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by ydando
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カテゴリ:資源・環境・災害( 14 )
第156回「失敗国家ランクと紙消費量のぴたり」
 その国の紙の消費量が文化や教育に限らず、経済や政治の状況まで示すバロメーターになると言われる。先日、ある作業中に1999年に書かれた「Language Observatory」にあるエッセイ「穏やかなミャンマーの友人の怒り」を見つけた。アジア各国の紙消費量についてユネスコの統計からデータを引いて「ユネスコが集計しているのは包装・梱包やトイレ・化粧用といった用途を除く、印刷用紙および筆記用紙に限っての数字である。消費量が最低である北朝鮮やラオスの紙消費量は国民一人当たり55~60g。A4コピー用紙一枚の重さは約4~5gであるから、北朝鮮やラオスの国民一人当たり筆記・印刷用紙消費量はA4コピー用紙換算で年間12枚程度である。同様の計算をすると、カンボジア15枚、モンゴル30枚、ミャンマー80枚、ベトナム250枚、インド400枚となる。ちなみに日本全体の平均値は113kgであるから、A4換算では2万枚を超える」と記述していた。興味深いが、原データはかなり古そうだ。

 紙消費量についてここまで用途を分けた統計は見たことがなかったので、ユネスコ統計から出来ればもっと新しいものを引き出したいと試みた。残念ながらネット上では無理だが、米国のシンクタンクが運営する「EarthTrends」で「paper consumption」を検索すると、世界各国の1人当たり紙消費量を1961年から2005年まで年ごとに一覧させてくれると知った。

 「失敗国家」という言葉を聞かれたことがあるだろう。国家として統一する軸が国民から失われ、行政・警察などの組織も崩壊して国の体(てい)をなさなくなる。ダルフール紛争で有名なスーダンが最近の酷い例だ。フセイン政権を打倒した米国が無理を通して支えているイラクもだ。「failed state」という英語ずばりのランキング「Failed States Index Scores 2007」が社会・経済・政治12指標を10点満点で採点し、合計点の上位から並べている。これと各国1人当たり紙消費量がどれくらい相関するのか見たいと考え、2005年分から数字を拾って当てはめた。その世界177カ国一覧が以下だ。ちなみに紙消費の世界平均は1人当たり54.48kgだった。
 ※お願い=このブログでは桁がずれたりして以下の数表が見にくいため、親サイトでの閲覧を強く勧めます


《失敗国家ランクと1人当たり紙消費量(kg)》
順位 国名     指標計 紙消費量
1 Sudan      113.7  1.01
2 Iraq       111.4  1.59
3 Somalia     111.1  0.03
4 Zimbabwe     110.1  11.72
5 Chad       108.8  0.17
6 Cote d'Ivoire  107.3  3.81
7 Democ Rep Congo 105.5  2.84
8 Afghanistan   102.3  0.02
9 Guinea      101.3  0.32
10 Cent African Rep 101   0.26
11 Haiti      100.9  1.10
12 Pakistan     100.1  8.07
13 North Korea    97.7  4.55
14 Burma/Myanmar   97   1.67
15 Uganda      96.4  1.92
16 Bangladesh    95.9  2.09
17 Nigeria      95.6  2.39
18 Ethiopia     95.3  0.43
19 Burundi      95.2  0.35
20 Timor-Leste    94.9  0.21
21 Nepal       93.6  1.09
22 Uzbekistan    93.5  1.76
23 Sierra Leone   93.4  0.47
24 Yemen       93.2  3.90
25 Sri Lanka     93.1  13.52
26 Rep of the Congo 93   0.08
27 Liberia      92.9  0.46
28 Lebanon      92.4  72.59
29 Malawi      92.2  1.17
30 Solomon Islands  92   --
31 Kenya       91.3  6.88
32 Niger       91.2  0.29
   (以上が警告レベル)
33 Colombia     89.7  25.29
33 Burkina Faso   89.7  0.85
35 Cameroon     89.4  3.68
36 Egypt       89.2  15.68
36 Rwanda      89.2  0.39
38 Guinea Bissau   88.8  0.10
39 Tajikistan    88.7  0.17
40 Syria       88.6  13.14
41 Equatorial Guinea 88.2  0.43
41 Kyrgyzstan    88.2  3.90
43 Turkmenistan   87.5  0.19
44 Laos       87.2  0.56
45 Mauritania    86.7  1.61
46 Togo       86.6  0.73
47 Bhutan      86.4  0.10
48 Cambodia     85.7  2.01
48 Moldova      85.7  4.49
50 Eritrea      85.5  0.70
51 Belarus      85.2  34.27
52 Papua New Guinea 85.1  2.75
53 Angola      84.9  1.16
54 Bosnia      84.5  25.30
55 Indonesia     84.4  20.67
56 Philippines    83.2  17.61
57 Iran       82.8  14.06
58 Georgia      82.3  1.34
59 Bolivia      82   5.39
60 Guatemala     81.4  24.42
61 Swaziland     81.3  --
62 Lesotho      81.2  --
62 Russia      81.2  37.53
62 Azerbaijan    81.2  20.31
62 China       81.2  44.66
66 Cape Verde    81.1  3.15
66 Maldives     81.1  3.38
66 Serbia      81.1  56.08
69 Dominican Rep   80.6  13.65
69 Zambia      80.6  2.63
71 Djibouti     80.3  16.51
72 Nicaragua     80   6.60
73 Ecuador      79.9  23.53
74 Venezuela     79.8  36.55
75 Israel      79.6 120.11
76 Tanzania     79.3  1.88
77 Sao Tome     78.6  2.29
77 Cuba       78.6  8.63
79 Vietnam      77.8  14.75
79 Comoros      77.8  0.00
81 Mozambique    76.9  0.85
82 Jordan      76.6  30.84
83 Madagascar    76.5  1.58
83 Saudi Arabia   76.5  41.80
85 Peru       76.4  13.03
86 Gambia      76   0.52
86 Morocco      76   12.75
86 Thailand     76   50.69
89 Algeria      75.9  13.32
90 Fiji       75.7  36.28
91 Mali       75.5  0.38
92 El Salvador    74.9  32.07
92 Turkey      74.9  27.30
94 Honduras     74.8  34.04
95 Macedonia     74.1  19.96
96 Suriname     73.9  6.53
97 Samoa       73.8  17.15
98 Micronesia    73.5  0.83
99 Gabon       73.3  8.46
99 Guyana      73.3  5.42
101 Paraguay     72.9  13.76
102 Mexico      72.6  64.81
103 Kazakhstan    72.3  15.37
104 Benin       72   0.85
105 Grenada      71.6  0.02
106 Ukraine      71.4  28.05
107 Seychelles    71.3  4.79
107 Namibia      71.3  0.00
109 Brunei Darussalam 71.2  13.41
110 India       70.8  4.59
111 Albania      70.5  6.30
112 Armenia      70.3  3.97
113 Cyprus      70.2  76.16
114 Belize      69.8  12.51
115 Libya       69.3  0.46
116 Trinidad Tobago  67.6  75.81
117 Senegal      66.9  2.44
117 Brazil      66.9  39.49
119 Botswana     66.4  5.67
120 Malaysia     65.9 114.78
121 Antigua Barbuda  65.7  4.12
122 Tunisia      65.6  28.03
123 Jamaica      65.1  13.13
124 Kuwait      62.1  57.55
125 Ghana       61.9  6.36
126 Romania      60.9  27.27
127 Croatia      60.5 147.00
128 Bulgaria     60.3  51.64
129 Bahamas      60.1  --
   (以上、注意レベル)
130 Barbados     59.9  71.04
131 Panama      59.4  21.57
132 Mongolia     58.4  1.70
133 South Africa   57.4  69.01
134 Bahrain      57   48.95
135 Latvia      56.7  54.52
136 Montenegro    55.6  56.08
137 Qatar       53.6  23.83
138 Uni Arab Emirates 51.6 113.14
139 Hungary      51.2  80.04
140 Costa Rica    50.5  90.12
140 Estonia      50.5  61.56
142 Slovakia     49.3 109.24
143 Lithuania     49   51.72
144 Malta       48.5  72.16
145 Poland      47.6  90.38
146 Oman       45.5  24.25
147 Greece      43.5 105.29
148 Mauritius     42.7  35.51
149 Czech Republic  42.1 138.06
150 Argentina     41.4  55.46
151 Uruguay      40.9  35.59
152 South Korea    39.7 168.86
153 Spain       39.2 169.66
154 Germany      38.4 231.65
155 Slovenia     37.5 123.90
156 Italy       37.1 205.71
157 United Kingdom  34.1 201.20
157 France      34.1 178.72
159 Chile       33.8  64.57
160 United States   33.6 297.05
161 Singapore     33  144.11
162 Portugal     32.4 105.48
   (以下は安定との評価)
163 Netherlands    28.6 227.38
164 Japan       28.5 233.55
165 Luxembourg    28.1 334.31
166 Austria      26  276.96
167 Belgium      25.5 249.54
168 Canada      25.1 241.94
169 Australia     23.2 204.42
170 Denmark      22.2 243.67
171 Iceland      21.1 129.84
172 New Zealand    20.5 189.65
173 Switzerland    20.2 211.53
174 Ireland      19.5  90.55
175 Sweden      19.3 219.98
176 Finland      18.5 324.97
177 Norway      17.1 170.46


 世界平均を上回る72kgのレバノンが28位にいる点は例外的であり、中東地域の複雑さゆえで、お気の毒としか言いようがない。しかし、総じて「ぴたり」の印象だ。インデックスは指標計90点以上を「警告レベル」、60点以上を「注意レベル」と設定している。紙消費量の分かれ目からみると「51位、85点のベラルーシ34kg」から下の国は充実しており、80点台後半の国の並びを見ても85点を警告レベルとしても良いと感じた。

 失敗国家群について10年前、1995年の紙消費量と比べてみた。

     紙消費量(kg) 2005 1995
1 Sudan       1.01 0.29
2 Iraq         1.59 0.83
3 Somalia      0.03 0.03
4 Zimbabwe    11.72 8.28
5 Chad         0.17 0.13
6 Cote d'Ivoire   3.81 3.81
7 Demo Rep Congo 2.84 2.27
8 Afghanistan    0.02 0.08
9 Guinea        0.32 0.12
10 Cent African Rep 0.26 0.09

 スーダンやイラクでさえ紙消費は伸びている中で、消費を減らし、かつ0.02kgと極端に少ないアフガニスタンが目立つ。治安どころでないソマリアも極小の横ばいだ。アフガニスタンの数字はタリバン掃討に部隊を送り込んでいる西側各国の説明とは裏腹に、民生の安定は進むどころか退歩していると疑わせる。0.02kgでは公的な文書すら確保していないかもしれない。

 注目の成長センター「BRICs」はどのあたりにいるだろうか。

          指標計 紙消費量
117 Brazil      66.9  39.49
62 Russia      81.2  37.53
110 India       70.8  4.59
62 China       81.2  44.66

 いずれも「注意レベル」の国で、インドを除いて紙消費社会が既に立ち上がっている。インドは最大人口の民主主義国なのだが、貧富の差は極めて大きく貧しい階層が巨大だ。この紙消費量では多くの子どもたちは勉強にノートなど使えないはず。それでも間もなく世界平均に迫ろうとしている中国をはじめとしたBRICsが大量消費に入る時代を考えて置かねばならない。このテーマでは少し前に「近未来中国が呼ぶ紙資源危機を考える [ブログ時評27]」を書いている。
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by ydando | 2008-02-11 23:28 | 資源・環境・災害
中国の酸性雨拡大にみる越境汚染の怖さ [ブログ時評82]
 北京五輪まで1年。ホッケーの五輪テスト大会開幕戦で中国に敗れたアルゼンチン女子チーム選手たちは顔を真っ赤にしながら肩で息をしていたと、朝日新聞が伝えた。暑さに加えて空気が悪く、深く息をすると息苦しくなってしまうのだという。北京の大気汚染物質は2004年頃までは、やや減少傾向とも伝えられたが、止まらない高率成長を受けて制御どころではなく、昨年、今年と深刻なニュースが目立つ。

 まず日本から中国に渡った人の現地報告。「おばさん、ノドに激痛。」(おばさん、中国に渡る☆)は酷暑なのに風邪症状が続いて止まず、思い当たった。「『目…異物感、チカチカする、涙が止まらない、痛い…など/呼吸器系…喉の痛み、咳、呼吸が苦しい…など/皮膚…赤みを帯びる体質等により重症になる場合、嘔吐、意識障害、発熱などの症状が現れることも…』の症状に、ノド以外のこともほぼ同じ」「こりゃ~~光化学スモッグにノドがやられたんだ!!!」「こちらに一年以上いる人に聞いてみたら、『そうよ、ここは年中、光化学スモッグ出ているよ、だから年中薬飲んでるわ』と、さらりと答えてくれた」と信じがたい汚染の渦中にいることをリポートしている。

 2006年4月の「大気汚染が悪化、火力発電が原因『北京も酸性雨』」(中国情報局)は中国環境規制院が記者会見で「2005年における中国全土の二酸化硫黄の排出量が2549万トンとなり、目標を749万トンもオーバーしていることを明らかにした。また2000年と比べて25%増となり、北京市にも酸性雨が降るようになった」と公表した。エネルギー消費は5年前の55%増だという。

 もともと中国南部の酸性雨はひどかったが、最新のデータは絶望的だ。「中国広東省:酸性雨汚染深刻、降雨量9割を占める」(大紀元時報)は今年7月に広州熱帯海洋気象研究所が「広州市は今年最初の3ヶ月における酸性雨の降雨頻度は100%で、平均酸性度はpH3.8だとし、平均値がpH4のお酢よりも酸性が強いと指摘した。今年4月、5月における酸性雨の降雨頻度もそれぞれ90%と80%で、総合して平均にすると、10回の降雨で9回が酸性雨である」「酸性霧雨の中の有害物質は酸性雨より数百倍も高いことは研究で明らかになった」「霧雨は体内に吸入しやすく、呼吸道粘膜を害し、呼吸道疾病を引き起こす」と伝えている。

 酸性雨とはpH5.6以下の酸性度を示す雨のことで、湖沼で魚が住めなくなるのはpH5以下だとされている。日本の食酢はpH3前後であり、広州の観測値がいかに途方もない数字か理解いただけよう。河川に生き物がいなくなったとのニュースはあちこちで見られる。

 北京など中国北部はこれまで土壌がアルカリイオン成分を持っていて酸性雨発生を抑制していた。しかし、その「聖域」は2006年に失われた。「中国の7省・直轄市に酸性雨が拡大、16地点調査では平均pHが4.5」(IBTimes)は「中国の南方地域で頻繁に見られる酸性雨は2006年に長江を越え、北に向かって北京、天津、河北、山東、河南、陜西、山西など北部の7つの省と直轄市にまで拡大している。中国気象局は『2006年度の全国十大気象事件』の事件の1つとして取り上げたことから、大きな話題となった」「酸性雨が降る都市は2000年の157カ所から2005年の357カ所に増加。2000年の時点で酸性雨は北部の一部でのみで発生したが、2006年は7つの省と直轄市で深刻な酸性雨が頻繁に見られるようになった」とする。

 「中国、あるいはオリンピックはできるのか」(あいあ~る村塾)は7月中旬に「本日の英国ガーディアンの記事を読むと、これは心配性の人でなくとも、ぞっとするようなことが書かれている」とOECD調査を引きながら危惧している。「1億9千万の人が、水が原因で病気に苦しんでいる」「主要湖水の75%は高度に汚染されている」「『グリーンオリンピック』の装いに凝らしている北京も、途方も無い成長の恐るべき結果から逃れてはいない」「一昨日も昨日も今日も北京の空は硫黄スモッグで暗く、あまりにもそれが濃いものだから摩天楼もスッポリ飲み込まれている」「空気の質があまりにも悪いものだから、時には、学童は休み時間でも屋内に留まるよう警告が出されている」「こんなところで42キロもマラソンできるのかね。日本の陸連と水連はよくよく考えて、参加するか否か決めた方がよいのではなかろうか」

 この大気汚染が東側にある日本に及ぶ有り様を、国立環境研究所のコラム「大気汚染物質の流れが見える酸性雨長距離輸送モデル」が「つの」型の吹き出しと、「巨大パフ」型の輸送として観測日を挙げながら図示している。改めて怖くなる一衣帯水ぶりだ。

 「広域化する『光化学スモッグ』」((気象・歳時・防災 コラム!)が一時は治まっていたのに国内各地で再発、増加する光化学スモッグの原因をまとめる。「ヒートアイランド現象によって、汚染物質が濃集しやすい環境になっている▽オゾンホールによって紫外線量が増加し、光化学反応に要する時間が短縮しつつある▽風上の中国から一次汚染物質がもたらされている」「特に中国の影響は甚大で、汚染対策が改善されない限り一次汚染物質の排出は今後も加速すると考えられます」

 今年5月に関東から九州にかけて大発生した光化学スモッグは、中国大陸で発生したオゾンが主な原因だったと考えられている。既に国内で観測される硫黄酸化物の半分は中国起源とみられる。この隣人の環境汚染制御こそ、日中両国間の主要課題とする日が迫っている。
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by ydando | 2007-08-14 16:21 | 資源・環境・災害
柏崎刈羽原発の情報不足は深刻な不信に
 新潟県中越沖地震から1週間になろうとするのに、大きなダメージを受けた柏崎刈羽原発の内部がどのようになっているのか見えてこない。やっと22日の朝刊に1.6メートルもの段差が出来たり、地面が波打ったりしている所内の写真が出た程度であり、これは地震当日に公表されてしかるべきものだ。今回の事態に関心を持つ人の多数は、原発内部がシステムとしてどれくらい健全なのかが知りたいはずだ。この関係では現在のところデータは皆無だ。いや、放射能を含む水漏れが止まらない点など危惧させる兆しはある。

 東京電力が19日になって公表した揺れのデータから、観測された最大加速度と設計値との比を以下に計算した。

     南北方向 東西方向 上下方向
 1号機 114%   249%   174%
 2号機 182%   363%   120%
 3号機 160%   199%   132%
 4号機 161%   254%   143%
 5号機 111%   174%    87%
 6号機 103%   122%   208%
 7号機 102%   135%   151%

 加速度最大値は1号機東西方向の680ガルながら、設計値との比では2号機東西方向の363%が最も大きい。2~3倍の安全率を見込んで設計したとしても心配になる数字だ。原発の機器とシステムは、政府が言っているように堅い岩盤上にあって、本当に健全だったのか。

 折しも政府は国際原子力機関(IAEA)からの調査団派遣を「余裕がない」と断る意向を示し、新潟県の泉田知事は逆に早期受け入れを要望した。柏崎市による原発の使用停止命令に次ぐ、東電と政府に対する地元からの不信感表明とみるべきだろう。東電の調査能力は既に疑われているのだ。

【関連】原発震災の可能性を裁判所が認めた [ブログ時評52]
    「原発震災認定」の判決対策に新耐震指針固まる?!

【追補】7/23 政府は一転してIAEA調査団の受け入れを決めた。ただし、時期や方法は今後、協議して決めるという。
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by ydando | 2007-07-22 20:01 | 資源・環境・災害
世界規模での漁業崩壊が見えてきた [ブログ時評69]
 スシ、刺し身が消える……11月17日からクロアチアで、高級魚クロマグロなどの漁獲規制強化を議論する「大西洋まぐろ類保存国際委員会」が開かれた。刺し身・すしネタとして馴染み深いマグロが、庶民の口、食卓から遠のくとマスメディアからも注目を集めている。しかし、遥かに深刻な研究発表が米科学誌「サイエンス」に11月初めに掲載されたのだ。ネイチャー・ニュースはこの研究を"Sayonara, sushi..."の刺激的なタイトルで伝えた。「スシが食べられなくなる 2048年までに世界の海産食品資源が消滅-新研究」(農業情報研究所)がカナダ・米国・英国・スウェーデン・パナマの国際研究チームによる仕事を紹介している。

 「研究者は、生物多様性の喪失が海洋生態系にどれほど影響を与えるかを検証するために、世界各地の経験と50年以上の長期にわたる地域と世界の漁獲データを分析した。計算結果は、過去200年、沿岸の生物多様性は、汚染による水質悪化、有害藻・沿岸の洪水・殺魚の急増に伴い、急速に低下していることを示した。海産食品資源についても、1950年に利用できたものの29%が2003年時点で失われており、残ったものも2048年までにはすべて消えてしまうだろうという」。一部にはもっと早い商業漁業崩壊もありそう。

 「魚が食べられなくなる日…」(侏儒の言葉)はこう指摘する。「確かに、食卓にのぼる魚は次々と主役が変わりつつある。最盛期の漁獲量と比べると、1割にも満たない魚種が増えているのは、魚を食べつけている人ならとうの昔に気付いている。今や、モロッコの蛸どころではなく、ナミビアの赤魚、南アフリカの金目、ペルーの穴子、と世界中から魚を集めないと需要に対応できないのが実情である」「さらに入手難になると、似たような魚をどこからか見つけてくる。そんな努力があるから、我々は魚を食べ続けることができるが、こんなことが何時までも続けられる筈がないのは明らか」

 今年1月には英科学誌「ネイチャー」に、1970年代から始まった深海トロール漁が、一人前に成長するまでに数十年もかかる深海魚を絶滅の危機に追い込んでいるとの研究も出された。資源の豊富な海山あたりの深さに網を入れて根こそぎにしてしまう漁法だから、素人目にも納得できる結果だ。

 あちこちリンクをたどって行くうちに、1960年代と90年代で比べて世界の海で種の豊かさが失われたことを実感させるマップ「Declines in the number of species found on a standard longline in the 1960's and 1990s.」に行き当たった。豊かな暖色から貧しい寒色に変わる海。日本付近の太平洋はまだ良い方であり、インド洋や大西洋には悲惨な印象を持つ。

 「海の食物連鎖の王者は?」(ラジカル コミュニケーション)は食物連鎖の頂点は誰かとの考え方から、国際的な海洋資源保護の進め方が恣意的ではないか、と疑問を呈している。「水産資源は枯渇の道をまっしぐらである……実は海のKINGは鮫ではなく鯨グループの鯨や鯱なのだ……何て事でしょう!鯨グループは動物愛護団体等から手厚い保護を受けているではありませんか……彼等の旺盛な食欲を皆は知っているかい?」「将来海に生きる生物は鯨グループに限定される……鯨 鯱 イルカだ……そして彼等も居なくなる……何故かって?人間が食べるからだ」

 マグロの資源や消費については「責任あるまぐろ漁業推進機構」のページにデータがある。今回、地中海を含む大西洋ブロックで問題になっているのは、漁獲量が規制されているのに各国が守らないためばかりではない。マグロ稚魚を捕らえて巨大生け簀で太らせる「蓄養」が広まったために、そこから出荷されるマグロがどの国の分かも判然としなくなっている。尻抜け規制の結果として、大西洋・地中海のクロマグロは、種を維持する繁殖に必要とする頭数すら危うくなってしまった。

 マグロ乱獲の一番の原因は世界のマグロ漁船が多すぎることにあると思う。過剰な現状はこうして形成されたと、事情通らしい「マグロの漁獲枠が半分に…どうしてかな…」(どうせ一度の人生なのよ…)は説いている。

 「マグロの延縄漁は日本人が考えた手法で、遠洋マグロ船は元々日本にしかなかったのよね。荒波に耐える頑丈な船体とマイナス60度の冷凍庫、そして延縄」「バブル景気の頃、マグロ船の新造ブームがあって、どんどん高性能の船が建造されたのよ。で、それまで使っていた船は解体されずに台湾などに売られていったのね」「台湾に売られていったマグロ船に延縄などを売ったのは日本の商社。中古だけど頑丈な船と道具を手に入れた台湾の船主たちは自分たちでマグロを獲ろうとするけど失敗ばかり……で、どうしたかと言うと、日本から日本人漁労長を高い賃金で雇いマグロを獲ったのさ。なかなか賢いけど、日本のマグロ船業界にとっては困った問題なのよね。安いマグロがどんどん輸入されるために、日本船は漁に出る度に億の赤字が出ることもあったそうな」「さらに台湾船の他にベリーズやホンジュラスなどの船籍のマグロ船も登場。全世界にはたくさんのマグロ船が操業することになる」

 今年は、近海のマイワシが激減して、高級魚並の値段に跳ね上がった。一部のメディアは漁業近代化と称して新鋭船を導入し、世界の漁業資源獲得競争に負けないようにしようと主張している。しかし、マグロ船業界の歴史が示す通り、それは地球規模の資源枯渇にしかつながらない。巨大人口で巨大な胃袋を持つ中国、インドの経済発展が立ち上がった今、国際的、包括的な漁獲規制の枠組みに向かうしか漁業を生き残らせる道はない。もう一つ、国内的には養殖漁業の問題があり、9年前に私の連載第28回「養殖漁業に吹く世界化の風」を書いた。現状をネット上でサーベイしてみると、陸上養殖など歩みは遅々としている。
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by ydando | 2006-11-19 20:27 | 資源・環境・災害
「原発震災認定」の判決対策に新耐震指針固まる?!
原発震災の可能性を裁判所が認めた [ブログ時評52]関連

 4月17日の日経新聞は、原子力安全委員会が原発の新しい耐震設計審査指針(耐震指針)を固めたと伝えた。最も注目の骨子は、活断層が近くに見つかっていない原発は直下型地震の最大マグニチュードを一律「6.5」としてきた想定を廃止、建物がどれくらい揺れるかは個々に見直して厳格化する点。耐震補強工事をする原発も出ると予想される。参加している専門家のコメントとして「判決で指摘の問題点ほぼ解決」とあり、金沢地裁判決シフトが歴然としている。

 しかし、想定する揺れの大きさが450ガル程度の可能性が高いとされ、現行指針と諸条件を変えないならマグニチュード「6.8-6.9」相当というのでは、あまりに露骨な法廷対策ではないか。金沢地裁判決は、原発近くにある邑知潟断層帯が一体で動けばマグニチュード7.6程度の地震が起きる可能性ありと認定して出されている。その根拠は国の地震調査委員会による評価である。新指針の考え方は、地震調査委は防災の観点から地震を大きめに見ているから見直せばそれほどでもないと、法廷での論争をしのげれば良いとのスタンスだ。耐震指針見直しを始めて5年、専門家の意見がなかなかまとまらなかったのに、運転差し止め判決ひとつ出たら1ヶ月も経たずに、かつかつクリアーしそうなところで間に合わせるとは、集まっている専門家に科学技術者の良心があるのか疑わしい。
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by ydando | 2006-04-18 00:05 | 資源・環境・災害
原発震災の可能性を裁判所が認めた [ブログ時評52]
 原子力発電に反対する人たちの間でも「原発震災」は最近になって使われるようになった言葉である。北陸電力の志賀原発2号機(出力135万キロワット余り)に対して、金沢地裁が運転差し止めを命じた判決は、原発震災の可能性を認めたものだ。読売新聞3月25日付け社説は「科学技術を否定するものだ」と見出しでびっくりさせたが、最後まで読むと耐震設計審査指針が時代遅れになっていることは説明し「政府の原子力安全委員会は5年近く前から見直しを検討中だ。だが、専門家の間で議論がまとまらない。今回の判決はその隙(すき)を突かれた、とも言える」とし、何の事はない、科学技術の否定どころか、根拠ありではないか。

 「長年おぼろげながら抱いてきた不安と疑問。これは司法が的確な判断と根拠を持って答えた歴史的判決だ!」「ろくな見識もない僕でもここ10年余りに起きた想定外の巨大地震を思った時、国の安全神話への疑問はつのる一方」と「驚き!原発停止命令!」(ネイティブの足跡)は賛同している。もちろん「行政の裁量範囲にまで立ち入って」と非難する人もいる。しかし、この問題での国側の瑕疵(かし)は大きい。

 独自補強に入った中部電力を除く電力各社も内心では、新しい耐震設計審査指針が決まれば相応の補強工事をする覚悟はしているはずだ。新しい指針が決まらないから、どれだけの上積み補強をすべきか判断できないでいる。だから最新型で、運転を始めたばかりの志賀原発2号機ですら、基準は現行のままだ。「しんぶん赤旗」の「志賀・運転差し止め判決 全原発への警告」に、「S1(設計用最強地震)」と「S2(設計用限界地震)」を超える地震が女川原発で観測された例と、各原発の耐震設計で用いられている地震の強さ一覧表がある。30年以内に起きると想定されている宮城県沖地震よりも小さな昨年8月の地震で、女川原発のS1=250ガルとS2=375ガルが突破された。

 巨大地震、東海地震への切迫感から中部電力は、S1=300ガル、S2=450ガルでしかない浜岡原発1・2号機を止めて、1000ガルに耐えるよう補強することになっている。1月の中部電力プレスリリース「浜岡原子力発電所1・2号機の停止期間の延長について」で、「1・2号機は3~5号機に比べ工事規模が大きいこと、および1・2号機共用排気筒建替えに伴う屋外施設の改造設計が必要なことから、工事着手時期が遅れる見通しです」とこれまで3年で終わるとしていた工事が5年間にも及ぶと発表している。これだけ長期に原発2基の運転を止めても必要な補強との判断がある。

 今回の判決を書いた裁判長は過去にも変わった判決を出している。そうであっても動いている商業用原子炉に、初の運転差し止め判決を書くのは大変なことだ。上に述べた現実の動きに加えて、国の地震調査委員会が原発に近い邑知潟(おうちがた)断層帯について「一体になって活動すればマグニチュード7.6程度の地震が起きる可能性がある」と報告したことなどが背中を押したのだろう。もう一つ住民が勝った、高速増殖炉もんじゅ控訴審判決でも裁判官は、3冷却ループの独立性が厚い壁で保たれる建前なのに、0.5気圧の水素ガス爆発で吹き飛ぶ鉄のドアで仕切られている現場を見て、安全審査に問題があるとの心証を形成した可能性が高い。本質的に臆病な裁判官を踏み切らせるには、いくら論理を重ねるより、現実の重みが必要である。

 東海地震で迫る原発震災の危険を訴えているグループの一人で、かなり勉強をしているらしい「SENZA FINE」が「志賀2号は、わりと耐震設計なのだ!」で面白い見方をしている。「志賀原発2号というのはABWR=改良沸騰水型原子炉です。何が『改良』されたかというと、一番大きいのがまさに『耐震性』なのだと思います」「そのABWRが『地震の想定が過小』ということで停止判決を喰らうというのは皮肉なものです」「浜岡原発は5号機がABWRです。稼働中の従来型BWRである3号と4号はぜったいに止めないといけません」「この2つは地震の無いアメリカの設計をそのまま踏襲しているのです」

 絶対に起きてもらっては困る原発震災。この判決が大きな警鐘になっていることは間違いない。

【参考資料】
原発:電力会社と国の常識外れ [ブログ時評16]
第130回「もんじゅ判決は安全審査を弾劾した」
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by ydando | 2006-03-26 21:54 | 資源・環境・災害
世界の原子力開発に大きな流動要因 [ブログ時評47]
 原子力発電の行方を左右しそうな、これまでは考えられなかったニュースが立て続けに流れている。分かりやすい方から並べると、商業用原発として世界で最も普及している加圧水型原子炉(PWR)の主力メーカー、米ウェスチングハウス社(WH)を対立する沸騰水型炉(BWR)メーカーの東芝が買収に成功した。PWR陣営の三菱重工を振り切るために、当初予想された倍以上、6400億円の高価な買い物に踏み切った。「日本は原子力輸出大国を目指すのか」が「日本は非核三原則で核兵器はつくらないと世界に約束しているが、国防政策とも関連する原子力利用を海外企業と海外で展開するうちに、核開発に巻き込まれる可能性はないのか」と心配する。

 次に、米国がこれまで否定していた核燃料再処理路線に転じた。しかも外国に核燃料を提供、その使用済み燃料を受け入れて、生成しているプルトニウムを原爆に転用できないよう再処理して戻すという。さらにロシアは、米国が核燃料を受け入れない反米国家の使用済み核燃料も再処理する構想を唱えた。「核拡散を防止する核燃料再処理のアメリカ・ロシアの取り組み」をご覧いただきたい。核燃料再処理への扉が一気に広がるのだが、日本は自前の再処理工場を持ち、米国の枠組みには入らない。日本だけ特別扱いされ、大量のプルトニウムを使っていることへの不満が表面化するリスクも生まれる。

 三番目は予想の範囲内とは言え、高速増殖炉に関する早すぎる決定である。原型炉「もんじゅ」(電気出力28万キロワット)の事故と改造で停滞している高速増殖炉の開発をめぐり、経済産業省資源エネルギー庁は2030年ごろに設置予定の実証炉を、国と電力会社など民間とで建設費を分担する方針を固めた。70万キロワット級で軽水炉原発の2倍、3000億円程度になると想定、官民で折半する構想だ。事故から10年の放置を経て、もんじゅが2005年9月にナトリウム漏れ対策の改造に着手したばかりである。工事が終わるのにまだ1年以上必要で、運転再開しても無事に動くのか、あてさえない。

 「しばらくは要らない、高速増殖炉」が「数年前の答申で、プルサーマル計画はウランの使い捨てよりも高額になるという結果がすでに出ている。にもかかわらず、失敗の連続だった“もんじゅ”の次を作ろうと考えるのは、裏があるようにしか思えないのだが」と指摘している。これが一般市民感覚の疑念だと思う。

 背景にあるのが中国で着々と進む高速増殖炉開発だろう。2005年春に開かれた国際ワークショップ「燃料サイクル研究開発および高速増殖炉開発」で中国側は実験炉を2008年に臨界へ、原型炉は2020年の完成を目指すと発表している。「中国の高速炉サイクル開発の現状と展望」によると、実験炉CFERは2万キロワット。臨界の2008年に北京五輪があり、一種の国威発揚として五輪への電力供給が念頭にあるとみられる。60万キロワットの原型炉「CPFRは、15年計画(2006年から20年)の国の重点事業とされ、2020年の完成を目指している」。中国の原発は昨年春段階で11基1000万キロワットが運転ないしは試運転中。2020年には総出力4000万キロワットの原発を持つと想定している。100万キロワット級なら40基であり、計算上は高速増殖炉に使用済み核燃料から十分にプルトニウムを供給できる。

 ひとつ危惧がある。中国の高速炉は地震の心配が無いロシアの設計を引き継いだタンク型(プール型)であり、耐震性に難点を持つ。最近の環境問題噴出が示すように、地震国である中国なのにその配慮をする余裕を持つまい。一次冷却系は軽水炉の水と違い、液体金属ナトリウムで満たされ、危険性は段違いだ。耐震性ゆえ日本は「もんじゅ」に、「パイプのお化け」とも呼ばれた長い配管を引き回すループ型を選んだが、造ってみると6000億円近くに上り、非常に高コストになった。日本もタンク型とループ型の折衷的な形態にしよう、あるいは実証炉はいきなりタンク型でとの声さえあった。「早すぎる決定」に、日本も愚かな選択に進まないか不安を持つ。
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by ydando | 2006-02-09 11:23 | 資源・環境・災害
パキスタン大地震そのほか
 死者4万人とも言われ始めているパキスタン大地震は、避難民も400万人とこちらも桁外れです。家を失った人だけで250万人と恐ろしい数字です。冬を前にして住居を仮設できるか心配です。以前、「被害大き過ぎ実感できぬ首都直下地震 [ブログ時評12]」で「阪神大震災で最大31万人、新潟中部地震で10万人のオーダーだった。いずれも被災後数日は、この人たちにわずかな食事しか届けられず、どれほど苦しんだことか。発生翌日に出る避難者700万人の内、東京の200万人をトップに計460万人が避難所生活を送る想定になっている。都が備蓄している食料はアルファ米119万食、カップ麺100万食とかだ」と書いたように、この規模になれば日本国内ですら食を賄うだけで四苦八苦なのです。道路が寸断されヘリに頼らざるを得ない輸送状況には、とても悲観的です。

 この地震はインド・オーストラリアプレートが、ユーラシアプレートに衝突して起きています。急峻なヒマラヤ山脈を形成している力でもあります。日本人には無縁な感じがしますが、我々にとって馴染み深い「絹の道」シルクロードがこの活動で形成されていると聞けば、ちょっと変わりますか。山脈の北にある砂漠地帯にオアシスが東西に点々と都合良く並んでいるのは、大きな歪みで地割れして水が湧くからです。今度の地震のような力が無ければシルクロードは無かった訳です。悠久の時間の間で形成された自然です。それにしても何十年かに一度の地震で以前の歴史は学ばれず、建築の耐震性はほとんど考えられていなかったようです。

 最近、読んだブログからひとつ。「タイゾー君に厳しく、自民党に甘くてどうする」(新聞読んだ?)です。総選挙が終わってからの在京メディアが巨大・自民党に対して、腰が引けていることを強く指摘しています。私からも付け加えると、例の料亭発言・杉村議員についても、小泉首相が「若いんだから、ある程度、規格外れの意見を発言をするのもいいんですよ」とコメントすれば、何の評論の加えずに、そのまま垂れ流す始末です。
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by ydando | 2005-10-13 19:48 | 資源・環境・災害
衣食足りつつある中国に紙不足解消は緊要
 「近未来中国が呼ぶ紙資源危機を考える [ブログ時評27]」に対して「紙よりも食料供給の方が先に限界に達するでしょう」といった意見が出ています。中国の高度成長維持による資源の限界について、色々と論じられています。単純に米国の生活を基準にしたワールド・ウォッチ研究所系の論調は行過ぎた悲観論のように思えます。国連食糧農業機関(FAO)は比較的楽観的で、中国の食の水準はかなり満たされつつあると考えているようです。

 FAOのデータを多用した「拡大する食肉消費--所得水準の向上と食生活の改善--」を見てください。食肉の一人当たり摂取量は中国が既に日本や韓国を上回っているのです。魚肉などを含めた蛋白質摂取量はまだ下ですが、もう10%ほども増えれば日本に追いつくところまで来ています。脂肪摂取量はもう追いつきました。

 我々、東洋人の食生活が完全にアメリカナイズされるとは考えにくいところです。最後は、あるいは最善はアメリカのようになる――そんなはずはありませんね。むしろ、資源の限界が見えたときは米国人の方が生活を変えざるを得ないでしょう。日本も含めた、大量に無駄を出す生活もです。

 しかし、紙不足の問題は違います。一人年間100キロ以下、日本の4割程度以下の状態は経済、文化、教育など、どの面でも非常に不自由です。トイレットペーパーなどは200キロに近付かないと必需とみなされず、一般にはまず使えません。2003年では一人35.8キロの中国が100キロになるのは、先日の計算から大雑把に見て十数年先、その時は現在の日本が投入している新品パルプ分の1.5倍くらいを新規に調達しなければなりません。資源的にまだ可能かもしれませんが、国際的にパルプ価格の高騰を呼ぶのは必至です。その時までに、現在のように紙に依存している我々の生活、あるいは大量の紙を使う新聞や出版の状況に変化が迫られます。次に考えるべきは、この問題です。
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by ydando | 2005-07-06 00:06 | 資源・環境・災害
近未来中国が呼ぶ紙資源危機を考える [ブログ時評27]
 原油価格暴騰から私が真っ先に連想したのが紙資源危機だった。どちらも中国の高度成長維持がもたらす歪みだから。先日の予告記事で、ブロガーの皆さんから色々と示唆をいただきつつ、久しぶりに中国に焦点を当てて紙問題を調べてみた。

 このまま行けば穀物消費もエネルギーも、どんな資源も枯渇してしまうと予測する、ワールド・ウォッチ研究所創設者レスター・ブラウン氏による日刊ベリタ「圧倒する中国の需要 新しい経済モデルが必要」に行き当たって、一度納得して、直ぐに前提の誤りに気付いた。「中国の現在の一人当たりの国民所得は年5300ドルと推定」が過大なために、枯渇時期が大幅に前倒しになっている。米国並みの38000ドルに到達するのに年9.5%成長で2031年、8%成長で2040年と想定しているが、明らかに間違っている。

 一人当たりの所得年5000ドルは、中国で突出した上海市民クラスだ。国民全体では年1000ドルにすぎない。1000ドルが38000ドルになるには時間がかかりすぎるし、8%成長を維持しつづけるとかの前提も怪しくなる。ブラウン氏の発想だけ借りて、現実的なモデルを探した。2003年の一人当たり紙消費量は中国の35.8キロに対して韓国が174.2キロ。一人当たりの国民所得は10倍の差があるから、8%成長なら30年後に現在の韓国水準に追いつく。

 この時、どんな状況になるだろうか。所得上昇に伴って韓国並みの紙消費になると仮定する。2003年の世界の紙生産量3億3881万トンの53%に当たる1億8000万トンが新たに必要になる。インドなど他の途上国の消費増加は全く考えていないものの、この段階で世界の森林資源が紙資源供給に応じられなくなっていると判断できるだろうか。

 「中国のパルプ原料の割合」によれば、「パルプ原料は木材パルプ(21%)のほか、リサイクル紙(47%)と穀物パルプ他(32%)」とある。古紙をリサイクルするのは日本と同じで、森林資源に乏しい韓国の場合は7割を超える。中国の場合は古紙回収がまだ十分機能していないそうで、日本からの輸入が近年、急に増えている。また、「穀物パルプ他」とは稲わらや麦わらその他の繊維資源。日本の稲わら資源は年間900万トンで、人口を考えると中国には1億トン以上はあるだろう。家畜飼料にもなる資源ではあるが、3割の混入分くらいは維持できそうだ。

 となると、木材パルプの2割分が問題になる。1億8000万トンの2割は3600万トンだ。日本の年間紙消費は3000万トン。このうちリサイクルが6割として、残り1200万トンに新たな木材パルプを投入している。その3倍を30年後の中国が必要とし、調達するのはかなり困難と考えられる。つまり、危機の顕在化、「国際的奪い合い」は30年を待たないということだ。不足が深刻になれば、日本でも捨てている稲わら利用などが考えられる可能性がある。

 有料トイレに入って1元で45センチのトイレットペーパーを渡された「26 上海のトイレで考えた」やホテル用の超ミニサイズ巻きを紹介している「中国旅行記(7)トイレット・ペーパー」のように、中国ではトイレットペーパーは丁重に扱われている。大衆の圧倒的多数はトイレットペーパーとは縁が薄い。紙消費5倍の韓国ではどうだろうか。昔の日本のように家庭でテッシュペーパー代わりにも使われ、かなり一般化しているようだが、「東国大学/留学生マンスリーレポート」にはこうある。「トイレットペーパーは、各個室についている所は少なく、入り口に大きいロールが一つかかっており、それを、必要な分だけ取って、個室に持って入ります。もし足りなかった時は、大声で誰かに頼み、トイレットペーパーを取ってもらうか……」中国大衆がこのレベルに到達することは無いのかもしれない。

 中国では紙不足から新聞や雑誌がしばしば発刊停止を命じられる。毎年、学校の教科書を印刷する時期になると大騒ぎになるという。文書の電子化にしか、当面の抜け道は見えない「第38回 熱気溢れる装置   中国の突出した電子出版事情」(2002)は「中国の大学では電子出版学科の新設が続き,増大する市場に向けてDTPオペレータやマルチメディアクリエータの養成が進んでいる」と報告している。でも、私としてはソフトウエア・コピー天国の中国で電子化本がコピー禍から逃れられるのか、かなり心配である。田舎の情報弱者にはやはり紙だろうし。


 【参考資料
 ☆インターネットで読み解く!第4回「紙資源・千倍の落差」
 ☆紙の神・蔡倫も悲嘆する中国「紙」事情
 ☆日本紙パルプ商事・紙の知識と紙に関するデータ
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by ydando | 2005-07-04 00:09 | 資源・環境・災害