。小泉戦略の弱点はそこです」

 「小泉純一郎の改革」(よろずもめごと論)も自民党の体質に同様な不信感をあらわにしている。「『自分が再選しなければ改革は止まってしまう』と主張したいのだろうが、しかし小泉が再選すれば元の黙阿弥となるだけである。自民党の総裁として『骨抜き』の改革を続けるしかなくなる。郵政民営化に反対を表明したごく一部の議員を排除すれば済むような小さい問題ではない。自民党がその支持基盤と全て縁を切り、議員を全員入れ替えなければならないくらい大きな問題である。そんなことは不可能だし、そうなればそれはもはや『自民党』とは言えないだろう」

 「この選挙は『郵政民営化』の是非などという目先の問題を問うべき選挙ではない。自民党によって『改革』を続けるか、与党を変えて『癒着の構造』を解体するかを選択するべき選挙であろう。小泉首相の最大の功績はその公約どおり『自民党をぶっ壊し』、選択の機会を国民に提供したことである」。代議士に自殺者まで出した心理的葛藤があった点は認めよう。しかし、議員が拠って立つ基盤に変化が無くて上部構造だけ変われるのかである。

 このまま総選挙で勝たせたら独裁になるとの懸念が広がっている。「大切な選挙を『郵政民営化』だけで単純に投票するのか」(スローライフ日記)はこう主張する。「しかし、本質的には今回の総選挙はそんな問題ではない。『暴走を止めるのか、一緒に暴走するのか』である。現在は、ぎりぎりの線で独裁政治(行き過ぎた小泉主導=独裁)は抑えられている。理由は様々であるが、今回の造反議員が結果、それを抑えた。しかし、この選挙で小泉が大勝したらその結果を理由として、堰を切ったように独裁の色は強くなり暴走が始まるだろう」「小泉は高い支持率をバックに本来なら良く考えて行うべき政策を即決でやってきた。自衛隊のイラク派遣などはその代表的なものだろう。『大量破壊兵器がある』といい理由で、きちんとした調査もせず自衛隊を派遣した。結局大量破壊兵器などは無かったわけだが、それでも開き直って自衛隊をイラクに置いたまま。『非戦闘地域』も『自衛隊がいるところだから非戦闘地域』挙句の果てには『私にわかるはずが無い』といい加減な答弁をしてそのまま」

 上の見方は「僭主政」に比す次の議論に通じる。「小泉総理の解散権行使に対するオブジェクション」(Bewaad Institute@Kasumigaseki)。「これまでも小泉総理は国政選挙・総裁選挙をともに信任投票的に活用し(郵政民営化が嫌だったら代えてくれ、という総裁選での言がその典型でしょう)、自らを選んだ以上はその統治を全面的に受け入れて当然だとしてきました。しかし本来、公約は政策パッケージにならざるを得ず、選挙の勝利はあくまで平均点としてパッケージがよいという以上の意味を有さないはずで、だからこそ公約を実際の政策とする際には別途プロセスを踏む必要があるのが自然です」「古代ギリシアの時代より、このような民衆の信認を背景に、自らに反対することをその立論ではなくその行為をもって民衆に仇なすものと位置づける政治手法は僭主政として警戒されてきました。そうは言ってもボナパルティズムにファシズム、ナチズムと歴史はその失敗を繰り返してきたわけですが、このような手法を用いる政治家は、その主張がどのようなものであれ、それを理由に批判されてしかるべきではないか」。たとえ勝っても、小泉ファンでない人も納得できるやり方をして欲しいものだ。

 今回の郵政民営化法案そのものについて疑問を投げる人も多い。「小泉『郵政民営化』の変遷-市場原理主義者に丸投げの失敗」(世に倦む日日)を代表としたい。「自民党の議員たちが合意した『郵政民営化』は、二年前の郵政公社法の制定と施行までであり、彼らからすれば郵政改革は公社化で一段落着いた話なのである。その政策法制上の取り纏めの中心にいたのが片山虎之助であり野田聖子だった。そこには竹中平蔵はいなかった。三事業解体と完全民営化、さらに株式売却まで党内の派閥や議員が認めていたわけではなく、だからこそ郵政部会で大紛糾したのであり、法案として確かな党内合意を取れないまま無理やり総務会にかけ、総務会を多数決で強行突破して衆院採決に持ち込み、今回の自民党分裂の政局にまで至ったのである。造反には理がある。小泉純一郎の失敗は『郵政民営化』を(USTRのエージェントである)市場原理主義者に丸投げしてしまったことだ」。米国による圧力を問題にする議論も盛んで、ほとんど謀略説と呼べるものまであるが、この場で吟味できるものではなかろう。また、民間銀行が融資先に事欠いて資金運用に大量の国債を買う現状があるのに、民営化するだけで資金の流れが変わる保証は無いとの指摘があちこちにあった。

 最後に小泉首相の体質について鋭い指摘を紹介したい。「郵政民営化に賛成です。しかし民主党に投票します」(知っていると女性も楽しい「通」学―)「小泉純一郎という首相は、本人も述べているように、『政策よりも政局が好き』な特異な首相です。冒頭に書いた『郵政民営化にかける小泉首相の執念』は、実は郵政民営化 『政策』への執念では無く、この『政局』を勝ち抜くために郵政民営化『政策』をとことん利用するという執念と断じることが出来ます」「八方ふさがりの外交問題から目をそらせ、年金を筆頭に問題山積の経済・福祉問題から目をそらせるには、『郵政民営化問題』は格好のテーマです。首相は内心では、きっと党内造反組に感謝をしていることでしょう」。確かに時をわずかに戻すと、客観情勢は行き詰まりそのものだった。


 こうしてブログの世界で生まれた賛否両論をストーリーとして読み通していただくと、小泉純一郎とは何者であり、出来ること、出来そうにないことが自ずと浮かび上がってくるように感じる。

 【参考】「インターネットで読み解く!」「小泉構造改革を考える」
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by ydando | 2005-08-21 00:06 | 政治・経済
小泉郵政解散:賛否両論で秀逸ブログを募る
 小泉首相が断行した衆院解散について、ブログをウオッチしていると書き込みが膨大な量になっています。当然といえば当然ですが、もの凄い大衆的関心事である訳です。せっかく「ブログ時評」を営んでいるのですから、いつもより二歩ほど下がって、この論争状態をイーブンに書きとめておくべきかと思っています。自分でも賛否両論から読むに値するブログをピックアップしつつありますが、何せ量が多すぎるので、公平を期すためにも、皆さんが読んで秀逸と判断されたブログを募ることにしました。

 このコメント欄に書き込んで下さい。通常ルールと違い、リンク先を持たない書き込みもオーケーとします。トラックバックの形でもかまいません。締め切りは1週間後の17日。推薦されたものは必ずきちんと読んで、21日前後に時評としてまとめてみるつもりです。本当は賛否両論でハブサイトが自然発生すれば良いのですが、現実はそこまで行っていません。
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by ydando | 2005-08-10 13:08 | 政治・経済
首相が目指す国家を語れないで反対説得は無理
 郵政民営化法案をめぐる最後の攻防が、週明けに迫ってきました。参院本会議で「否決の公算大」とマスメディアで語られ始めています。最後に議場で心変わりする議員すら存在するでしょうし、否決が100%、衆院解散になるとの保証もありません。仮想の問題をいま議論しても空しいので、過去に公表している分析集「小泉構造改革を考える」から、時評「政権維持の強迫観念だった小泉改革」の一部を引用して、問題点を浮き彫りにして置きます。

   どうして同志ができないか。それは小泉改革が改革の必要性
  を説くばかりで、結局のところ、どんな国にしていくのか、目
  指す中身を語れないことにも原因がある。銀行、大学、高速道
  路、郵便局……と既存制度を壊した先に生み出す新しい姿を、
  小泉首相は語らない。民間にとか市場にとかしか言葉は現れな
  い。大蔵族トップの強迫観念として改革を語っているだけなの
  だから、新しい姿を持っているはずもない。私はいつかは語り
  出すのではと忍耐強く待ち続けたあげく、「丸投げ」の連発を
  見て、やはりと諦めた。
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by ydando | 2005-08-06 17:38 | 政治・経済
トヨタ、日産の米国値上げは薄利体質改善
 米国市場で1日、トヨタ自動車はカムリなど人気4車種の新車価格を0.7-1.5%、日産自動車は高級車インフィニティの3車種を1.3%、それぞれ値上げしました。奥田会長の「値上げも」発言の前から日本の自動車産業は世界を幸せにしない [ブログ時評18]を書き、米自動車産業の支援はどこまで本物か [ブログ時評21]と続けてきた立場から見れば、これは経営危機にあるGMなど米国勢への支援という面より、鋼材値上げを契機にした「行き過ぎた薄利体質」の改善でしょう。

 GMの6月の新車販売台数は従業員向けの値引き率を全顧客に適用して、前年同月比41.1%増を記録したとも報じられています。具体的な値引き割合は伝えられていませんが、1%とかのはずはありません。かなり大幅でなければ「支援」にはならないところまで、米国大手の競争力は落ちています。

 日本側の株価に注目してみましょう。トヨタ日産とは、ともに1年間のスパンで見て、株価が落ちつづけています。業績絶好調が言われて株の買い手が減っているのは、薄利体質が嫌われているからでしょう。両社の経営陣は微妙な「さじ加減」にトライし始めたと思います。

 なお、上記の二つの記事をまとめた英語版でも経緯が読めるようになっています。
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by ydando | 2005-07-03 15:41 | 政治・経済
GMが17%2万5000人の人員削減発表
 経営不振に喘ぐGMが2008年までに、従業員の17%に当たる2万5000人の人員削減を発表しました。生産台数も600万台から100万台減らすそうです。しかし、CNNによると現在の雇用協定では解雇後も9割の給与を払うことになっているそうで、削減の実をあげるには、それも見直さざるを得ません。深刻な雇用問題に発展するのではないかと考えられます。

 「日本の自動車産業は世界を幸せにしない」を先んじて書いてから、事態を注視していますが、想像していた以上の速さで奈落に転げ落ちていく感じがします。用意していた英訳版「The Japanese Automobile Industry Does Not Bring the World Happiness 」を公開しました。
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by ydando | 2005-06-09 00:25 | 政治・経済