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米中間選結果と余波に若干ならぬ異議 [ブログ時評68]
 米国の中間選挙は、12年ぶりに民主党が上下両院を制して終わった。結果としてラムズフェルド国防長官の更迭に至ったように、日本人の感覚なら泥沼化が明らかなイラク情勢が断然、第一要因のはずが、出口調査の分析では政治腐敗・スキャンダルに重きを置いた有権者がさらに多かった。この事実だけ見ても何か異質さを感じた。日本の新聞各紙や放送メディアの伝える解説類は正直なところ琴線に触れてこないので、今回はインターネットの世界から、この選挙とその余波、将来予測へ異議ありとする声を集めてみた。

 最初は米国在住の意見から。「アメリカ中間選挙~遅すぎたイラク政策への不信任」(ワシントン通信 2.1~地方公務員から転身した国際公務員のblog)の意見は納得しやすいものだ。「アメリカ国民はもっと早くイラク問題の重大さに気づくべきでした。全く遅すぎますよ。2年前の大統領選挙ではイラク問題が争点になりきれず、同性同士の結婚や妊娠中絶などという問題がより重要な争点になっていましたが、あれも理解に苦しみました。ハッキリ言って、昨日の選挙結果は2年遅いのです」。「ブッシュVSケリー」はほとんど印象に残っていないことを思い起こす。そのコメント欄に「アメリカは、無辜の人を内外で多く殺しすぎました。過ぎるも何も、一人もあってはならないことです。人に憎しみを植え付けることの恐ろしさを理解できない人が国の政治を執ると、さらなる苦悩を増すだけです」(銀)とあるが、米国有権者の関心が死んだ米兵の数にあって、桁違いに多いイラク人死者に向いていないことに大きな齟齬を感じる。

 日本のブログに米国流保守思想を根付かせたいと考えている、米国人による「保守思想 Conservatism」の「なぜ、民主党が成功したのか?」は民主党の選挙戦略は三つあったが、それがメディアで報道されることがなかったと主張している。例えば「場合によっては共和党候補より保守的な候補を対抗馬に据えた。メディアの注目は元イラク軍人民主党候補に行ったが、このような候補のほとんどは負けた。勝ったのは”Social Conservative"的な民主党員だ。中絶には反対。鉄砲所持は賛成。教会などで中心人物といえる候補だ。また、保守的地域で以前”過激”と受け取られていた候補のほとんどが予備選の段階で消えた」。この結果、当選回数の多い民主党幹部は従来型のリベラル思想なのに、新人議員は保守系の地盤を持つと指摘する。筆者MikeRossTky氏は「国が保守化する以上、どんどん両党が保守化するのは当たり前だと私は思う。リベラルは大学や都市部でしか受けない」と述べる。

 私自身ですべて検証することは出来ないが、ネット上で調べられる状況とかなり符合しているようだ。ヒラリー・クリントン上院議員がリベラルから中道にポジションを移して、なお、2年後の大統領選勝利が容易に見えてこない原因はその辺りにもあるのではないか。

 国内に目を転じて批判しているのが「調子のいい連中はいつでも調子がいい=『イラク戦争』をめぐる痛みなき転向」(阿部社会学ラボ・IFSA通信)である。「日本の識者やマスコミは、いまや『イラク戦争失敗』の現実を前提としてすべての話をする。その怪しげな前提自体を不問に付したまま。◇『イラク戦争失敗=悪=それを批判する米国民は当然の行為をしている』。とんでもない。米国に言寄せ、そう思う人間の主体がすっぽりと抜け落ちているではないか」「その主体とは何か。◇戦争を仕掛けた側のブッシュらの主体は別にして、(1)イラク侵攻を圧倒的に支持した米国民とマスメディア。(2)同様に、消極的賛成ながらも支持し続けた日本国民とマスメディア(3)敢然と支持した、政治的ニュートラルを装う御用学者・御用評論家・テレビコメンテーター(4)断固支持し続けた、コイズミをはじめとする日本政府。◇要は、イラク戦争(というよりイラク侵略戦争)にノンと言い切った側の方が、圧倒的に少なかったということだ」

 ここで個別には紹介はしないが、数多く読んだ日本ブログの庶民感覚はこう――イラク政策を転換するのは結構だが、それなら「ごめんなさい、間違ってました」と率直に謝りましょうよ。もちろん、日本政府も含めての話だ。

 イラク政策を転換しても、米国主導でうまく行くと思うのは米国でも一部の人だけだろう。軍事ジャーナリスト・神浦元彰さんは「最新情報」(11月9日)の中で、重大かつ悲観的な中東情勢が生まれうると指摘している。

 「アメリカ軍がイラクから全面撤退の姿勢を見せれば、イラクにいる親米的なイラク人は国外に逃亡をするか殺される。イラクに独自の治安部隊が育っていない以上、それからのイラクを支配するのは隣国イランと強く結びついたシーア派武装勢力である。すなわちイラク南部とイランを合わせた中東の中心地域にシーア派の巨大勢力圏が誕生する。これにはイスラム穏健派(親米)と呼ばれるサウジ、ヨルダン、エジプトなどに強い恐怖心を与えるだろう。同時に新しい中東戦争の危機が誕生する」「逆にイランにとっては、新しく誕生した広大なシーア派支配地域を、軍事上防衛することは不可能に近い。そこでイランはウラン濃縮で核武装を考えているような気がしてきた。イランにとってはイラクから駐留米軍が敗退することは予測済みで、イランの核兵器開発はそのための準備(抑止力)という推測が成り立つ」

 イラクの今後は本物の国際社会の管理下にでも置くしかないと思う。だが、ブッシュ政権に余力がある間に全面敗北を認めるはずもなく、ベトナム戦争のように、どうにもならなくなって放置して逃げ出す結末しかないのだろうか。日本と違って、米国では議会が国家予算編成権を持ち、そこを握った民主党に何が出来るか。本質的な政策転換なしに2年後の大統領選まで待てば、犠牲者は恐ろしいほど膨れあがるだろう。フセイン元大統領死刑判決の際に、ある新聞に出たイラク市民の談話「フセイン時代には殺されるには何か理由があったが、今は何の理由もなく人が死んでいく」を見て、深い絶望感を共有した。
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by ydando | 2006-11-12 17:10 | 世界
北朝鮮が求めているのは誇りでないか [ブログ時評66]
 北朝鮮による核実験実施から1週間。マスメディアでもネット上でも実に多くの言説を見聞きしたが、どうも胸に落ちない点がある。朝鮮戦争後、核など持たなくとも北朝鮮と米国は、お互いに手が出せない軍事状況になっている。軍事専門家・神浦元彰さんの「最新情報」10月12日分はこう指摘する。「非武装地帯(軍事境界線)から北側に地下陣地が網の目のように作られ、そこに北朝鮮軍はソウルを射程に入れる長距離砲(170ミリ)、地対地ロケット・フロッグ7、スカッドB/C、多連装ロケット発射機などを幾重にも配備している。これらの兵器には弾頭に化学弾や生物弾が装填してある。これらがアメリカ軍や韓国軍の攻撃を察知すると、ソウル市街や在韓米軍の頭上に降り注ぐのである。北朝鮮は朝鮮戦争後に貧者の原爆と呼ばれる生物・化学兵器で、核兵器を配備しているアメリカ軍の攻撃を抑止した。これが今も生きているのである」

 もちろん、核兵器や大量の通常兵器を備える米軍の報復があるから、北朝鮮だって先に火蓋は切れない。軍事兵器にらみ合い状態があるから、ドイツのように冷戦終了で国境が破れることも無かった。現状でも米軍から先制攻撃される心配は無いのに核兵器をを持つのは、自国民の食もまかなえない三流国に落ち込んで世界各国と並び立つには、核クラブに入るしかないと考えているのではないか。そう思わせる一因は、核実験予告と実施の日が、韓国の潘基文外相が次期国連事務総長に選出されるステップとぴったり合致しているからだ。

 「【核開発】なぜ今日?北朝鮮が狙った一石「四鳥」とは…?」(朝鮮日報)は「9日は国連安保理が韓国の潘基文(パン・ギムン)外交部長官を国連事務総長候補に推薦する日でもある。安保理の潘長官推薦は事前公告されていた。北朝鮮は今月3日の核実験宣言も、潘長官が第4回予備投票で1位となり、事実上、国連事務総長候補に確定した日に発表した」と伝える。北朝鮮は何も言わないものの、分裂国家の片方から国連事務総長が選ばれることは従来無かったのに、韓国から選ばれ脚光が当たる。核実験をぶつけて、自分たちだって存在しているのだとアピールしているように見える。

 もしそうなら、今回の事態は中国が引き起こしたと言えるかも知れない。国連事務総長は安保理常任理事国が1国でも反対すれば不可能だ。韓国外相ならそう簡単に中国は同意すまいと見られていたのに、これまでの総長選びに比べ異例に早く決着してしまった。中国と血で結ばれた同盟だったはずなのに、北朝鮮の疎外感は膨らんだろう。「北朝鮮は誇り高い民族」と知っている中国が読み誤ったのか。

 核実験から1週間も経ることなく国連安保理で制裁が決議された。中国もトラック貨物の検査を始めた。国内では公海上の船舶検査に海上自衛隊を投入する議論も表面化して、強面ばかりが目立つ。そうそう容易く引き下がるとは思えない北朝鮮に対して、もっと知恵のある議論はないのか。

 ブログで検索していて「軍備管理協会(ACA)の勧告『次に何をすべきか』」(川崎哲のブログ)を見つけた。ワシントンのシンクタンク「軍備管理協会(ACA)」が11日に出した「対北朝鮮で次に何をすべきか」という7項目勧告を引用している。「昨年9月の六者共同声明以後に、米財務省が偽札・資金洗浄問題で金融制裁を開始したことが問題を複雑化したことを指摘。これら核とは別問題の不法行為に関しては、米朝間で淡々と(ビジネス・ライクに)交渉して解決し、より緊急な問題である核兵器問題の交渉が再開できるような環境をつくるべきであるとしています」「安保理は制裁を課すべきであるが、制裁だけでは北朝鮮の態度を硬化させるだけであり、中韓との協調や、北朝鮮側の要求に何らかの形で応えることが必要であると述べています」

 核実験の爆発規模はTNT火薬換算で1キロトン以下と判明した。初めてプルトニウム型核兵器を造るなら、長崎原爆と同じ20キロトン程度が最も造りやすく、完全に同一タイミングで原爆外周に配した火薬を爆発させてプルトニウムを中心に集める。今回、北朝鮮は完全な爆縮装置を製造できず、プルトニウムの大半が飛散してしまう未熟な爆発で終わったらしい。核兵器として完成させるには再度から数回の核実験が欠かせない。核実験を失敗させた、過去に例が無い国として笑いものになってしまうのも辛い。プライドを重視しているとすれば、意地でも実験成功まで続けざるを得ないが、爆縮装置開発に不可欠と思える超高速度現象観測装置を、北朝鮮は入手できていないようなのだ。

 今度ばかりはメンツを潰された中国も、かなり厳しい態度に移った。失敗した現状の原爆でも大気中で爆発させれば巨大な被害を呼ぶのだが、兵器として完成させるべく、北朝鮮が自らの首を絞める「実験続行←→国連による制裁強化」の悪循環に陥って行くように思えてならない。文句ない核兵器を持ってから六者協議に復帰を狙うシナリオなのだろうが……。
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by ydando | 2006-10-18 14:51 | 世界
北朝鮮が核保有国になってしまった
 核実験予告は本気と観測されていました。9日朝、ついに北朝鮮軍部と金正日の「暴発」が発生しました。核爆発規模が小さすぎる点について日本軍事情報センターの最新情報でも議論され、成功に懐疑的になっていますが、韓国側の観測値に対し、日米の観測は大きめに出ているので、異常なほど小さいとは言えないよう。多少の失敗があったにせよ、核実験をして核保有国になった点は間違いないでしょう。

 事態の動きを見るリンク集積場所としてNorth Korea Todayを挙げておきます。「結局破綻した盧政権の対北政策」「北の核実験は金正日と軍部の合同作品」「爆発の威力は日本への原爆より小規模」「脱北核技術者「『独自の実験技術を確保した』」「なぜ9日?北朝鮮が狙った一石四鳥とは…」など、朝鮮日報などからの翻訳が掲載されています。

 日本のブログからも一つ。「北朝鮮核実験実施」(極東ブログ)は以前から北朝鮮が核搭載ミサイルを造る可能性と、日本世論がどう動くかなどを考えていました。さらに今回、興味深い指摘――パキスタンの核開発ではあり得ないプルトニウム検出を述べたウィキペディアを参照して「現在から振り返ると、『少なくともパキスタンの核実験のうち一回は北朝鮮の核の代理実験だったのではないか』というのはほぼガチといっていいだろう」。

 朝鮮日報の「なぜ今日?北朝鮮が狙った一石『四鳥』とは…?」では「9日は国連安保理が韓国の潘基文(パン・ギムン)外交部長官を国連事務総長候補に推薦する日でもある。安保理の潘長官推薦は事前公告されていた。北朝鮮は今月3日の核実験宣言も、潘長官が第4回予備投票で1位となり、事実上、国連事務総長候補に確定した日に発表した」に注目したいと思います。分裂国家からの事務総長は通常、あり得ないのに、北朝鮮を無視した形の選出に「憤り」「怒り」「妬み」を見ます。米国の戦略的パートナーとなった中国に対しては「北朝鮮『全世界がわれらの敵』」は「米国のイヌではないか」と高級幹部が発言したと伝えています。

 自ら孤立無援の境遇を求めている国です。国連では本格的な制裁論議が始まるでしょう。これに対して、北朝鮮のさらなる暴走が目に見えるようです。次は北朝鮮の崩壊について考えていかねばならなくなりました。
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by ydando | 2006-10-09 20:03 | 世界
英語版サイトに「東アジアの国際結婚過熱」
 色々と話題になった「過熱とも見える東アジアの国際結婚 [ブログ時評53]」を、英訳しました。"Seemingly Overheated International Marriages in East Asia"です。昨年夏の総選挙で忙しくなり、英語版サイト更新も途絶えていましたが、ようやく新作です。外国の方に知り合いがいらっしゃれば、ご紹介下さい。ブログ時評からの英訳は5件目になりました。これまでにリリースしたものに"Level Crossing Accident Investigation - Real Name Journalist's Blog & Amateur Blogs""などがあります。
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by ydando | 2006-05-17 16:22 | 世界
預言者風刺画騒ぎと靖国参拝への波紋 [ブログ時評48]
 デンマークの保守系新聞ユランズ・ポステンが昨年9月にイスラム教預言者ムハンマドの風刺画を掲載したことから始まった抗議・暴動は、2月初めにはシリアでデンマーク大使館焼き打ちに発展、さらにデンマーク製品ボイコットなどイスラム諸国・欧州で広く深く尾を引いている。言論の自由を最優先として風刺画を転載するメディアが続出する欧州側と、死者を出す騒ぎになっても収まらないイスラム側の深刻な対立は、ブログの世界でも盛んに取り上げられた。靖国神社参拝を巡る日本と中国・韓国との関係に似ていることが意識され、ネット上で高まっている排外的な心理傾向に新しい照明を与えている。

 教徒によってイスラム教は風刺の対象にされないのだろうか、ムハンマドはどうなのだろうか。ドイツの新聞に載ったイスラム学者の記事を翻訳している「ムハマンド風刺画問題をめぐって:ドイツ紙より(2)」(Takuya in Tokyo)が貴重な情報を与えてくれる。欲張りの聖職者はしばしば風刺されるし、イスラム教自体も嘲笑されてきた。「イスラム文学は、神に対する嘲笑で溢れている」「愛しているにも関わらず自分を見放したと感じられた神に対する告発」がされている。「嘲笑しようとする者は、ムハンマドではなく神に直接向か」い、ムハンマドは嘲笑の対象から除外されてきた。こういう事情だからこそ「自分の宗教を風刺する人間には、その権利がある。多数派社会が少数派社会を侮辱するためにそれをするのだとすれば、それは趣味が悪い」。この最後のメッセージに翻訳した筆者は強く共感している。

 最初のデンマーク紙掲載はともかく、続いて転載して通常の何倍も売り上げたりしたフランスの雑誌などへは厳しい批判が出ている。「フランスの風刺漫画は表現の自由と言えるか」(ツボの独り言)は「無意味な争いごとを作るような行動は、表現の自由と言って欲しくない。表現の自由とは、力が弱いものが力の強いものに対して使うことで初めてその価値があるのであって、何も無いところに火をつけることではないはずだ」と極めて真っ当な主張をしている。フランスでの転載は、昨年の都市郊外暴動へのしっぺ返しにも見えるから始末が悪い。

 「風刺画と文明の衝突・3」(川の果ての更に果てに)は「今回の風刺画については表現の自由の意図するところも宗教タヴーに対する挑戦というよりは、自国の一部分(移民)に対する侮蔑的・差別的表現が許容されるかという要素の方が大きいでしょう。そうした差別的表現が許されるのか、という別問題の様相があるわけですよね」と、問題点に踏み込む。「ちなみに今回の事件に対するブロガーの大半の反応は日中間における他国の反応とも似通ってるんじゃないかなという気もします。『中国の連中も行き過ぎだけど、でも怒るのも無理ないよね。日本が余計なことしているんだから』なんて思われているのでは」とも観測する。

 日本とアジアとの関係に思い至って、悩んでいるのが「ムハンマドの風刺画~日本~」(Planting Field weblog)である。「靖国参拝に関しては本人の自由だと思う。ただ中国人は嫌がる。同じようにイスラムのこのムハンマド問題に関しては西欧諸国側に問題がある気がする」「相手の気持ちを考えるか考えないで自国の主張のみを通すのか、その点では似ている気がする。ほんとこの問題を耳にして考えてみると自分の考えが矛盾していたことに気がつく。そう考えたら靖国問題もどうなんだろうと思えてしまった。だからといって他国にやめろと言われてやめるのもね~と思ってしまう自分が居る」

 もちろん、これまでの考え方を変える必要はないと割り切っている例もある。「日本は孤立?」(右傾化する慶應生のブログ・・・)は「この問題の対立軸は、表現の自由VS宗教の尊厳だった」「宗教の尊厳とは、人間の宗教心、内部の問題、ソフトなデリケートな問題だ。政治の問題ではない」とするのに、「靖国の場合はどうか。この問題の対立軸は、日本人の英霊に対する宗教心VS中韓の政治的外交カードである。外交カードであって、中韓の国民の感情の問題、尊厳の問題ではない。たしかに尊厳を傷つけられた中韓の老人もいるかもしれない。しかし圧倒的に、カードである」と純政治問題として捉える。しかし、「尊厳を傷つけられた」存在を認めた以上、論理のほころびは避けがたい。
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by ydando | 2006-02-16 19:39 | 世界
GMが1兆円弱の巨額赤字/ハマスの評議会選挙圧勝
 親サイトにある「英語版」は米ゼネラル・モータース(GM)に問題があるとアクセスが増える傾向にあり、数日前から気になっていたら案の定、2005年通期で9900億円の赤字が発表されました。赤字は13年ぶりで、過去5年分の黒字を吹き飛ばすほど巨額です。米国市場での劣勢は進むばかり。シェアは1.3ポイント減の25.9%と過去最低、10-12月期だけなら23.8%ですから、後はつるべ落としでしょう。今年のGM新車は相も変わらず大型車中心です。ホンダがこれまで遠慮していた小型車フィットを米国市場に本格的に投入するなど、原油高を背景にした小型車化が急速に進むでしょうから、GMはもっともっと苦戦せざるを得なくなります。
 「GM、赤字1兆円の衝撃! 」が言っているように苦し紛れで自殺行為に走った面があります。「販売増加のための社員価格販売が首を絞めたといわれる。総額50万円引きが当たり前の世界では、赤字はとめどなく増加する。といって、これをダンピング止めると販売不振に陥る。安く売って赤字を出すか、販売低下で赤字を出すかの選択を迫られているのである。目先の収益を追って、社員価格販売に浮かれていたツケが回ってきたのだ」
 トヨタの奥田会長は「米国政府がGM救済に動くだろう」との趣旨の発言をしていましたが、今日の日経新聞によるとブッシュ大統領はウォールストリート・ジャーナルとのインタビューで「政府支援を求めるべきでない」と語ったそうです。今年のうちに大きな危機、本物の破綻が来ておかしくない感じがします。

 米国の頭を悩ませる問題がもう一つ持ち上がりました。パレスチナ評議会選挙で前回は選挙ボイコットしたイスラム原理主義組織ハマスが、一挙に過半数を制して自治政府を組織する形勢になりました。予想外の大敗で、これまでの主流派ファタハの内閣は総辞職することになります。イスラエル殲滅を掲げている組織だけに、米国の反応は厳しいのだけれど、為す術を持たないでしょう。
 「ハマスと中東和平」は「ブッシュの声明は、[民主選挙は結構、然しイスラエルの破壊を旨とする政党とは付き合わない]とし、じゃどうするの?と問いたくなる。彼が金科玉条とする中東の民主主義とは何でしょう」と疑問を投げています。中東で選挙によって政権が変わるなんて、信じられないくらい健康的なことですから。「ハマス政権構造、外交姿勢の宣言これからだが、主導者筋からハマスは『生活運動』であり、後背の[アラブ、およびイスラム圏]と協同していく、との発言が見える」そうです。目が離せない状況が続きそうです。

 【1/28】「検証:GMクライシス(1)〜値引き販売が諸悪の根源」を見つけたので追加します。

 【1/29】ハマスの生の声を知るには「ハマスの指導者、候補者は何を主張したか―評議会選挙にみるパレスチナ情勢(其の2)」が参考になります。ハマスの憲章と今回の選挙綱領は違い「イスラエル潰滅を含めず」としています。
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by ydando | 2006-01-27 18:34 | 世界
今年は、ますます流動的な世界へ
 きょう4日から完全な通常勤務の再開です。正月三日だけは、のんびり過ごしました。皆さんはいかがだったでしょうか。あちこちにトラックバックをいただいているので、ここで一括、お返事にします。

 年末年始の世界を見ていて、ロシアが同じロシア人の国ウクライナと天然ガス価格引き上げでもめ、ガス供給を停止しかけて、世界的に大きな失点をしました。ウクライナを通るパイプラインが西欧への供給ルートになっているのに、ウクライナ分だけ差し引いて流したら、西欧に着く分が落ち込んでしまったのです。現在は量を戻したようですが、エネルギー供給をロシアに頼もうとしていた国は一斉に別ルートの開拓に進むでしょう。いきなりガス供給を止める乱暴な国に大きく依存していて、大事があったら言い訳が出来ません。自由主義化したはずのロシアの強権体質が露骨に現れた事件でした。極東ロシアの天然ガス資源は魅力的でも、日本も安易に頼れない印象を持った方が多いのではありませんか。

 中国向けに優先して回されそうな、その極東のガス資源について、少し前に面白い記事を読みました。中国から極東ロシアへ移民が増えていて、極東ロシアが実質的に乗っ取られるとの論文を中国人留学生が書いたといいます。日本の少子化以上に、ロシアは少子化が酷い上に体制変革による後遺症でストレスが溜まり平均寿命が大変、短くなっています。ロシア人の大人はどんどん若死にして、子どもは生まれない一方、中国からの移民は何十万と入り、子どもはどんどんつくるのです。

 さて、年末に寺島実郎さんの講演を聴いて、印象に残った数字。日本の貿易構造は米国依存が強かった1990年頃とは大きく様変わりしていて、2005年上半期で貿易総額に占める比重は米国18.1%、大中華圏28.2%、アジア46.3%にまでなったそうです。大中華圏とは中国・台湾・香港・シンガポールを総称しています。シンガポールの華僑が主導したビジネスが中国本土で大きな生産につながったりしている現状を、既存国境だけで仕切るのはおかしいのです。8年前と古い記事ですが、第34回「『アジアの時代』は潰えたのか」に書いた事柄が表面に現れて来たと思いました。シンガポールは華僑と印僑の接点でもあり、思わぬモノが生まれてくる可能性も宿します。
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by ydando | 2006-01-04 18:48 | 世界
仏の暴動と名神7ブラジル人死亡事故 [ブログ時評40]
 フランス各地で10月下旬から起きている暴動に対する非常事態宣言が、11月21日から3カ月延長されることになった。当初は若気の至りとも見えた放火や暴動だが、都市郊外の「ゲットー」に押し込められた北アフリカ・アラブ系移民二世、三世による政治闘争との認識に変わった。「どれだけの履歴書が名前や住所を理由にゴミ箱行きになっていることか」と14日のシラク大統領演説は、若者たちに就業の機会をと、なだめにかかった。この演説の前日未明、滋賀県内の名神高速道で大型トラックなど7台による多重事故が発生、7人出た死亡者が全員、出稼ぎ日系ブラジル人だった。フランスの騒ぎと日本の多民族社会化を考えたい。

 中野真紀子さん訳のダグ・アイルランド「フランスはなぜ燃えているのか」は人口の1割以上を占める移民と子孫たちが郊外に特別に建設された高層団地に住まわされ、希望を持てない状況を説いた上で、サルコジ内相の「社会のクズ一掃」発言を解説する。「一掃」の原語は「超圧縮空気で砂や水を吹きつけて表面を洗浄するシステム」を意味し、「こびりついた汚れ(ハトの糞のような)を乱暴にこそぎ落とし、ときには表面を痛めてもしかたがないというニュアンスを持っている。そういう言葉を人間の若者にあてはめて、戦略として唱え」「内相の地位にある人物の口から政策として提案されるというのは、実際に口には出さないが『民族浄化』が声高に宣言されたのとあまり変わらない」というのである。若者たちが存在そのものを否定されたからこそ、全国へ飛び火せざるを得なかった。

 収拾のためにド・ヴィルパン首相は地域問題改善へ梃入れを約束した。「置き去りに去れた郊外・燃える郊外(中期的観察 その2)」が若者たちの闘争により、過去3年余りの右派政権で「貧困地域で活動するアソシエーションへの一度は廃止された援助を再度勝ち取」った意味を詳しく説明する。「アソシエーション」は日本のNPO法人に近く、手続きが面倒な日本と違い複数の人が集まれば成立し、届け出れば簡単に法人格が得られる。現在で100万団体、前には所により何倍もあった。この草の根活動が郊外団地ゲットーの矛盾を緩和し、雇用の創出にも役立っていた。「しかし、上のような歴史的経緯を身を持って体験している人々にとっては、手放しで喜べるものではない。何を今更という気持ちを持っている人は多い。もう多くのアソシエーションが政策の誤りのために消滅した」「それに、非常事態宣言が3ヶ月も続く中で、新しい文化活動の企画書など書く気になれるのは、まれに見るオプティミストだ」

 アソシエーション以前を考えると、遠い昔に共産党や労働組合が郊外で力を持った時期もあった。しかし、そうした活動も本質的な解決にはならない。人口がこれだけある大勢力から一人の国会議員も出していないと言われるのだから「階級社会フランス」の面目躍如である。

 アラブ側からはどう見えるのか。中東報道研究機関(メムリ)の「フランスの暴動に対するアラブ、ムスリム世界の反応」はフランスの社会体制批判から在仏アラブ系社会への忠告まで広い。後者の意見を紹介しよう。サウジアラビアのコラムニスト、アル・ムーサ博士は「パリの業火は、アラブ移民社会に溜まっていたものにも火をつけた。アラブは、自分とは違った文化と共存できない。理由は簡単である。つまり今日アラブは、世界文化の軌道からはずれて、ひとりだけ回転しているのである。移民が新しい国に根をおろそうとしても、先住の市民と平等の地位を確立できない。後から後から来るアラブ移民はどの世代もこの点を理解せず、この事実を直視できない。フランスが移民受入れ国としてはベストであるのにだ」と厳しい。

 翻って日本の多民族化をみよう。名神事故で死んだ若いブラジル人7人は人材派遣会社から滋賀県の自動車部品製造会社に送り込まれて働き、母国に仕送りしながら、家や店を持つ夢を抱いていた。日系ブラジル人は愛知を中心にした中部地区と関東に偏在していて「きつい、汚い、危険な」いわゆる3K職場に携わっているとみられる。中でも群馬県大泉町は人口43000人の15%が外国人、日系ブラジル人だけで5000人と、国内で最も外国人比率が高い町だ。

 東松山市国際交流協会の「群馬県大泉町視察」が現状をレポートしている。「現在は『出稼ぎ』の時代は終わり、家族で来日、生活の拠点が日本に移りつつある。しかし、教育の現状には問題点が多い」「いずれ母国へ帰るから、両親が共働きなので兄弟の面倒をみる等の理由から就学しないケース、日本の学校に編入した時点での教育の遅れや言葉の壁にぶつかり不登校になるケース、親の勝手でブラジルのお祭り等に合わせて家族で帰国、数ヶ月間過ごし、再び日本の学校へ戻っても授業についてゆけなくなるケースなど問題の原因も様々である」。こうして落ちこぼれた子どもたちを犯罪の罠が待つ。「最近は求人条件が厳しく、高い日本語力が求められるという。職に就けない若者や言葉がわからず時間を持て余す子どもたちが関わる種々の犯罪で留置場がブラジル人で埋まることも。その多くは、麻薬関係である」

  書評『日系ブラジル人の定住化と地域社会 』にはこうある。「太田市も大泉町も、集住度が低い一般民間のアパートでは、『棲み分け』が進み、またそれが進行しているが、日本人側から日系人に対する『負のイメージ』が拡大してきていると本書は指摘している」。どうやら日本版「ゲットー」が出来かけているらしい。人口減少時代を迎えて外国人労働者は増えざるを得ない。フランスの暴動と我々は無縁ではない。

 【参考資料】都道府県別外国人登録者数
  第73回「非婚化の先に見える多民族社会」
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by ydando | 2005-11-23 00:01 | 世界
フジモリ問題なら田中宇さんの解説が
 元ペルー大統領のフジモリ氏が、大統領選を控えて隣国チリに入国し、拘束されています。ペルーは日本側がチリで接触したのを不満として、駐日大使を実質的に召還したり、韓国で開催のアジア太平洋経済協力会議(APEC)では大統領が小泉首相に首脳会談を申し入れて、逆に断られたりと動きが急です。本国で訴追されている元大統領が再び選挙に出て、勝とうとしている不思議な話。興味を持って調べ始めたら、「国際ニュース解説・世界はどう動いているか」の田中宇さんが15日に「フジモリの勝算」を公開していました。多数の英語情報サイトをウオッチして書く、いつものスタイルで新聞の国際面にも無い情報を積み上げています。

 例えば「チリには、かつてフジモリ政権に取り入って有利なビジネスを展開していたペルー人実業家4人が、フジモリの失脚後にペルーから逃げてきている。彼らは、フジモリの悪事に協力していたとしてペルー政府から訴追されており、ペルー政府はチリ政府に対し、彼らの引き渡しを求めた」「だがチリの裁判所は、ペルー政府の4人に対する訴追は妥当なものではないと判断し、引き渡し要求を却下している。このチリの判断は、間接的に、フジモリに対するペルー政府の訴追が妥当でないと判断するものになっており、この判例から考えると、チリの裁判所は、フジモリ自身に対するペルー政府の引き渡し要求も、却下する可能性がある」の部分など、各紙の国際面に断片的に出ている情報が流れとして理解できました。同じスペイン語圏チリの裁判所の力を借りてペルーでの訴追が不当と証明する戦略という訳です。

 なぜチリに入ったのか、納得がいく解説です。この問題では現時点では付け加えることも無いようなので、興味がある方に紹介しておきます。
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by ydando | 2005-11-17 18:03 | 世界
テロにせよ反テロにせよ、連鎖拡大は止まらない
 イラクでついにタンクローリーを使ったテロが発生しました。3万6000リットルの燃料に市街地で自爆テロを決行、死者の数は百人近いとも言われます。日本軍事情報センターの「最新情報」で「日本でテロの可能性といえばすぐに原発や新幹線をあげる。しかしこれは市街地を走るタンクローリーを想像させないためのシャドー(遮蔽物)の目標だった。日本のテロでもっとも怖いのはガソリンを満載した大型ガソリン・タンクローリーのことである」と書かれているように、ついに来るべきものが来た感じがします。確かに地下街などに注がれて火をつけられたら、全く手がつけられません。焼け死ぬだけでなく、瞬時に広がる酸欠でも犠牲は出ます。新幹線が1本脱線するより被害は段違いに大きいでしょう。

 一方で、ロンドンの同時テロを受けて、英国の与野党3党は「自爆犯称賛も処罰で合意」したとの共同電も入っています。「自爆テロ犯への称賛を『間接的なテロ教唆』とみなし処罰することを盛り込んだ新たな反テロ法案」が出来るようです。比較的冷静に見えた英国の人たちも、今度は逆上しているようです。そんな取り締りが出来るのでしょうか。人間の内面の自由にまで立ち入ろうとする法律に見えます。本当に施行したら、またイスラム聖職者を処罰したら、拡大の連鎖をまた一押しすることになりかねません。

 欧州での新たなテロ予告もあるようですが、日本だって他人事ではない。各地の空港でどれほど厳重な検査をしても、実は何の意味も無いと、今度の同時テロは示したのです。2003年の11月に第139回「イスラム、自爆テロそして自衛隊」で、こう書きました。「そして、思い浮かべるのが、イラク戦争が始まる前にネルソン・マンデラ南アフリカ前大統領が『世界をホロコースト化しようとしている』とブッシュ大統領を痛烈に批判した言葉だ。憎悪の拡大再生産でしかない米国の行動を止められず、最も深刻な危機の震源地パレスチナに希望が全く見えない今、マンデラ氏の予言は本当になってしまいそうである」。事態は本当にそう動いているとしか思えません。
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by ydando | 2005-07-20 01:32 | 世界