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by ydando
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カテゴリ:社会・教育( 24 )
裁判員制度は混乱必至でも開始すべきか [ブログ時評89]
 全国8カ所の地裁で実施された裁判員制度による市民参加模擬裁判で、同じ設定の事件で下された判決が無罪から懲役14年までばらついたと12月初め、朝日新聞が報じた。最高裁はこれを「想定内」とし、2009年には制度がスタートすることになっている。裁判の根幹である公平性に疑問が投げられているほかに、一般に思われている以上に長期間の裁判が続出する恐れや、もっと根源的に死刑判決に関わりたくないといった心情を吐露する人も現れている。法律の成立から5年間は広報・啓蒙の期間だとされてきた。啓蒙の対象は裁判員に無作為で選ばれる20歳以上の有権者だったが、真に啓蒙さるべきは推進している政府と法曹界ではないか。少なくとも冤罪を生んできた自白偏重の捜査手法を大変革しないで実施するのは無謀の極みだろう。

 真剣に考え始めた市民はこう思い至る。「『裁判員制度』…とつぜん生活崩壊の予感」(dr.stoneflyの戯れ言)は「だいたい多くの感情は犯人憎しってことだ。もちろんワタシだってそうさ。殺してやりたいほどの裁判に当たるかもしれない。でもね裁判ってのはそれを乗り越え理性でしなきゃなんないだろ。それをさ、感情的には完全に検事側の素人に裁かせるってんだから公平な裁判になりようがないだろ。もしかして、これってさ、職責放棄のアリバイ作り、国家による共同正犯じゃねえのか? とつぜん殺人の共同正犯を押し付けられる精神のダメージは深いぜ」と死刑判決を出す意味を考える。

 強盗殺人、殺人罪などで起訴事実が否認され、裁判が長期化したケースについて審理を短縮できるか、司法研修所が研究報告をまとめている。検察は客観的な証拠で固め、弁護側も途中で弁護方針を変更しない前提で15~38回に上っていた公判を4~12回に短縮できるとする。それでも裁判の10%は開廷6日以上と想定される。

 「6回の開廷は必要」(上山法律事務所 TOPICS)は「裁判所が検察庁に可視化を求める前に、任意捜査や長時間の苛酷な取調に対してこれまで行って来た判断、逮捕勾留についての判断、保釈の運用、その他改めるべきところがたくさんあると思います。それにしても、これまで25回の開廷が6回まで短縮可能といっても、裁判員はそんなに自由になる時間はないですよ」と疑問を投げる。さらに「アメリカの陪審員制度の真似-フリーランス、自営業には無理」(Kyoji's website)も「私などは自営業で、私が直接動かないと進まないことばかりだ。この制度、殆ど半強制の制度だから万が一選ばれてしまったら会社の業務の続行は困難になる。ましてある時期事実上この裁判員以外の仕事は一切できなくなるから、これをやれば業務に著しい空白が生まれ、それを取り戻すのは容易ではない。下手すりゃ廃業なんてことも」と当然の心配をする。

 選ばれた裁判員が被告を有罪と決めつけて裁判に臨むようでは困る。そこで最高裁はマスメディアに対して従来の犯罪報道のあり方では困ると、自主規制を求めた。雑誌の業界は制度そのものを認めがたいとする立場だが、新聞と放送の業界は1月半ば、それぞれ報道指針を公表した。

 「裁判員制度における新聞報道」(寝言むにゃむにゃ)はその指針に疑問を投げかける。「示された指針の中に『被疑者の対人関係や生育歴などのプロフィルは、当該事件の本質や背景を理解する上で必要な範囲内で報じる』という文がある。これは、被疑者を犯人扱いしているということではないか」「もし被疑者が無罪なら、当該事件の本質や背景を理解する上で必要な範囲内で報じると言う被疑者の対人関係や生育歴などのプロフィルとはなにか」「被疑者を無罪という視点からの、被疑者の対人関係や生育歴などのプロフィルを報道したものを、私は読んだことがない」

 裁判官の側から自白偏重の構造的な問題との指摘がある。「自白と刑事司法について考える(5)」(日本裁判官ネットワーク)は次のように述べる。「日本では、客観的証拠は乏しくとも、自白追求をし、これが獲得できれば起訴をする。しかし、被告人が公判廷で、その自白は過酷な取調べで無理矢理言わされた虚偽のものであると訴える場合が少なくない。その審理は困難なものとなる」「裁判員がこのような膨大な自白調書を読み込んで検討するという方法は不可能に近い。捜査官の自白追求が依然として続くなら、裁判の上での日本的否認事件は今後ともなくならない」「裁判員制度は、捜査という下部構造をひとまずおいて、裁判という上部構造の改革を先行的に進めた面がある。その上部構造(裁判員裁判)の具体的設計の必要に至ったとき、自白追求を基本とする捜査手法(下部構造)との矛盾軋轢が大きな難問として浮かび上がってきているのである」

 ここまで遅れていると「裁判員制度施行の延期を」(60歳からの独り言)と訴える人が増えて当然だ。「裁判員の辞退者の事が裁判所では今最大の検討課題になっていて、裁判を通じて真実を明らかに出来るのか、判決に真実が表れるのかはやっと検討課題として手がつけられたように見える」「施行の延期は裁判所側からは言えないことなので、法務省は現在の準備状況を見て、本制度で被告人も被害者も裁判を信頼をもって受けることが出来る状態になるまで施行の延期を検討して欲しいですね」

 しかし、裁判員制度への反対には色々な流れがあり、危険な臭いを感じる「裁判員制度はひとまず実施させるしかない」(自由ネコ通信)は「『刑事裁判は健全』『市民は刑事裁判に口を出すな』と主張する現行刑事裁判制度への翼賛運動の台頭は、裁判員制度の実施前の停止が、『やはり市民は刑事裁判への関与を望んでいないし、その能力もない』として、現行制度への信認とされかねない危機的状況を生み出しています」「そうした状況では、刑事裁判に対する市民の批判運動や救援運動の圧殺を許さないためにも、裁判員制度は一度実施させた上で、新たに根本的改革を目指すしかありません」とショック療法的な強行実施を求める。
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by ydando | 2008-01-20 15:46 | 社会・教育
子供が科学に関心を持てない日本の悲劇  [ブログ時評86]
 経済協力開発機構(OECD)による2006年・国際学習到達度調査(PISA)の結果が公表され、2003年調査で読解力の順位が落ちてショックを与えたのに続き、今回は数学と科学の応用力(リテラシー)まで地滑り的に低下、世界のトップクラスに属するとは言えなくなった。参加国が増えた点などを取り上げて、必ずしも日本の学力が落ちたと言えないと抗弁する向きもあるが、理科学習への関心や意欲を尋ねたアンケート結果はそれを吹き飛ばすものだった。毎日・朝日両紙によると「役立つ」や「将来の仕事の可能性を広げる」など動機付けの関わる項目でOECD諸国平均より14~25ポイント低く、科学についての読書、番組視聴、記事閲覧が参加57国・地域で最下位だった。

 2000年調査から日本の順位を並べると、「読解力」8位→14位→15位、「数学」1位→6位→10位、「科学」2位→2位→6位。読解力で韓国、数学で台湾、科学でフィンランドがそれぞれ1位になっている。文部科学省の「国際学力調査」ページには、過去との比較や上記アンケート結果の発表部分が無く不満だ。前回結果発表で「ゆとり教育」で学習内容や授業時間数を大幅削減したことに批判が集まり、既に元に戻す方向に舵はきられているのだが、今回結果を受けてさらに前倒しする勢いになった。

 「PISAの結果をどう考える?」(大学プロデューサーズ・ノート)は「実際、今回の結果については、『授業時間を減少させたことが原因だ』と論じているメディアも非常に多いです。ただ、興味深いことに、今回も栄えある一位となったフィンランドは、日本よりも学習時間が短いんです」と指摘する。必修の指導時間(平均値)は次のようだという。
          日本    フィンランド
     7~8歳 707時間  530時間
    9~11歳 774時間  654時間
   12~14歳 869時間  796時間
 そして、良質の教師をそろえ落ちこぼれが出ないように努力しているフィンランドに対し、日本の事情は違うとする。「日本の小中学校教員の労働時間(授業以外の事務も含む)は世界トップクラス。教育現場にはあまり余裕がないと聞きます」「ただ授業時間だけを増やしたら、かえって『たくさんの子が置き去りになり、それを教師がフォローできない』という、フィンランドとはむしろ逆の環境に繋がってしまう可能性もありますが、どうなのでしょうか」

 「応用力低下の元凶は日本社会自体の問題だ」(べそかきpaintboxの言いたい放題)は体験を交えながら理系冷遇社会が元凶とする。「日本の現代社会で、活躍して名前がマスコミに踊っている人たち、そして高給を得ている人たち、のほとんどは文系の人です。理系の人間で、多額の特許報酬を求めれば、青色レーザー発光ダイオードを開発した中村修二さんのように、特許はおまえ一人の努力ではない、などと言って袋叩きにするのです」「私のように国産OS、国産CPUの開発を目指して、連日徹夜の努力を続けた人間の行き先は、離婚して最愛の子どもと生き別れ、いくら国産のITビジネス振興を訴えても誰も振り向きもしない。これでいて高校生に理数系を目指せ、と言う方が無理ですね」

 「12月5日(水)PISAの結果発表」(校長日記)は「『理系への夢』が日本の子供たちにはあったと思う。どうしてこのようになったか?」「手っ取り早く『お金をいっぱい稼げる仕事』『アルバイトに精を出し』『しんどいことはいややねん』『楽しいことがしたいねん』『数学知ってなんの役に立つの』等々、『製造業や科学技術の世界から離れたところに子供を追いやったら日本は終わり』だ。額に汗し、手を使って物を作る喜びを感じさせてやりたい。大学の工学部で学び鉄鋼会社で物を作る喜びで人生を過ごしてきた私だけに、なおさらそのように思う」と書くのだが、子どもたちの心に響くかどうか。

 理系冷遇について「青色LED和解で理系冷遇は変わるか [ブログ時評07]」などで分析してきた。データが古くなったので、人事院「民間給与の実態」を使って2006年ベース、企業規模500人以上で文系・理系の幹部の平均給与月額を並べてみる。
          44-48歳   48-52歳   52-56歳  
  支店長    748,508円  779,207円  775,261円
  事務部長  717,250円  748,124円  761,504円
  事務課長  602,360円  609,667円  617,661円
  工場長    611,446円  725,078円  750,205円
  技術部長  654,825円  694,189円  718,234円
  技術課長  590,206円  607,898円  614,505円

 これは毎月決まって支給される額でボーナスは含まない。ほぼ同格と思われる事務部長と技術部長の間で、給与格差が5万円前後とはっきりしている。これでも10年前のデータを使った上記の連載記事の表よりはぐんと縮まっているのだ。同じような規模の企業に勤めてこの文理格差になる原因は、日本の製造業が薄利多売に走った創業期体質から脱出できず、いつまでも利益率が低いからだと考える。それはまた、国内で同業メーカーがひしめくからでもある。そうした日本メーカーの体質・行動は世界規模で歪みを生じ、科学技術立国の次代を担う子供たちをして科学に関心を持てなくさせる悲劇につながる。ケーススタディとして第151回「日本の自動車産業は世界を幸せにしない」(改)を挙げておく。
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by ydando | 2007-12-09 20:14 | 社会・教育
学力調査結果と離婚率、生涯未婚率
 全国学力調査の結果をメディアが一斉に流しています。都道府県別では沖縄、高知、大阪あたりが下位で厳しいよう。北海道や九州も下位グループに入るようです。上位グループは秋田、福井、富山、石川など東北・北陸が占めています。この傾向と合致する社会経済データで真っ先に浮かぶのが離婚率です。

 直ぐに取り出せるところで「図録▽都道府県別の離婚率」(社会実情データ図録)を見て下さい。グラフの説明を引用するとこうです。「都道府県の中で離婚率が最も高いのは沖縄の2.71(件/千人)であり、大阪(2.43)、北海道(2.42)がこれに続いている。逆に、離婚率の最も低い県は、新潟(1.49)であり、島根(1.52)がこれに次いでいる。この他、富山、石川、秋田など、北陸から東北の日本海側にかけてで離婚率が低くなっている」

 高知は以前の勤務地で、昔はもっと離婚率が高く全国トップを争ったものです。警察・司法を担当していたので家裁の調査官に取材したこともありました。離婚した結果は母子家庭とかになる訳で、勉強に身が入らないこともあろうかと思いますが、もっと大きな社会的な雰囲気が影響することもあり得ます。

 北陸は男性の生涯未婚率(50歳時点の未婚率)が際立って低い特色もあります。「表12-37 都道府県,性別生涯未婚率:1920~2000年」で確認して下さい。逆に沖縄・高知・大阪はこれも高いですね。北陸では浄土真宗などの宗教的な基盤が効いているようにも感じています。

 離婚率が万能でないのは島根をみれば分かります。離婚率は全国で2番目に低いのに、学力調査は中位グループです。また、生涯未婚率最高はもちろん東京ですから調査結果とは合いません。社会にあるもっと多くの、様々なファクターが影響するはずです。

 ※参考までに 第152回「20代男性の3人に1人は生涯未婚の恐れ」をあげておきます。
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by ydando | 2007-10-25 16:30 | 社会・教育
デジタル放送不人気でコピー緩和だが [ブログ時評81]
 2011年のアナログ放送廃止が決まっているのに、地上波デジタル放送の不人気ぶりは隠せない。総務相の諮問機関、情報通信審議会の下部組織は7月、デジタル放送から録画したビデオは1回しか複製を許さないコピーワンス規制を緩和して9回までとする方針を固めた。しかし、実現するとしても既に出回っているDVDレコーダーの多くには適用できず、開発される新製品を買い換えなければならない。

 現行のコピーワンスはコピーを許しているのではなく、ハードディスクに録画したハイビジョン番組をDVDに標準画質に落として焼き付けると、元のハイビジョン番組は自動消滅してしまう。この際にDVDメディアの不良や操作ミスがあって複製が出来なくても消えてしまうため苦情が絶えない。

 「追跡」(gore-gore日記)は家族も見る番組をDVDに移して持ち出してはいけない、現在の不便さをこう書く。「デジタル放送のコピーワンス規制は困ったもので、HDDに新しく録画をするためには、録り溜めしているやつを消化しなければならない。もしDVDにダビングできるのなら自室のPCでゆっくり見れるのに、それができないの。おかげで、家族がTVを見てない時間を縫って見ないといけない。一部の違法コピーするやつらのおかげで一般ユーザーに皺寄せが来るのは、CCCDの時と同じで本当に腹が立つ。それがやっと、9回までのコピーが認められるそうで良かった。しかし、対応機器に買い換えないといけないのか」

 DVDに移すにしても、コピーガードのCPRMがまた不便なのだ。「DVDレコーダーのコピーワンス、何とかならないか!!」(Coffee & Music)が報告する。大阪フィルのコンサートが「デジタルで放映されたわけだが、筆者は生憎デジタルレコーダーを持っておらず、娘に録画を頼んでいた。先日届き、いざ観ようと思ったが残念ながら再生できない。聞いてみるとレコーダーのハードディスクからDVD-Rに焼くのも簡単に出来ず、わざわざCPRM対応のディスクを購入して焼いてくれたそうで、デジタル放送の録画は面倒なことが多いようだ。なんとかパソコンにCPRMディスクの観れるソフトをインストールしたが、なかなか再生しない。なんだかCPRMのキーの照合が必要だそうで、インターネットに接続が必要だとのメッセージ。インターネットに接続すると忘れた頃に再生開始」

 アナログ放送が生きている今、放送の楽しみ方はずっと豊かだ。「コピーワンス見直し案【コピー9回可能へ】」(すごろーのスグブログ-DS)は「録画した番組を保存する時は、わざわざアナログ放送を録画してますよ」「他にも、東芝のRDを使って主題歌部分を切り出して、お歌集にしたり、パソコンに転送して壁紙を切り出したりとか楽しんでますけど、その楽しみって、アナログ放送じゃないとできないです」と、コピーはもちろん編集も加工も出来ないデジタル放送の「規制尽くし」を批判的な目でみる。

 今回の9回コピーへの緩和は、携帯電話やポータブルプレーヤーなどへ1人が3回コピーすると想定、家族3人で9回と計算している。しかし、1時間番組、2時間番組を携帯電話にそのままコピーするのには疑問がある。見どころだけを抜粋して出先でも楽しみたいと考えるのが普通だろう。もともと記憶容量が小さい携帯電話などでは見たいものが幾つも入らない事態になるのは目に見えている。

 それでもコピー回数だけを増やす今回の緩和について「copy onceからninthへ」(Mac de Life)は「『iPodへの課金問題』に代表される補償金制度と、今回の『DRM問題』に代表されるコピーワンス制度には、音楽業界と映像放送業界の利用者側(消費者)を無視した、行きすぎた著作権主張という同様の背景があるように思われます」と指摘する。「1回しかコピー(実は移動)が出来なければ、録画機器は売れない、DVDなどの媒体も売れない、業界自体が縮小する。反対にコピー制限が無くなれば、DVDの売り上げはアップし、録画機器も売れるとういう、産業界にとっては好循環に突入します。このあたりの自己矛盾暖和処置として『コピーナインス』制度を採用したようですね」

 コピーワンスであっても大容量の次世代DVDなら劣化しないでオリジナルのハイビジョン番組が残せる。ところが、専門家からコピーワンス規制が次世代DVD機器が売れない原因になっているとの見方が出ている。

 映像系エンジニア・アナリストの小寺信良氏はレコーダー市場全体の売れ行き停滞を指摘し「次世代DVDが起爆しない5つの理由」(ITmedia)で「コピーワンスがあるから、ということに加え、コピー回数緩和の方法が決着せず、長引いているところがますます停滞感を産む結果となっている」と分析する。「メディアにテレビ番組を記録することに関して、消費者は泥棒のように扱われているのじゃないのか、という感覚を植え付けられつつあるのだ」「しかも皮肉なことにコピーワンスは、さらにそれより悪いムードを産みつつある。つまり、『別に保存しなくてもいいやぁ』という状態である。それが行き着く先は、『録画してまで見なくていいかぁ』というところだ。それは、高解像度でオリジナルを見るという意味が薄れるということでもある。いくらやってもYouTubeのような動画配信はなくならないし、そこで面白いところだけちょっと見られればそれでいい、とする消費行動が、今まさに生まれようとしている」

 米国ではハイビジョン放送は衛星放送の一部にしかなく、ハイビジョン放送を地上波に広げ、放送にコピーガードを掛けている国は日本しかない。それが放送をオリジナルで見なくてもいいにつながり、録画機器・機材が売れなくなり、ひいては著作権収入の減少に進んでいく道筋が浮かび上がってきたのだ。
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by ydando | 2007-07-16 20:43 | 社会・教育
仏の少子化対策は日本の3倍、日本なら年10.6兆円
 欧州トップの出生率「2.0」に回復させたフランス並の少子化対策をとるなら、日本は年間10兆6000億円かかると厚労省が試算――10日付の朝刊で朝日と日経が報じています。日本で実際に支出されている分の3倍に当たり、消費税で賄うなら3%弱の税率引き上げになるといいます。日本政府がいかに口先だけの議論をしてきたか、これだけ如実に示すデータはないでしょう。

 2003年のフランスの家族政策支出を日本の規模で計算すると、家族手当に4兆円、出産育児休業に1兆円余、保育などに4兆円余で、現金給付だけでなく、保育サービスも充実しているようです。

 「日経:フランスの少子化対策の給付。」(Blog @ Wolfy -Side B-)は「家族手当自体11-19歳は加算ありで、しかも『第2子以降』『20歳まで』という手厚い給付」「子供を産まない選択をした所帯に対する実質的な社会負担を求めていることにもなるし、適切な処置。そのほかに乳幼児手当、新学期手当など、就学時期にも手厚い。3歳未満の第2子で、780万/年以下の所得世帯であれば、『年49.2万円』。第2子で就学中(16-19歳)であれば特別加算を除いて『年32.1万円』の給付となる」と計算しています。「こういう給付こそが実際の所得の再分配になるってことを、どうして分からないんだろうと思うのだけどね…」という主張に、私も賛成します。

 正規社員への雇用が少しは進んで結婚・出産に明るさが見え、月単位で人口減少から微増に転じたというニュースも流れました。それだけで喜ばれては困ります。こういうときだから過去に書いた第124回「少子化対策の的は外れるばかり」第152回「20代男性の3人に1人は生涯未婚の恐れ」を紹介しておきます。
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by ydando | 2007-04-10 17:37 | 社会・教育
2011年、世界1億7400万人が携帯でSNS参加
 米国の調査会社がタイトルのような予測をしているとITmediaが伝えました。「携帯端末を使ってMySpaceやFacebookなどのソーシャルネットワーキングサイト(SNS)に参加する『モバイルコミュニティー』参加者は、現在は世界で約5000万人だが、2011年には1億7400万人に達する見通しだという」。先日の「携帯電話の使われ方:世界と異質な文化 [ブログ時評70]」と関連する話です。

 5年後にこの数字が大きいと見るか、小さいと見るか、どうでしょうか。はっきり言って、海外では携帯端末の高機能化はなかなか進まない――というのが、この予測の意味ではないでしょうか。一方、日本では「mixi」が携帯電話端末でもアクセスできるようにしたら、モバゲータウン以上のペースで登録者を集めているそうです。いよいよもって、内と外とでは違う様相ですね。
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by ydando | 2006-12-20 21:27 | 社会・教育
警察・司法の功利主義が歪ませる社会(Winny判決考)  [ブログ時評71]
 数々の公・私文書をネット上に流出させ、有名になりすぎてしまったファイル交換ソフト「ウィニー」――その開発者である金子勇・元東大助手に、著作権法違反(公衆送信権侵害)幇助で罰金150万円(求刑懲役1年)の有罪判決が京都地裁で出された。同種ソフトの事件で世界各国では開発者が有罪になったことはなく、日本の社会を歪ませていく警察・司法の功利主義の流れとして際立つ。福島県立大野病院・妊婦死亡事故での産婦人科医逮捕・起訴と並んで2006年を代表すると思える。ささやかな功名が不可逆的な社会変化を起こし、報じるマスメディア側はばらばらで、動いていく事態を見送るばかり。

 裁判を傍聴してきた佐々木俊尚氏の「Winny裁判、罰金刑は重いか?軽いか?--自己矛盾を抱えた判決」が問題の本質を整理している。争点はふたつで「Winnyというソフトそのものが著作権侵害を助長させるものであったのかどうか」と「ソフトを公開した開発者、金子被告の意志の問題」である。

 氷室真裁判長は「Winnyというソフトそのものが犯罪的であるという検察側の主張は、却下し」その一方で「弁護側が一貫して主張してきた『開発は技術的検証のためで、(著作権違反を助長させる目的だったとする)供述調書は検察官の作文』という訴えを、完全に一蹴した」。ところが「ただし、Winnyによって著作権侵害の蔓延を積極的に企図したとまでは、認められない」と転じ、量刑理由では「被告は著作権侵害が蔓延することを目的としたのではなく、新しいビジネスモデルを生み出させるという目的をもっていた。経済的利益を得ようとしたわけではなく、実際に利益を得たわけでもない」と罰金刑にした理由を述べた。

 佐々木氏はこの後、「新しいビジネスモデル」を検討して「現行の著作権法、現行の著作権保護システムを崩壊させようとするのであれば、その行為は法違反とならざるを得ない」として有罪を妥当とする。そうだろうか、刑事裁判とは量刑理由のところまでであり、私は無罪を選ばざるを得ないと考える。つまり、この論理構成では「幇助」の適用は無理だ。

 「Winnyの判決について思うこと」(gdgd日記)も「正犯がWinnyを著作権違反行為に利用することについて、正犯を特定しての個別具体的な認識までは必要としなくても、何らかの形で正犯との紐帯が窺えるような主観的態様を必要とするべきではないか。本件のような技術の提供行為は、不特定多数者の利用を前提とするものであることから、この程度の主観的態様で違法性が認定されるのなら、幇助犯になりうる範囲が限りなく広がりかねない」との危惧を表明している。同様容疑で誰かが逮捕されたら、また幇助になってしまうのが妥当かとも問うている。

 求刑懲役1年に対して罰金150万円の判決は、罪状認定を大きく割り引いており、有罪とすることに抵抗感が大きかったことを物語る。それでも裁判官が有罪としたのは、現在の裁判官たちが考えている常識的な範囲から逸脱したくない、変わり者の判事と見られたくない思いの故だとみる。11月30日に「住基ネット制度の適用の強制はプライバシー権を著しく侵害する」と違憲判決を出した竹中省吾大阪高裁判事が、3日後に自宅で首をつった状態で発見された。退官が間近い判事に何があったか、今となっては知ることが出来ないが、違憲判決さえ書かなければ死ぬことは無かったのかも知れない。

 安きに就く司法は国民の間に失望の輪を広げていく。「技術者潰し?」(はっつんの日々)は「ソフト開発者はどのように使われるか…違法なことに使われる可能性はないか…常に考えながら開発をしなきゃいけませんよね?」「こんな事まで考えて開発しなきゃいけないなんて作業する気も萎えますよ」「こんな事をしていたら、日本発の技術なんて生まれやしませんよ」と主張するし、「司法は腐っている」とまで述べるブログも散見される。工学部出身でエンジニアになりかけた私には、モノを作り上げるのに一生懸命な技術屋に影響評価まで負わせるのは無理だとの指摘は理解できる。最大手紙社説の結び「技術者が委縮するという指摘もある。だが、同種ソフトの開発は止まっていない。心配は無用だろう」には、問題が違うと申し上げよう。

 もともとウィニーの摘発は、ハイテク犯罪を追う特別組織を立ち上げたばかりの京都府警が狙いを付け、新分野開拓として名を上げた。福島県立大野病院の事件でも業務上過失致死と医師法違反の罪で立件した警察署が新しい領域を拓いたと表彰され、他県の警察にもこれに習う動きがある。大量出血の帝王切開に「いちかばちかの手術では困る」と評した福島地検。少しでも難しい妊婦は大きな病院に送られてパンク状態を招き、産科医療崩壊を後押ししているのだが、知らん顔を決め込んでいる。日本医学会は12月初旬「声明文」を出して「結果責任だけをもって犯罪行為として医療に介入することは決して好ましいと思いません」と抗議した。

 急成長の結果、約2000億円で米Googleに買収された米YouTubeは、動画の共有サービスをしており、テレビ番組からの違法なコピーなどが後を絶たない。もし日本にサーバーが置いてあったら早期に摘発されて、こんなに大きくなれなかったろう。企業や研究開発の活力面でも、国民の医療や暮らしの面でも、国家権力が勝手にどこまでも踏み込んで良いものではない。可罰的違法性があるか、考慮すべき領域が広範囲にあることを認識しなければならない。

※関連=「医療崩壊が産科から始まってしまった [ブログ時評59] 」
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by ydando | 2006-12-17 16:14 | 社会・教育
携帯電話の使われ方:世界と異質な文化 [ブログ時評70]
 国際電気通信連合(ITU)が12月初めに公表した「2006年版インターネット報告書」に並んだ指標から浮かぶ日本のイメージは何とも不思議なものだった。マスメディアがどの指標を取り上げるかで現れる姿が変わってしまう。新聞をいくつも購読している人なら、同じ報告書がソースだと思わなかったかも知れない。インターネット利用者は「米中に次いで世界3位」ながら「普及率は50%で世界22位」に過ぎなかった。携帯電話に焦点を当てれば「携帯電話普及率、日本は55位」と「第3世代携帯、日本が契約者数で世界トップ」が並び立っているのだ。

 報告書の原本にもリンクしている「日本のネット人口はもっと増えていいはず?世界のネット利用統計」(ミーム吉田のネットニュースクリッパー)は「人口比からするともっと普及する余裕はあるはず」と書いている。指摘にあるように携帯電話まで含むのだから、言われがちなキーボードアレルギーなど関係が無くなる。だが、使われ方が海外と大幅に異質なのではないか。

 携帯電話利用者は20億人に達し、今後2年すれば世界中で2人に1人が使うようになると予測されている。普及率トップのルクセンブルクは人口100人当たりで「155」もの契約があり、日本の「74」は遠く及ばない。海外では通話と簡易メールの単純機能に特化して「使い捨て」くらいの感覚が普通とも聞く。これに対して国内では「お財布機能」「音楽再生」「GPSナビゲーション」「ウェブ閲覧」「高画素数カメラ」に、今年はテレビが見られる「ワンセグ」まで加わった多機能・高機能オンパレード。

 「台湾の学生の半数の毎月の携帯使用料金は」(香港GSM/3G携帯情報局BLOG)は携帯電話とパソコンに対する、アジアでの感覚の差をこう伝えている。「台湾のニュースなどを読むと、『台湾の中高生の携帯電話(PHSも含むのでしょう当然)の所有率は90%で、毎月使っている料金は半数が500元以下』とのこと。すなわち平均的な学生は月2000円以下しか使っていないわけです」「若者だって普通にPCいじっているのがアジア各国ですから、『携帯電話の狭い画面でしか見れないものにお金を払う』より『PCの大画面で無料を楽しむ』というのが現実ではないでしょうかね」

 高速通信が出来る第3世代携帯電話の契約者数は2005年で世界6000万人。日本が1779万人でトップであり、2006年になってさらに加入者が激増している。11月末の電気通信事業者協会の「契約数」から計算すると5800万を超えていた。国内では、この第3世代携帯電話契約者だけを対象にした携帯電話専用のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)が力を持ち始めたのも2006年の特色だ。

 「モバゲータウンは次世代のミクシィになるのか?」(FPN)が紹介している「モバゲータウン」がそのひとつである。9ヶ月で会員200万人を集め、現在も毎月25万人ずつ増やしているというから驚く。「今回、本格的な十代(中高生+大位)を狙っているSNSが携帯電話SNSと言う形をとって現れました」「日本型SNSの実名登録+招待制は最近、限界が見え始め、陰りが出始めています」「ビジネスの視点から見れば、重要なのは実名か匿名かでは無く、参加者の身元確認や個人情報保護です。それが出来ないならばマイスペースやモバゲータウンのように自由登録制にすれば良いと考えられます」

 モバゲータウンは携帯電話会社の外にある「勝手サイト」だが、携帯電話会社自身もSNSに手を着け始めた。KDDIが手がけている「EZ GREE」がそのひとつで、11月にスタートして1週間で会員が10万人を突破したという。

 そのSNSでいったい何をしているのか。「絵文字も空気も読めません 10代がハマるSNS『モバゲータウン』を28歳(♀)が探検した」(ITmedia News)が好適なルポになっている。入会したらメールの嵐に見舞われ、「モバ彼・モバ彼女というバーチャル恋人で、メッセージ交換や掲示板・日記のコメントのやりとりだけで『付き合う』」関係を見る。「モバ家族」「モバ学校」まであって「携帯電話は、PCよりも身近で個人的なツールだ。そこで行われているコミュニケーションも、PC向けインターネットよりもずっと身近で親密で本音ベース。モバゲータウンでは、暇なら暇、寂しいなら寂しいと格好付けずに言ってしまえて、だべったりゲームしたりして時間をつぶせる。学生時代のサークルの部室のような印象だ」と報告している。

 2002年に私の連載第118回「iモードは日本でしか成功しない?」で日本の特徴として「急激な変化や行動を容認する『小金を持った、軽薄で好奇心に満ちたデジタル・ディバイド層の大量存在』は非常に稀である。その結果が大変な変化であっても気にしないのは、本物の保守主義が存在しない日本だからだ」と書いた。その最後に引用した英国調査会社の予測では、iモードサービスが2006年までには西欧でも普及するはずだったが、現在も苦戦が続いている。どうやら相当に深いところから世界と異質な文化を、我々は持っているらしい。
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by ydando | 2006-12-10 23:08 | 社会・教育
私大定員割れ4割、全入時代の憂鬱 [ブログ時評62]
 4年制私立大の4割、私立短大の5割が定員割れに陥っている――日本私立学校振興・共済事業団の調査で、いずれも前年から10ポイント以上増え、私大で40.4%、短大51.7%に上り、中でも定員5割に満たない私大が20校あった。今春の進学率は52.3%と過去最高を記録、18歳人口減少による大学全入時代を目前にして、大学や学部学科の新設はむしろ増えている。矛盾した先行きについて、ブログを書いている大学関係者たちは構造的な問題を指摘している。

 この春の開校は8大学、新設学部は41で、全体の定員は1万人近く増えて44万人に達した。「私大の定員割れ」(5号館のつぶやき)は「少子化が進んでいることは明らかで、数字的にも出ているのにそれに逆行するような定員増あるいは大学や学部の新設などを認可している文科省としては、自由に競争させてつぶれるところは勝手につぶれるにまかせる自由競争をさせているということでしょうか」と疑問を投げる。

 学部学科新設の裏側について「定員割れのその後」(文学部只野助教授)はこう語る。「教員は自分の居場所作りに奔走します。研究して論文書いて、いい大学に移ろうとする正統派は皆無に等しい状況です」「とにかく自分の講義を作ろうとします」「その昔、マルクス主義バリバリの社会学者が、ジェンダー学、子供学、地域づくり、コミュニティー論、福岡学etc.。ただのパソコン屋が、情報リテラシー、地域メディア論(ただのDJごっこ)、先端メディア実習(ただのハイビジョンハンディカム)といった具合です。挙句の果てには、NPO(ただのプロ市民)をつれてきて地域連携だそうです」「一番いけないところは、彼らに罪悪感がなく、こういう自分の姿を社会がリスペクトしてくれる(いやそうに違いない)と思っているところがたちが悪いです」

 そうして生まれる学部学科には、これまで見られなかった名前を持つものが増えている。「私学定員割れ時代の大学選び」(大学教員の日常・非日常)が「斬新な」名前に乗ってはいけないと警告する。「これだけ、学生が少なくなってるのに、どうして定員を増やすような学部をつくるんでしょう?今まで通りの学部学科の名前で学生が来るならば、別に名前を変更する必要なんてありません」「なんで『人間』とか『健康』とか『総合』とか『情報』とか『国際』とか『コミュニケーション』とか、名前ジェネレーターでつくったんじゃないの?と思うような学部学科名にするかと言えば……、そう受験生をだまくらかしたいのです」

 受験生が減っている以上、大学側は組織をスリム化するのが自然なのだが、それを許さないガバナンス上の問題が存在する。「各紙一斉報道『私大の4割が定員割れ』」(俺の職場は大学キャンパス)は学部学科を減らせない理由をこう指摘する。「大学では、大きな決定事項は教授会が決定して(承認して)います。学校教育法第59条の『大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない』という記述がその根拠だとされていますが、ご覧の通り『需要な事項』という記述はあいまいです。困った事に、経営に関する事項の多くが、教授会の審議事項になり、教授達の反対にあって取り潰されているのですね。その典型例が、学部学科のスリム化というわけです。自分達の居場所をなくすような提案が、教授会を通るわけがありません」。この点で「社会からの声が大学に届く事はないんだろうな」と、この大学職員は絶望的に感じる。

 大学定員の水増しが拍車を掛けている「超」入りやすさに、一般の人からも疑問が出てている。今春の私大では入学者の45%が推薦入試組で、論文や面接を重視したAO入試を含めると「一般入試組がもはや少数派」との日経記事に「大学激動」(税理士日記)は「受験、特に大学受験はやはり受験勉強に励み合格発表の『天命』を待つという道が『王道』であると信ずる。大学受験がこんなに簡単になってしまっては、日本人は、いつ勉強するのであろうか」「『少子化』がこんな形で教育を歪めていくことを『中学生』を子供にもつ親として悲しく思います」と嘆いている。これに共感する大学関係者も少なくない。

 詰め込み型の受験教育が最良との立場を私は取らないが、ある程度以上の知識量を持たないでは、それを使うアイデアすら思いつかないだろう。現役大学生のブログを見て回ると、世間で言われるよりは自分で考えているケースに行き当たり、悲観ばかりはしない。しかし、国内の大学では指導してくれるべき大学教員が文系、理系の差なく自分の掘ったタコツボに閉じこもっているケースが多いと、自分の取材経験からも判断している。企業が大学側の教育に疑問を持っている今、知識を蓄えるだけを脱して、大学を問題解決のトレーニングの場にできるかが問われている時代だ。ブログで拾った問題意識を見れば、負け組の大学破産が目前にあるばかりでなく、当面は勝ち組の大学だって、その内実を考えると憂鬱になる。
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by ydando | 2006-08-20 13:31 | 社会・教育
労働を労働でなくす偽装請負の横行 [ブログ時評61]
 新聞やテレビで集中的に取り上げられて、大企業での偽装請負の横行や労働法規無視に関心が高まっている。ネット上では若年層の生活やキャリアを圧迫している実態や、外国人労働者の酷使などの体験報告も出ている。

 「雇用形態 ~請負編~」(労働サポートセンター@ブログ)で、まず請負契約と労働の違いを確認しよう。請負で得られるのは「『賃金』ではなく『報酬』であり、労働基準法を初めとした労働法の保護対象外であり、厚生年金ではなく国民年金、健保ではなく国保、失業保険の対象でもなく、有休もない。何時間働こうが残業代もなく、税金の申告は自分で確定申告をします」「請負は、基本的に業務を請け負うのです。その業務をこなしさえすれば、働き方について取引先に管理されたり指示されたりはしません」「世に請負契約を結んでいる方はたくさんいます。しかし、自分が請負契約を結ばされているということを理解していない方もたくさんいます」

 こうして実態は労働なのに、請負であると偽装して労働法規の保護から外され、不利な状態に置かれている労働者が多数発生している。大企業の前にIT業界で別の観点からも問題になっていた。「IT業界の問題点 - 偽装請負」(ビジネス指向のエンジニア日記 - ビジョナリーカンパニー作成日記)はこう指摘する。「中小のソフトハウスには、独自の技術もなく、経営が優れているわけでもない会社が沢山あります。なぜそんな企業が生き残っていられるのか、それは偽装請負を行っているからです」「偽装請負が問題なのか、それは最近になってIT業界の発達を妨げていることが認識されたからです」「そこには社員を育てようという気はまったくなく、人を商材としか考えていない経営者が多くいて、技術者を使い捨てする事も何とも思っていない経営者がいるのです。でも騙されてこんな会社に入社してしまう新人技術者が後を絶ちません」

 松下電器など大企業の悪質な使用実態を暴く声も聞こえる。「若い人達へ 今こそ声を上げて欲しい」(松下プラズマディスプレイ社 偽装請負事件)は、どんどん安上がりな雇用になるよう下請け会社を変える手口を告発している。「プラズマディスプレイの製造ラインで封着工程という部門は一番重要な部門であるということは、松下プラズマの班長も私に言っていた。そして、その部門を支えてきたのは私やSさんやNさんといったパスコの従業員だった。だから、松下プラズマの班長達が会社命令でパスコの従業員を条件の低いコラボレートに無理矢理移籍させようとした時に」「封着工程のパスコの3人の従業員が首を縦に振らなかった時も辞めさせることが出来なかったのである」「パスコの従業員達に対して、松下プラズマが行なってきたことは実にえげつなかった。松下の命令でパスコの従業員がコラボレートの従業員に仕事を教えるということをしていたのだが、これはある程度仕事を教えたら自分がクビになるということを意味していたのである。クビになりたくなければ、条件の低いコラボレートへ移籍しろということである」

 「漂う若者『先がない』 偽装請負の工場 生活費は数万円 突然の解雇予告」(ウーツー[CDレビューア])に現れる、大幅にピンはねされている派遣会社の労働者も偽装請負の可能性が高そうだ。「僕はかつては正社員だった。会社にとって無用の僕は製造の子会社で3勤3休の2交代12時間勤務に送られた。立ちっぱなしで足はむくんで、足の裏が痛くて、帰りに歩けなくなることもあった」「僕はまだ恵まれていた。工程の8割を占める派遣会社の青年は、会社から派遣会社に渡される一人当たり30万円の金のうちの2分の1、15万円の金しか渡されてなかったのだ」「交代の時間がきて裏番の青年が腹が痛いと言っていた。おそらく有機化合物の臭気のせいだろう。僕は『早く医者に行ったほうがいいよ』と言ったが、彼は答えた。『僕は健康保険に入ってないから、医者にかかれない』」

 労働法規ほど守られていない法律は少ないと言われる。労基署は請負契約だと知ると、それ以上の追及を止めてしまう傾向が強い。次に挙げるシャープ亀山工場の報告にも呆れる。「派遣と請負の・・・」(みんみんざる碁の日記)は言う。「驚くべきはその勤務シフトです。亀山は24時間を2交替で操業しています」「シャープやM社の正社員は3勤2休が原則です。それは残業や休日出勤があったら労働基準法違反になるからです。派遣のスタッフは4勤2休が原則です。1出勤日の労働時間は10.5時間です。労働基準法は週40時間労働・残業は1月40時間まで、という事になっていますが、普通に全部出たら『違反』になってしまいます」「日系ブラジル人の勤務シフトたるや6勤2休および6勤1休なんです」

 第152回「20代男性の3人に1人は生涯未婚の恐れ」「非モテ」意識と親同居独身者の増加 [ブログ時評60]で描いた、若い世代が親から独立できず、異性との交際が細っている問題の大きな背景に、こうした労働の実態があるのは間違いない。
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by ydando | 2006-08-07 17:16 | 社会・教育