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by ydando
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カテゴリ:食・健康( 21 )
高次救命救急にヒマは必要不可欠 [ブログ時評88]
 この年末年始、関西地区で救急患者の受け入れを多くの医療機関が断るケースが相次いだ。一番新しい例が2日夜にあった東大阪市の交通事故で、軽乗用車と衝突したミニバイクの男性(49)が周辺5カ所の救急救命センターから「満床」などとの理由で断られ、1時間余りして6番目の千里救命救急センターに運ばれたが、亡くなった。マスメディアの論調は当初、年末年始の特殊事情の方に振れたりした。違うだろう。最後の砦、3次救命救急センターが大災害が起きたわけでもない中で軒並み「満床」になるのは異常なのであり、「医師が足りなくなっている証明だ」とはっきり言い切るべきだった。

 そんな折に、「行政学者から見た医療崩壊」(NATROMの日記)で「まちの病院がなくなる!?―地域医療の崩壊と再生」(伊関友伸著)から引用された、気になる記述を見た。

 「[現在の国の行う医療政策は、ことごとく現場の医師のやる気を喪失させるものであるようだが、]その原因は、国の行う医療政策の目的が、『医療費の削減』が第一となっていて、国民にとって必要な『医療の質の維持』という目的が後回しになっているためであろう。これは、厚生労働省だけが悪いというわけではない。国全体の政策として『医療費を削減する』という政策目標が設定されている中で、厚生労働省ができることは限界がある。…医療の現場がどれだけ疲弊していても、厚生労働省は医療費の総額を増やすという政策決定をする権限は与えられていない」

 これに納得してしまう方がいらっしゃるようだ。反論するのは容易だ。ほぼ1年前の「安倍内閣は産科医療崩壊とは思わない [ブログ時評75] 」で書いた通り、既に産科領域の高次救命救急機関が一般出産の妊産婦まで抱えてパンク状態にあった中で、厚生労働大臣に「(産科医の減少は)出生数の減少で医療ニーズがはっきり低減していることの反映と承知いたしております」と国会答弁させたのは、厚労省官僚だったのだから。

 確かに政策の決定権は政治家にあるが、ここまでお膳立てしてきたのは官僚であり、医療費削減――病床数削減――医師数削減の方向は来年度予算案でも揺らいでいない。産科・小児科から外科・内科まで医師不足が歴然としてきた中、既定方針の下で官僚は「不作為」を通そうとしているかのよう。

 年始めにブログを巡っていて、産科医のページ「胎盤をクーパーで剥離しました」(ななのつぶやき)で胸を突かれた。難産の末に胎盤癒着が判明した。「上腕の中ほどまで、産道から子宮内に」入れても指が子宮壁との間に潜り込めない。「出血は容赦なく続いています」「咄嗟の判断で、福島県では『禁忌』のクーパー、使いました。クーパーとは、手のひらサイズの手術用はさみです」「左右の手で子宮壁と胎盤の厚みを感じながら、ゴリゴリと胎盤を剥がしにかかりました。逮捕とか裁判とか、頭に浮かびますが、それよりこの産婦さん死なすわけ、いきません」

 「福島県では『禁忌』」とは、産科医が胎盤を剥離して出血多量で産婦が死んで逮捕され、刑事裁判になっている事件を指す。絶対成功の確信もないのに手術用はさみで剥がしたことが弾劾されている。こんなリスクを背負いながら、多くの医師が休日も不十分なのが医療の現状だ。それでも高次救命救急機関は一部はヒマにして置かねばならない――この常識が医療行政を扱う厚労省官僚に欠け始め、目の前の現実を見て「まずい」と感じなくなっている。
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by ydando | 2008-01-06 20:03 | 食・健康
患者公園置き去りに見る医療政策の貧困 [ブログ時評85]
 大阪府堺市の新金岡豊川総合病院の職員4人が糖尿病で全盲の男性患者(63)を退院させ前妻宅に連れて行ったものの引き取りを拒否され、大阪市西成区の公園に男性を荷物ごと放置する事件が9月に起きていた。西成署は保護責任者遺棄容疑で調べている。マイケル・ムーア監督の最新ドキュメンタリー映画「SICKO」(病気を意味する俗語)で医療費を払えない患者を平気で病院から放り出す米国医療事情が紹介されたばかりだ。日本でも現実になったことに唖然としてしまった。

 この患者は7年前から入院し、2年前からは医療費自己負担分を払わなかったので未収金は185万円になっていた。3年前から退院可能なのに動こうとせず、看護師や他の患者に迷惑をかけたり備品を壊したりしたので、6人部屋を1人で使わせる状態だった。最近になって前妻宅が自宅と判明、職員が前妻に連絡せずに退院手続きをとった。前妻に拒まれた後、公園に置き去りにしてから職員の1人が119番に匿名で通報していた。

 「大阪患者公園置き去り事件」(新小児科医のつぶやき)は医療関係者の視点でこう分析する。「生活保護の打ち切りは病院もすぐに分かりますし、打ち切られれば治療費の支払いに支障を来たしますから、打ち切られたことを患者に話し、再開申請の手続きを何故行なわなかったかです」「他施設への移転話もどの時期に行なわれたか分かりませんが、生活保護が打ち切られ、障害者年金も前妻が持ち逃げしている状態なら事実上不可能です。問題行動の多い患者を引き取る事さえ難色を示すでしょうし、自己負担分も出て来そうにないのならどこでもお断りでしょう」「病院側が行なった公園置き去りは許されざる行為である事はもう一度念を押しておきます。念を押した上であえて好意的に解釈すると、病院側の申し出を悉く拒否した患者に対するショック療法とも考える事ができます。手段が乱暴なのは言うまでもありませんが、この事件は単なる置き去りではなく、置き去ったその場で119番通報を行なっています。批判されるべき方法ですが、他の医療機関に連絡していると見れます」

 「置き去りは論外だが」(医療報道を斬る)は事件後、10月末に堺市保健所が医療法に定める職員の監督を怠ったとして病院を行政指導していることを取り上げて批判する。「病院もまた被害者であることがよく分かる。むしろ、患者や、年金を管理している前妻は善意の被害者などではないことが分かる。黒字の病院でも利益率は微々たるものだ。未収金があればすぐに赤字に転落するだろう。まして、営業妨害まであれば、どうにかして追い出したいのは当然だ。その様な状況を放置しないですむシステムを構築するのが行政の役目ではないのか。自分たちの怠慢を棚に上げて行政指導とは何事だろう」

 この患者のように病状は安定しているのに引き取り手がない「社会的入院」が医療費を膨らませている元凶と考える厚生労働省は、病床数の大規模削減に乗り出している。昨年、全国の療養病床約38万床を、2012年度までに約15万床に減らす方針を打ち出し、既に各地方で具体的な削減計画が立てられ始めている。診療報酬の改定も療養病床の運営に不利な仕組みになってきた。また、総務省の公立病院改革懇談会が、病床の利用率が3年連続して70%未満の公立病院に対し、病床数の削減や診療所への転換を求めるガイドラインをまとめた。

 日本の病床数が多すぎるから社会的入院を生んでいると言われてきた。例えば人口1000人当たり病床数は日本が米国の4倍にもなる。ところが、米国には統計に現れない病床が多数あると、「『日本の病床数過剰』説のトリックを明かす」(日経メディカル ブログ 本田宏の「勤務医よ、闘え!」)が指摘している。医師が配置されず、医療は開業医が担当するために病院としてカウントされない「ナーシングホーム(NH)」が大量にあるのだ。「米国ではNHが亜急性期以降の治療や、人工呼吸器をつけた患者も収容し、終末期も担当しているようです。ここで死を迎える人は全死亡者の19%といわれ、日本の療養病床のイメージとまさに重なるのです」

 NHを加えて病床数の日米比較をすると、以下の表になる。

【医療提供施設別病床数日米比較】
       (1000人当たり病床数)
  日本        米国 
一般病床 7.1  短期入院病床 3.1
療養病床 2.7  長期入院病床 0.1
精神病床 2.8  精神入院病床 0.3
結核病床 0.1  NH       6.8
病床合計 12.8  病床合計   10.3

 日本の「一般病床+療養病床」が「9.8」、米国の「短期入院病床+NH」が「9.9」とほぼ釣り合っている。日米差のほとんどは精神病床の差になってしまう。この均衡を無視して、国は療養病床を半分以下に削減しようとしている。社会的入院による医療費無駄使いは確かに存在するが、受け皿が無い高齢者や単身者を社会全体でどう処遇するのか考えられていない。急速に社会的入院を追放したら、公園への置き去りが例外的な事件でなくなってしまわないか。生活保護の出し渋りなど、セーフティネットのほころびが目立つ昨今だけに強く危惧する。

【関連】看護師不足起こし老人医療放棄を強行 [ブログ時評57]
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by ydando | 2007-11-18 18:12 | 食・健康
若い男は体形も生活もオヤジ世代と決別 [ブログ時評84]
 経済産業省は10月初め、人体データの計測結果「size-JPN 2004-2006」をとりまとめて発表した。工業製品の寸法を決めるために前回1992~1994年にも実施しており、比べると男性の30歳以上は体格が大きくなり太り気味なのに、女性は肥満度を示すBMI値(体重(kg)/(身長(m)の二乗)が大きく下がり細身になる傾向がみられた。「太る男性とやせる女性」の構図自体は以前から知られていることで、例えば私も2000年に第83回「続・肥満と食欲の仕掛け」で国民栄養調査をもとに論じた。その英語版「Men Getting Fatter, Women Getting Thinner」は私の英語サイトで最も読まれているファイルの一つだ。しかし、今回の発表で示された20代前半男性の体形データは極めて特異で、男性の領域から離れ、女性に急接近していた。まさに目を疑う思いがした。

 発表された「今回と前回(1992年~1994年)の平均値グラフ」そのものを引用するのが分かりやすい。(小さすぎて見にくい方は原グラフを参照してください)
b0071191_1533180.jpg

 BMIや臀突囲で特に著しく、バスト囲でも相当程度、20代前半男性だけが同世代の女性の値に接近している。詰まるところ、この男性たちは太りすぎている年上世代と決別し、スレンダー志向の同世代女性と並んで生きようとしているのだろう。国民健康・栄養調査の結果を時系列で並べると、もっと見えてくる傾向がある。

 ●肥満の割合(BMIが25以上) 単位:%
     15-19 20-29 30-39 40-49 50-59 60-69 70歳以上
 男性
  昭和54年  6.0  9.2  16.3  21.3   19.1  16.5  14.6
  平成10年 11.4  19.0  30.6  29.0  29.0  29.8  20.1
  平成15年 12.2  14.8  32.7  34.4   30.9  30.7  20.9
 女性
  昭和54年  4.5  7.1   14.1  24.7   27.7   26.9  25.1
  平成10年  6.1  7.0   13.9  19.5   26.3  31.3  27.1
  平成15年  6.9  8.1   12.6  19.8  23.8  30.3  28.3

 ○やせの割合(BMIが18.5以下)
     15-19 20-29 30-39 40-49 50-59 60-69 70歳以上
 男性
  昭和54年 15.3    8.4   4.3  4.1  6.0   9.5   17.0
  平成10年 16.3   8.3   3.8   3.6   2.8   4.0  11.6
  平成15年 18.6    8.0   5.1  1.6  2.8   3.2  11.2
 女性
  昭和54年 13.5  14.4   9.2  4.7  6.1  10.2  12.5
  平成10年 20.4  20.3  12.8  4.5   4.3   3.7  10.6
  平成15年 16.3  23.4  14.7  7.2   6.6   6.4   8.9

 平成10年(1998)には20代までも年上世代に習って肥満の道に進むかに見えたのに、平成15年(2003)には20代の肥満は減り、30代以上とは違ってきた。その原因は10代後半男性にあるように見える。「やせ」型の割合が同世代女性を上回る勢いで増えている。ただ、私には、あまり健康的とは思えない。

 20代を中心に若い女性に「やせ」型が異様に多い理由について「図録▽男女の体型(肥満・やせ)の実際と自己認識」(社会実情データ図録)は「特異なのは、女性の10代後半から30歳代であり、男性以上に実際より太っていると思っており、また実際はやせているのにやせていると思っている人は少ない。20代女性では、5.4%しか太っていないのに41.4%が『太っていると思う』と答えており、21.4%は低体重(やせすぎ)なのに、『やせていると思う』は15.0%とそれをかなり下回っている」「こうした若年女子の特異な自己認識(スレンダー志向)が、低体重(やせすぎ)を生んでいることは明瞭である」と分析している。

 ブログの声「size-JPN 2004-2006の調査結果」も「最近の女性をみていると、痩せているというよりもやつれている感じの女性が多いような気がします。女性はもっと健康的に太るべきではないでしょうか。拒食症キャンペーンなどの広告をみているとそんな感じがします」とみるのだが、若い男性たちはその女性像に、にじり寄ろうとしている。

 8月22日に日経流通新聞が首都圏に住む若い世代の消費行動について、興味深い「MJ若者意識調査」を紙面に出した。「いつも車や酒を好むとは限らない20歳代の消費行動」(Klugクルーク)は結果を引用して、こう指摘する。「20歳代の回答者のうち、お酒を全く飲まないか、月に1回以下しか飲まない割合は34%、休日をほとんど家で過ごす、もしくは家で過ごすことが多い方の割合は43%と半数近くを占めています。日経流通新聞では、こうした調査結果を引用し、『巣ごもる20代』と大きく見出しをつけ、今の20歳代は、堅実で小規模な暮らしを好むと報じています」「人間は時代や世相の影響を受け、行動様式を周囲の環境に応じて変化させるものです。若者はお酒や車が好き、若者は貯蓄よりも消費を広げる、という考え方は、戦後の日本経済を語る上で典型的なものだったかもしれません。しかし、人間を相手にビジネスをする以上、企業も顧客の変化にあわせて企業活動を変えていく必要があるのでしょう」

 MJ若者意識調査を見た際、分かるようでいて、もうひとつ腑に落ちないものが残った。体形というものは主に食生活から生み出されるから、優れて生き方の産物だ。今回の発表を分析して、善し悪しは別ながら、若い世代の男たちがオヤジ世代とは違う生き方を選択したのだと理解すれば納得がいく。「太る男性とやせる女性」という対立構図ばかりがメディアで流されたが、実はその構図の終焉こそが語られていたのだった。もちろん、バブル崩壊後の長い就職難、非正規雇用が3分の1に達する中で生まれた将来への不安などを背景にしてだ。


お知らせ=続報が「『男も痩せ型』若者変貌と非正規雇用」
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by ydando | 2007-10-08 15:47 | 食・健康
お産の危機は首都圏にこそ迫っている [ブログ時評83]
 奈良県の町立病院で出産途中に意識不明に陥った妊婦の搬送を19病院が受け入れず6時間後に大阪・吹田の国立循環器病センターで手術を受け死亡した事故から1年余り、また奈良で救急車を呼んだ妊婦(38)が9病院から搬送を断られて車内で死産した。奈良県ではこの1年間、何ら有効な対策を進められなかった事実が明らかになるとともに、北海道、宮城、新潟、千葉、神奈川などでも同様の搬送拒否が相次いでいることが報じられるようになった。東京を中心にした東日本のマスメディアがようやく他人事でないと気付き始めた。それなら申し上げなければならない。お産の危機が迫っているのは離島でも過疎地でもなく、首都圏なのだと。

 お産現場の実状は「神奈川県の現状」(レジデント初期研修用資料)にある通りなのだ。「このあいだ遊びに来た下級生の話」「奈良県の産科事例、例の19病院が救急搬入を断った話は、現場では誰も驚かなかった。神奈川では、20病院以上に声をかけても搬入先がみつからないのは日常茶飯事だから」

 人口に対する医師数が西高東低であることが広く知られている。産科医はどうか。日本産科婦人科学会が実際に産科を扱っている医師数を「分娩取り扱い施設数及び常勤医師数のデータ」で調べているので、それに産科医1人当たりの人口も加えて関東と近畿を比べよう。

   産科医数 出生/医師 人口/医師
 茨城  149  176   19,967
 栃木  153  116   13,179
 群馬  108  164   18,741
 埼玉  231  268   30,535
 千葉  306  173   19,791
 東京  733  127   17,150
 神奈川 506  157   17,373
         関東計 18,979
 滋賀   86  158   16,051
 京都  195  113   13,577
 大阪  724  110   12,178
 兵庫  301  165   18,573
 奈良   72  163   19,741
 和歌山  73  112   14,193
         近畿計 14,399
 全国  7937  135   16,096

 東京と大阪に多少はゆとりがあり、地区全体の緩衝材になっている。北関東の栃木、北近畿の京都も同様に余裕がありそうで、それぞれ北部のお産需要を吸収しているのだろう。問題はどちらも南部にある。近畿で奈良が厳しい状況にあると知って関東を見れば、千葉や茨城では産科医1人当たりの人口が2万人に迫り、奈良を超えている。それどころか3万人を超えている埼玉がある。埼玉の産科医が優秀で全国平均の2倍の出産をこなしているということはあり得ないので、何割かの妊婦が埼玉県外で出産しているはずだ。既に満足に地元で産めない県が出現しているのだ。

 搬送拒否続出が常態という神奈川。救急搬送が必要な妊婦のを受け入れてくれる病院を探すのに、医師に代わって県救急医療中央情報センターの職員が24時間態勢で取り組むことになったと報じられた。「産科の電話代行業 でも責任は?『神奈川県が妊婦搬送先探し代行、産科医の負担軽減へ』」(勤務医 開業つれづれ日記)は「同センターでは、職員11人が3人ずつ交代で、24時間態勢でこの作業を代行」「24時間体制を作るには、これが正しい労働基準。しかし、これほどの産科医がいる病院はほとんど無いのではないでしょうか」と医師側の勤務実態を無視したシステム作りに嘆息する。そして、4月からの試験実施で8つある基幹病院から「152件の依頼を受け、88件で受け入れ先を確保」と報じられていることに、コメント欄は「確保されなかった時点でマスコミ用語の『7件のたらい回し』が発生している事になります。それが5ヶ月で64件。神奈川の産科事情の厳しさがよくわかります」と反応する。人口が大きい神奈川から県外に救急搬送される妊婦の数は奈良の比ではないらしい。

 9月、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会は舛添厚生労働相に「産科救急医療対策の整備」と「産婦人科医師不足問題への対策」についての「陳情書」を手渡した。「政府・与党の緊急医師確保対策」に対する「意見書」も提出しており、産科医側の意見が行政のトップに伝えられた。「産科医が減っているのは、お産需要の減少を反映しているにすぎない」と国会答弁した前の厚生労働大臣にも7月に陳情書を出したが、8月末に政府与党から公表された緊急対策案には不満が大きかった。

 意見書は政府与党の対策に手厳しい。例えば目玉になっている医師不足地域に緊急に医師を派遣するシステムになら「地方病院においては既に、相当な好条件を提示しても全く希望者がいない、という現状で、どのように派遣する医師のプールを作るのか」と問う。医師不足に対する「緊急臨時的な増加策が、その地域・診療科にとって継続的な効果をもつためには、緊急対策をとっている間に抜本的な解決策が同時にすすめられなければならないことは明らかである。今回の対策にはその点での検討が十分に含まれているとは言い難い」

 しかし、今回出した陳情書の中身が実現したとしても、直面しているお産の危機を打開できるのだろうか。奈良の死産妊婦(38)は妊娠7ヶ月なのに産科を受診していなかった。陳情書は「新たに策定される必要がある総合的な対策においては、未受診妊婦を含む産婦人科一次救急症例への対応が、各地域において明確に規定される必要がある」と述べるが、産科医が首都圏でさえ絶対的に足りない、産科施設が次々に閉鎖される中で何が出来るのか。

【関連】医療崩壊が産科から始まってしまった [ブログ時評59]
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by ydando | 2007-09-17 22:36 | 食・健康
勤務医は既に優良職業から脱落した? [ブログ時評78]
 朝日新聞が4月初旬に報じた記事「医師確保へ苦心の高給 自治体病院2倍の差 政投銀調べ」がブログで発言している医師たちの関心を呼んでいる。記事自体は医師が少ない北海道などの病院が数千万円の高給でつなぎ止める動きを伝えたものだが、関連した書き込みやコメントで都市部での勤務医の収入や勤務実態を読むと、世間で言われている優良な職業から既に滑り落ちているとしか思えない。医師不足問題を調べていくと、厚生労働省は労働法規の考え方とはかけ離れた長時間労働を当然視している。この政策なら、産科で顕在化してしまった医療崩壊は外科などにも広がって行かざるを得ない。

 「ちょっとおかしいんじゃないの」(さあ 立ち上がろうー「美しい日本」にふさわしい外科医とは)は「研修医はおそらく年収300万円。そして彼らはどこの自治体病院でもこんなもの。医員は年収200万円前後。自治体病院で税込み年収1200万もらったらそこの病院はいい病院。ちなみに自治体病院には都立病院も入っているようだけど、外科医10年目の非常勤で大学から派遣されている人たちは、年収420万円程度」と指摘する、記事にある東京都の平均1313万円は「常勤勤務医の平均という線が、一番正しいのでは?病院長、外科部長、外科医長という一握りの特殊な階級の平均だったら、納得いくけど」「一番、崩壊しそうなのは、この下の人たちのモチベーションなんだけど……。ピラミッドの裾野が一番広くて、そこが崩れたら本当におしまいだよ」と主張している。

 「医師の給料だけが、経営悪化の原因か?」(うろうろドクター)も反発の声をあげる。「黒字の病院と、赤字の病院の差をわけるものは医師以外の多数派の職員(主に事務系)の給与水準と、患者さんを集められる医師がどのくらいいるか、ということであり、必ずしも医師の給料が高いから赤字になるという訳ではありません」。町立病院で常勤医が1人の例など「『平日は毎晩当直についている』とか、『院内に寝泊まりしながら年に数日しか休日がとれず』とか、大新聞なのに『これが、労働基準法に明らかに違反してないのか?』ということを平気でさらっと書いているのが、また頭にきます。4000万、5000万の高給は『病院の奴隷(24時間働きますよ)』のような超人的な働きによるものではないのでしょうか?」

 毎晩当直して週末にしか家に帰れない勤務なら、奴隷以下だと思う。かつての米国、アフリカ人奴隷にだって睡眠の自由はあったはずだ。

 日本外科学会長の門田守人・大阪大教授が4月初めに、過酷な勤務実態を示す会員アンケートの結果を公表している。「外科医7割、当直明けに手術 病院勤務は週70時間」(社会と医療=本音のカルテ=)は朝日新聞の記事からこう引用し、医師全体の過重労働が現れていると指摘する。「調査は去年11月、インターネット上で回答を募った。勤務時間は平均週59.5時間。病院勤務では同68.8時間。労働基準法で定める週40時間を大幅に超過していた」「当直明けの手術参加は『いつもある』31%、『しばしば』28%、『まれに』が13%。『当直明け手術はしない』は2%しかなかった。20~40代では、約9割が当直明けに手術をしている」

 厚生労働省の「医師の需給に関する検討会報告書」(2006年7月)を読んでいくと、自治体病院にに限らず勤務医全体に広がっている繁忙感の原因は、医療費抑制のために医師数を極限まで切りつめようとしてきた国の医療政策にあると考えざるを得ない。

 「医師の勤務時間の現状と、勤務時間のあるべき姿とのギャップを現状の医師数に上乗せした人員を現在の医師必要数と置いた。必要医師数の算定に当たっては、医師の勤務時間を週48時間とおいた。これによれば、平成16年(2004年)において、医療施設に従事する医師数が25.7万人(病院勤務16.4万人 診療所勤務9.3 万人)(医療施設以外の従事者を含む医師数 26.8 万人)であるのに対し、医療施設に従事する必要医師数は26.6万人(医療施設以外の従事者を含む必要医師数 27.7万人)と推計される」

 「上記の推計は、医師が医療機関において過ごす時間のうち、診療、教育、他のスタッフ等への教育、その他会議等の時間を勤務時間と考え、これを週48時間までに短縮するのに必要な医師数から求めたものである。また、仮に、休憩時間や自己研修、研究といった時間も含む医療施設に滞在する時間を全て勤務時間と考え、これを週48時間までに短縮するには、医療施設に従事する必要医師数は31.8万人と推計され、前述の25.7万人との差は6.1万人(病院勤務 5.5万人、診療所勤務 0.6万人)となる。しかしながら、休憩時間や自己研修は、通常は勤務時間とは見なされない時間であり、これらを含んだ時間を全て勤務時間と考えることは適切ではない」

 上では「休憩時間」と表現されているが、別の所では「待機時間は通常労働時間とは認められていない」とあり、直接の医療行為をしなかった夜勤・当直時間も除外されていると考えられる。産科なら妊婦が産気づいてから出産本番までの相当時間は待機になろう。男性医師の勤務実態が病院での滞在時間、教育指導・会議などまでの従業時間、実際の診療時間として調べられている。

  表9 医師平均労働時間
    滞在時間 従業時間 診療時間
 20代  74.9   57.4   51.3
 30代  68.4   52.2   44.5
 40代  64.5   49.6   40.3
 50代  58.7   43.7   31.9
 60代  50.0   35.4   22.6
 70~  41.0   30.1   21.6

 この従業時間の「平均」が現在の医師数では48時間にも出来ていないのだ。自分で勉強中の若手を中心に繁忙感は大変なものだろう。それでいて冒頭の「ちょっとおかしいんじゃないの」で言われている程度の年収数百万円しかないのならば、もはや世間の親が子に奨める職業ではない。

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by ydando | 2007-04-15 02:04 | 食・健康
安倍内閣は産科医療崩壊とは思わない [ブログ時評75]
 「産科医減少は出生数が減って医療ニーズが低減した反映」(柳沢厚生労働相国会答弁)――「医療崩壊が産科から始まってしまった [ブログ時評59]」などで警鐘を鳴らしてきた私には、手足から力が抜ける、虚脱感を呼ぶ発言だった。柳沢厚労相の以前の失言連発には取り合う気にもなれなかったが、今回は厚生労働省の本音が白日の下にさらされた。衆院予算委答弁から数日して安倍首相も柳沢厚労相もマスメディアの質問に答える形で、お産のリスクと産科医の激務ぶりにコメントしたが、後出しフォローは額面通りに受け取れない。

 発言自体は2月7日の予算委であり、民主党の枝野議員が「医師の数がなぜ産婦人科と外科だけ減っているのか。大臣はどう理解されていますか」と問い、柳沢厚労相は「産科は先ほど来、触れたと思いますが、出生数の減少で医療ニーズがはっきり低減していることの反映と承知いたしております」と答えた。

 私の「ブログ時評」へ13日に「産科医師数が減っている理由は少子化とは関係ないでしょ」(Candysays’s Diary)からトラックバックをいただいて知った。「私は、周産期医療に赤ちゃんたちのケアをする立場として従事してきたので、産科医療の実情には多少は通じているつもりです。今回の厚生労働大臣の発言を日本の産科医師が知ったら、多くの産科医師はがっかりするでしょう。私は、産科医にもいろいろな人がいるのを承知しているつもりですが、正直に働いている産科医のやる気を削ぐような発言に対しては強烈な嫌悪感を感じます」と嘆かれている。

 既に産科医、医療関係者の間では、大問題として議論になっていた。だからこそ、当日、予算委を取材していた在京メディアが1社として反応しなかったのにも驚かされた。朝日新聞が17日朝刊でようやくブログやネット上の動きを伝えた。今回は完全にブロガーたちの問題意識が先行した。

 厚労省には例えば「各診療科別の医師受給について」のようなデータが用意されている。「産婦人科医数と出生1000人当たり産婦人科医師数推移」グラフを見れば、出生1000当たりの産婦人科医師医数は、平成6年の「8.9」が平成16年で「9.1」と何の問題もないかのようだ。経済通の柳沢厚労相には「需給バランスの問題ですよ」と進講する官僚の言い分がすんなりのみ込めたのだろう。ところが、そうではない。産婦人科医師医数は1万人以上いるのだが、日本産婦人科学会が2005年末現在で調べたたら、お産を扱っている医師数は7873人にまで減ってしまっていた。残りは産科を止め、婦人科だけを担当しているらしい。

 新人医師の研修医制度が変わって、拘束時間が長く深夜の出産も当たり前の産婦人科は敬遠されている。大学病院は本体が医師不足に陥り、系列病院に派遣していた産婦人科医を引け揚げつつある。それが各地の病院で産科休止を招いている。お産を扱うリスクの高さは、福島県大野病院での医師逮捕、刑事罰適用で全国的に注目されるようになった。体力的・精神的に限界を感じ、個人的に見切りをつけて辞めていく医師も多い。「【産科・小児科 休止一覧】 日本全国 今後の崩壊予定」(勤務医 開業つれづれ日記)に休止や縮小の情報が集まっている。以前に科学部の医療担当をしたことがある私には信じられないほどの規模の病院が並んでいる。過疎地どころか都市部で「お産難民」が発生している状況が目に見える。このブログ別項では予算委答弁の議事録が起こされてもいる。

 朝日新聞の記事についてブログの反応。研修医が書く「産科医減少「少子化の反映」 柳沢氏答弁に医師反発」(side Bの備忘録)は「ようやく報道にのりました。でも、反発しているのは産科医だけではありません。『産む機械発言の余波』で反発したわけでもありません。ただ純粋に、社会情勢を解さない厚労相に社会保障行政は任せられないと思っただけで」「インターネットという『武器』が、逆にマスコミを動かしうるんだとも感じました」と手応えを感じている。

 「がんばれ!柳沢厚生労働相」(とりあえずティッピング・ポイント)が「『失言』とは、わたしが思うには、本音がこぼれ出てしまったものでしょう。もし、まるっきり考えてもいないことをしゃべってしまうのなら、精神状態に問題ありですが、本音をしゃべってしまうのは究極の情報公開とも言えます」「日本の福祉や医療が崩壊しつつある中、彼のように為政者の本音を知らせていただける貴重な人材には、ぜひとも永く厚生労働相を勤めていただき、その発言を厚生労働省および政府の本音と受け止め、これからの日本のあり方についてみなで想いをはせるのがよいのではないかと思います」と書いている。

 私も柳沢厚労相には長期、留任を支持したい。安倍内閣のスタンスもこれで断然と明確になった。それにしても厚生労働大臣が昨年来のお産の危機についてのニュースや新聞報道を、少なくとも意味を汲んで読んでいないことが明らかになった。事実上、お産難民は医療需給バランスから生まれた当然の結果だと言っているのに、夏の参院選を戦えると思っている安倍首相にも呆れる。
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by ydando | 2007-02-18 15:19 | 食・健康
奈良の転送妊婦死亡の病院が産科停止へ
 重体の妊婦が19もの病院に転送を断られた奈良県南部の大淀町立病院が、分娩の扱いを来春から止めるそうです。アサヒコムの記事は、この妊婦を担当した1人しかいない常勤の産婦人科医(59)が退職、後任が補充できず「年間150件以上のお産を扱っていた。宿直勤務は週3回以上で、妊婦が死亡した後、『この病院で20年以上頑張ってきたが、精神的にも体力的にも限界』と周囲に漏らしていたという」と伝えています。マスコミ報道でいわれのない批判を浴びたことも含まれるのでしょう。これで奈良県南部から産科が消えます。

 気になって周辺を探していて「産婦人科医の終焉 分娩取り扱い終了のご案内」(勤務医 開業つれづれ日記)で、大阪の民間病院が産科を止める「宣言」をしていて、国の医療政策や患者のありようを痛烈に批判しているのを知りました。「厚生労働省看護課長通知によって、看護師による分娩時の内診が禁止されたこと」「信頼関係のある患者様ばかりではなくなっていること」「産科医療のシステムが破綻しつつあること」と3つの理由を挙げ、さらに詳しく論じています。

 6月に書いた「医療崩壊が産科から始まってしまった [ブログ時評59]」が急速に形として見えるようになってきていると思えます。深刻ですね。転がり始めたら加速するばかりです。止めようとするなら、とんでもなく大きな力、つまり政策の大転換が要りますが、政府にその気力があるとは思えません。

【12/23訂正補足】
 NHKのニュースを聞き違っていました。常勤の産婦人科医は辞めるのではなく、産科を止めるというのが正確でした。婦人科は続けるのですが、産科をやってもらえる医師が見つけられないので、分娩取り扱いが出来なくなるのでした。
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by ydando | 2006-12-22 14:36 | 食・健康
出産事故に無過失補償制度をつくる方針
 毎日新聞の17日夕刊に「出産時事故:「無過失補償」導入へ 民間保険活用、医師が費用負担」が出ています。政府与党が2007年度に創設する方針とのこと。ただし、税金でつくるのではなく、現在35万円の出産一時金を2~3万円上げて医師全体で200億円程度の増収を図り、これを医師が保険料として支払って民間会社の保険にする構想です。事故があれば過失が無くとも1人2000万円くらいの補償が支払われることになります。産科医の急減少にようやく対策が現れた感じですが、これだけで特効薬になるとは思えません。

 ちょうど、岩波『世界』12月号には代理出産と転送事故、産科医療はどこへ [ブログ時評67] から転載しています。そこで過重な当直勤務に正当な対価が支払われていないと紹介してあるように、産科医療で始まってしまった医療崩壊を食い止めるには、一人医長の一線病院はもちろん、大学病院でも「奴隷労働」のようにすらなっている産科医の現場を改善する抜本策が必要です。
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by ydando | 2006-11-17 16:27 | 食・健康
代理出産と転送事故、産科医療はどこへ [ブログ時評67]
 タレントの向井亜紀さん夫婦が米国の代理母に産んでもらった双子の出生届を品川区が認めるよう東京高裁が決定し、これに刺激されて諏訪マタニティークリニックの根津八紘院長が「子宮癌のために子宮をなくしてしまった娘のために実母が代理出産」など国内5例を公表した。折しも奈良県南部の大淀町立病院で出産途中に意識不明に陥った妊婦の転送を19病院が受け入れず、6時間後に大阪・吹田の国立循環器病センターで手術を受け死亡した事故が明るみに出た。通常のお産ですら、全国的な産科医不足で十分なサービスが難しくなっている日本の産科医療は、どこへ行くのか。

 高裁決定は一般論として代理出産を認めているのではない。「向井亜紀抗告審決定」(Matimulog)が決定文のリンク先を挙げて「報道でははっきりしなかったが、この決定はネバダ州裁判所の親子関係確認裁判を外国裁判所の裁判として民訴法118条に基づいて承認したものであった」と指摘している。子供が産まれたら役所に出生届をする。この際に医師の出生証明が必要になるが、ネバダ州裁判所が親子関係を認めて発行させた「ネバダ州出生証明書」で足りるとの決定。品川区は「分娩の事実が認められないから」と不受理にしていた。

 根津院長の記者会見は「その後の代理出産」で全文が読める。出産した祖母の子供として届け出、娘夫婦の養子にして育てている。「50歳代後半の母親の出産は、更年期を過ぎた体と年齢的な心配もありましたが、母親の子供のためならばという熱い思いの下、ある程度の危険を覚悟の上でのスタートでした」「卵巣の機能が無くなっている上に胎盤の娩出により一度に女性ホルモンが出なくなる状態となり、更年期障害が一気に再来した」「幸いなことに投薬にて1年程で落ち着き、その他の健康状態も今のところ特に異常は見られておりません」「親子愛の下で行われることからして、子供の引き渡し拒否や補償等も無く、一番問題の起こりにくい関係の下に成り立つ代理出産と考えます」。院長はむしろ、ここに理想型を見ている。

 代理出産で生じる人間関係や費用、多胎であった場合に代理母が堕胎を希望する問題などは、大野和基氏がインタビューした「独占告白 注目の出産の一部始終を語った!向井亜紀の代理母」に実例として見られる。代理母の謝礼は1万8千ドルに双子の場合で2千~3千ドル増し。医療費は別で、ずっと高額が必要になる。自分からインターネットで宣伝したのだが、家のローンを払い終わって、もう代理母をするつもりはない。「私の子供たちは全て自然分娩でした。だから、アキの子供は、それと分けるために帝王切開にしたのです」と話すあたりに当事者が抱える心理の綾が浮かび上がっていた。

 2003年に厚労省・生殖補助医療部会で「代理出産は罰則付きで禁止」の報告書がまとまっているが、相次ぐ事例を前にブログでは同情する声が数多くあった。政府も塩崎官房長官が法整備を検討する考えを示した。

 弁護士さんが書かれているという「『代理出産』『代理母』のこと」(『日常生活を愛する人は?』)が傾聴すべき主張をしている。「第1に、法律上違法なことをした結果としての妊娠、出生でも、生まれてきた子どもには何の罪もない。だから、子どもの不利益は何とかして避けてあげなければならない。(その観点から、非嫡出児の相続権が嫡出児の相続権の半分なのは全くケシカランと思っています)」「第2に、親のしたことが社会的に許されないことは勿論ありえるし、親が処罰されても不思議はない。(非嫡出児の相続権を嫡出児と平等にしたとしても、その不倫した片方が、相手方の配偶者に慰謝料支払い義務があるのと同じ)」「出産という行為は危険なものであり、いかなる理由があっても、これを他の女性にさせることを許すことがあっては、ならないからです」

 いま直面している産科医療の危機的状況はこのシリーズ「医療崩壊が産科から始まってしまった [ブログ時評59]」で検証した。産科医の疲労困憊はどこでも凄まじく、産科医のなり手が減るばかりでなく、産科を諦めて婦人科医としてだけ働く医師も増えている。手間の掛かる不妊治療が、この流れで盛んになっているかもしれない。

 10月下旬、県立奈良病院の産婦人科医5人が「報酬に見合わない過酷な勤務を強いられた」として過去2年間で1億円余の超過勤務手当と医療設備改善を要求する、象徴的な動きが表面化した。産科で高次の救急救命体制を持たない奈良県は、行政が手抜きをしてきた県の一つで、全国規模で危機の今となって整備は容易でない。

 大学での医師の養成はもちろん、診療体制、健康保険、報酬支払いシステムなど幅広い資源を投入して、医療は成り立っている。不足がはっきりした資源総量を増やす必要があるのは間違いないが、医療崩壊を食い止めようとするなら、通常のお産にこそ医療資源を優先投入しなければならない。国が取り組むべき政策なのに、今年になって地方国立大医学部定員をわずかに増やす程度の無策である。
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by ydando | 2006-10-23 19:37 | 食・健康
メタボリック症候群を冷静に眺めよう [ブログ時評64]
 メタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)という異様な言葉が急に市民権を得た。男性なら、へそ周りで測った腹囲が85センチあるかどうかが分かれ目になり、ウエストを気にするお父さん達が増えたが、この85センチは中高年男性の平均値なのだ。マスメディアには旬のキーワードに飛びつく習性があるので、関連ニュースが次から次に流されるようになった。目新しいところで読売新聞9月16日「メタボリック症候群、胃がんのリスクも高まる…東大」あたり。諸悪の源はここに発すかのよう……。厚生労働省は医療費削減の決め手と、健康診断結果を踏まえてする保健指導を、内臓脂肪症候群の指標をてこに「相談型」から「介入型」へ、2008年度から転換する方針を打ち出している。

 2005年4月に診断の日本基準が日本内科学会総会で発表されたときから異論は出ていた。最近では9月4日の日経新聞オピニオン面が「小太りこそ健康の証し 『メタボリック』基準緩和を」を掲載した。これを読んだ「メタボリック・シンドローム・フォローアップ」(日々是感謝)は発見と喜ぶ。「人間総合科学大学教授・藤田紘一郎氏の解説によると、日本の成人男子でウエスト85センチ以上という基準値は”厳しすぎる”とのこと。なんと米国の基準は男子で103センチ以上らしいのです。氏によると、太りすぎが重大な病気の引き金になることはたしかですが、統計的にはやや肥満気味の人の方が、やせた人よりもむしろ長寿であることがわかっている」「85センチを超えていたとしても、過度に戦々恐々とするのは体によくないですし、仮に85センチを下回っていたとしても、安心できないことだってあるということなのでしょう」

 日本の診断基準には、世界の基準に比べて特異な点がある。ウエストの基準値が男性85センチ、女性90センチと女性が男性を上回る唯一の基準だ。米国なら男性103センチ、女性89センチ、中国は男性90センチ、女性80センチである。

 これについて興味深い議論が日経メディカルブログの、飛岡宏の「開業医身辺雑記」で進行している。詳しくは読者登録をして読んでいただきたいが、「メタボリックシンドロームはねつ造か?(下)」から引用する。東海大の大櫛陽一教授からのメッセージは「内臓脂肪面積は男女を混ぜて求めているのに、そこから求められた内臓脂肪面積を使ってウエストを求めるときは、男女別に分析がされている。この段階で男性のウエストは女性の影響で少なめになり、女性のウエストは男性の影響で大きめになる。これは、データ数が少なすぎて男女別にすると内臓脂肪面積が求められなかったか、男性のウエストを少なめにするための『ねつ造』かである」などと、日本基準を決めた手法に問題があったことを具体的に指摘している。関心を待たれたら、専門的ながらコメント欄での議論も参照してほしい。

 ウエスト基準を算出した危険因子のひとつ総コレステロール上限値(ミリグラム/血液1デシリットル中)が日本は「220」と、世界各国の「240~270」に比べて大幅に低く設定されていることにも疑問が持たれている。「コレステロールやや高めが長生き?」(読売新聞2005年2月20日)が大阪府守口市での総コレステロール値と死亡率の相関をグラフにしている。その「220」が最も長生きとも言え、さらに高くても死亡率は急増しない。大櫛教授はこうしたデータを生かして、男女別、年齢別に高コレステロール基準値を変えることを提唱している。閉経後の中高年女性の過半は「220」を越えるから、無用にコレステロール低下剤を処方されている実態がある。

 メタボリック症候群予防のため「フィットネスクラブの活用を」とまで聞くとさらに疑いたくなる。「メタボリックシンドローム」(antiwarnowar)の批判も理解されよう。「今日の健康ブームにあわせながら、医療改悪の動向と密接に関係しているのではないか」「医療費抑制はいまの改悪だけで間にあうはずもないから、自己責任で健康管理をせよ、というキャンペーンである」「ほとんどの労働者にとって、運動に励めというのは時間的にも金銭的にも困難な話。まずは、そういうゆとりを人びとに持たせること。そして、粗悪な外食産業を助長させた責任をとること。人びとの不安を煽る前に、やるべきことは、たくさんあるだろう」

 福島県郡山市「”Koriyama Point”で5年以内死亡率がわかる」は市民のデータ蓄積から、個人別の5年以内の死亡率を計算出来るページだ。メタボリック・シンドロームの診断基準と比べて、自分の日常生活をどうコントロールすれば長生き出来るか――見えやすいと思う。
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by ydando | 2006-09-18 23:48 | 食・健康