◆新ブログに移行します◆Blog vs. Media 時評blog.dandoweb.comへどうぞ ――――――――――― ネットジャーナリズム活性化のために3/9=圧縮音楽の改善2/11=失敗国家と紙消費2/9=「ウェブ通」リンク集
by ydando
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カテゴリ:ジャーナリズム( 41 )
『世界』掲載分と北海道新聞・道警の「手打ち」
 岩波『世界』6月号への掲載は「原発震災の可能性を裁判所が認めた [ブログ時評52]」「『原発震災認定』の判決対策に新耐震指針固まる?!」を合わせて1本にしました。先週も島根原発の近くに、明らかに従来想定を超えたマグニチュード7.0の地震を起こせる活断層(18キロ)が確認されました。

 届いた『世界』6月号を見ていると、元道警幹部で裏金作りを証言した原田宏二氏が「これはジャーナリズムの自殺だ/北海道新聞と北海道警察の『手打ち』をめぐって」を書かれています。今年初めに道新が謝罪記事を掲載した際にブログでは「道新が『自殺』した経緯~労働組合の報告から」などが書かれて、粗筋は判ったつもりでいましたが、社内であったことを改めて詳細に跡付けされています。特に道警記者クラブキャップと道警広報課長による「広告横領事件関連取材メモ」は衝撃的です。

 新聞協会の「新聞研究4月号」に高知新聞の依光隆明社会部長が「誰のために書くのか――高知新聞流『記者公僕論』」を書いています。高知新聞も道新と並んで警察捜査費の不正を暴いた新聞社ですが、警察担当キャップは取材した内容を書くかどうか悩んだそうです。「記者の取った情報は記者個人のものでも会社のものでもない。書け。書いたことによって特オチが続いてもいい」と、当時の社会部長に言われて踏み切った事情が紹介されています。道新も不正追及当時はそうした高揚感があったはずなのに……。
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by ydando | 2006-05-08 19:34 | ジャーナリズム
荒川選手取材に見えたメディアの国際落差
 冬のオリンピック終盤、荒川静香選手の金メダル獲得でフラストレーションが解消された方が多いでしょうが、私のようにネットとともにマスメディアをウオッチしている人間には逆に大落胆の事件でした。翌日、新聞・テレビが横並びで「金メダルを取ったら忙しくて眠れない」発言を報じたのに内心、引っかかって、荒川さんは本当にこんな能天気な言葉しか発しなかったのか、調べに行きました。Googleニュース米国版に「arakawa」を入れるだけで、APの荒川インタビュー記事「Gold medal brings Arakawa attention, donuts 」を見つけ出せました。

 最初に確かに「眠れない」発言もありましたが、その直後に彼女が育った仙台のスケートリンクが閉鎖された事に触れ“The rink where I did most of my fundamental training has closed down. It’s very sad”と言い、日本では練習の場がないので米国に行かざるを得ないと訴えていたのです。翌日に知りますが、彼女を育てたコーチが50人の教え子と行き場を失ったのでした。経営難で消えたリンクは全国各地にあり、スケート界の危機を彼女は語っていたのです。

 「最低の結果。厳粛に受け止めたい」と総括した日本選手団長に、ブログでいくつも手厳しい批判が出ていました。例えば「JOCの底の浅さ」はこう批判します。「ろくに練習に集中できる環境を保証もしないで『メダル、メダル』とノルマだけを課していたのはどこのどいつだ。世界の桧舞台で戦ってきた選手や関係者達がいる一方で、『ご苦労様』という一声よりも『成績不振』『猛省を』などという言葉を偉そうにコメントするとは何様のつもりか」

 お人形と言われた荒川選手が金メダルを手にしてから、敢えて口にした練習環境への憤りを、日本のマスメディアは目の前にしながら一行もトリノから送ってこなかった――その感度の低さは驚くばかりです。日本語の壁に守られているから成立する日本マスメディアの貧困を、ブログでは随分前から言われてきました。その現物が突然、目の前に現れたと言うべきです。

 私が今いる新聞社の翌日紙面で、京都総局の記者が以前から問題意識を持って、荒川インタビューとは別にスケートリンクが消える状況を独自にまとめて大阪の社会面に書いてくれたのが唯一の救いです。これは東京紙面には載りませんでした。その後で他の有力紙も同様のレポートを出しました。トリノの各社取材班はいったい何を考えて取材していたのでしょうか。恥じることなくジャーナリストと言えるのか――これは本当に重症です。

 【追補】オリンピック・チャンピオンになった選手がその場で、かく言っているというニュース性を理解しない批判がありました。念のために言うと、新聞社内でも批判を公表していますし、多くの賛同を得ています。以前に書いたことがあるからというのと、次元が違います。
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by ydando | 2006-03-01 21:56 | ジャーナリズム
夏までに日本版オーマイニュース立ち上げ
 韓国で成功したオーマイニュースが「日本版」を計画中と言われてから久しく、もう消えたのかと思っていたら、ソフトバンクが資金援助して8月までに「オーマイニュースが日本進出」とアナウンスされました。事前にオー・ヨンホ社長と会っている時事通信・湯川さんから「日本版オーマイニュースの狙いは打倒権威主義」のような情報も流れています。

 韓国では4万人以上の市民記者を集めて、既存メディアに負けぬ影響力を得ています。日本でもそれ以上の数の市民記者を集めたいそう。ネット上の反応をいくつか見ると、湯川さんも含め、否定的なものの方が多いかも。玄人っぽい検討をしている「日本版オーマイ・ニュースは成功するか」(元整理記者の雑記帳)を一例に挙げましょう。

 ソフトバンクの資金は総額13億円で、半分弱は映像ニュースサービスと英語版オーマイニュースの強化に使われ、残り7億円近くが日本版に投下されて、捨て金とは言えない大きさです。ソフトバンク=ヤフーであり、ヤフーがポータルサイトだけの存在から、やはりマスメディアになりたいのか、気になるところ。日本版オーマイニュースが成功すれば可能性大ですが、見通しが全くつかない現時点では「封印」された意図なのだと考えています。

 日本における、いわゆるシビック・ジャーナリズムの現状と課題は「市民記者サイトは高い敷居を持つべし [ブログ時評30]」でまとめた通りです。本格的に動き出した「ツカサネット新聞」にもがっかりでしたし、ライブドアPJなど編集部の質の悪さから市民ジャーナリズムにとって害毒の方が大きい存在です。しかし、この形式はまだ日本では可能性を試されたとは言えないと思います。本格的な編集部を持って引っ張り、サポートした結果を、我々は見ていないのです。数万人規模の目と耳と有機的に結合する編集部をいかに造るかが、最大の難関です。

 この夏という時点を考えると、既存メディア側にも市民ジャーナリズムと結ぶ色々な動きが大きくなっているかも知れません。

 【関連】「ライブドアPJに忠告し忘れた欠陥 [ブログ時評10]」
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by ydando | 2006-02-24 02:08 | ジャーナリズム
市民ジャーナリズムを岩波『世界』に転載して1年
 今月発売されている岩波書店の月刊誌『世界』3月号で、昨年4月号から始めた、このコラムの転載が12回1年分になりました。以下に一覧を作りました。市民によるブログ言論のエッセンスを、紙メディアである月刊誌から大部数のメールマガジンまで通して掲載し、市民ジャーナリズムを育てる試みです。こうして見ると第一段階はだいたい達成したかと思えます。

4月号:「ライブドアPJに忠告し忘れた欠陥 [ブログ時評10]」
5月号:BSEはメディアリテラシー力を問う [ブログ時評15]」
    「輝きが無いソニー改革人事の違和感 [ブログ時評14]」
6月号:「実名記者ブログと素人の踏切事故追究 [ブログ時評17]」
    「市民参加のジャーナリズムは既に存在」
7月号:「T記者名暴露・新時代象徴なら貧しすぎる [ブログ時評23]」
    「国際熱核融合炉の誘致断念は大歓迎」
8月号:「日本の自動車産業は世界を幸せにしない」
9月号:「無理を重ねた地上デジタルの副産物 [ブログ時評29]」
    「香港映画『頭文字D』を見た海外読者からのメールです」
10月号:「小泉郵政解散へ賛成論と反対論まとめ [ブログ時評32]」
11月号:「ドイツ総選挙と比べながら考えた [ブログ時評34] 」
12月号:「医療制度改革試案とメディアの虚栄 [ブログ時評37]」
1月号:「仏の暴動と名神7ブラジル人死亡事故 [ブログ時評40]」
2月号:「株狂騒の裏に潜んでいた経済中枢の欠陥 [ブログ時評42] 」
3月号:「ライブドア『虚業の楼閣』めぐる攻防 [ブログ時評46] 」

 ライブドアPJで始まって3月号もライブドア事件だったところが、この1年を象徴していますね。実はやはり老舗の某月刊誌も追いかけて類似企画を始めていますが、ジャーナリスティックな拾い方が出来ていないので、全く別物になっています。1年で取り上げさせていただいた多数の皆さんからの引用は、それぞれが短くても、問題に対して切れ込みが良い構成になっているはずです。それが1997年から市民社会の知的ピークを収集し続けている私のノウハウです。こうして集めると、市民ジャーナリズムとして何かをはっきり語っています。

 当初の予測では、1年後の今、マスメディアによる市民との双方向交流がどんどん広がっているはずでしたが、遅れ気味です。反対に正確かどうかは別として、マスコミに代わって一次情報を語るようなブログが増えています。新聞社の同僚にプロ歌手との対比で「ブログ=カラオケ」論を唱える人がいて、プロとは言えないが限りなく本物に接近できる擬似的なジャーナリスムだと判断しています。でも、その立場を脅かすほどに、恐ろしいブログが出現してきましたね。

 次の1年は広い意味の双方向交流が本当の内実を持ち始めるだろうと考えています。私の立場は「誰だってジャーナリスト~プロだけのものではない」で書いた通り、ジャーナリスムとは当該市民社会において「隠されがちな事実を伝え、見えなかった意味を言う」ことと一貫しています。メディア側の気付いた人間と、メディアに見えないものを発信するブログとの協働作業も現れるようになるでしょう。インターネットですから玉石混淆はいつものことです。どれもが素晴らしいレベルであることなどあり得ません。でも、拾い集めれば、ひと味もふた味も違うものを可視化できるのです。
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by ydando | 2006-02-14 18:36 | ジャーナリズム
双方向交流へ本格的な取り組み開始 [ブログ時評41]
 マスメディアと受け手の市民の間で望まれていた双方向交流に、ブログで本格的に取り組む新聞社が出てきた。既に神奈川新聞の「カナロコ」があるではないか――と言われそうだが、残念ながらカナロコはネットで評判になったほどには成果を挙げていない。素人記者のブログには反応があったが、新聞本体のニュースへのコメントはほとんどなく、メディアと市民の交流になっていない。新たに取り組んでいるのが毎日新聞の「まいまいクラブ」と中国新聞の「ふれあい」である。スタートは中国新聞の方が少し早い。どちらも読むのは自由だがコメントを書き込むには、住所や氏名など登録が必要になっている。トラックバックは受け付けない。

 中国新聞のブログは3タイプで出来ている。討論の広場「わいわい討論」は当初「広島東洋カープの再建策」をテーマに話し合い、そこで上がった声を5回にわたって新聞紙面に特集するところまで進めている。次のテーマは女児殺害事件を受けて「子ども、まちの安全」とサッカーの「今季のサンフレどうだった?」になった。編集委員と記者2人の計3人が担当、「ふれあい@編集部のブログ」など随所で読者と対話が成立している。「中国新聞のブログ『ふれあい』」(D4DRナレッジオピニオン)が「いままで紹介してきた時事通信社、フジサンケイビジネスはどちらかというと記者という『専門家』のブログ(つまり、読み物ということです)に重みがあったのですが、『対話』という試みも同時に新聞社で進んでいくのでしょう」と紹介している。

 毎日新聞には紙面の売り物であるコラム「記者の目」を生かした「記者の目・読者の目」や、時事トピックスにテーマを取る「ニュースに一言」などのコーナーがある。「耐震データ偽造問題 どう見ますか?」が話題性があって最もにぎやかだ。ホスト役が女性記者一人で、あまりレスポンスを返していないが、読者側の参加者が増えてきたので、読者同士の対話が成り立ってきた。「投稿に購入者の責任を問うものがありますが、それは酷であるし、少なくとも日本ではほぼ確立されている筈の信頼関係が完全に瓦解することになると思います。物を購入する度に、その信頼性を一々確認している人がどれだけいるでしょうか。例えば、車、テレビ、冷蔵庫、自転車。どれだけ安全性、信頼性を検討、確認するでしょうか」(火の車)などである。記者側が少しでよいから司会役に割って入れば、立派な討論に発展するのに、もったいない。

 「はじめの一歩を踏み出すということに、どれだけのエネルギーが必要かはよくわかるので、感嘆と賞賛の念を禁じえない」と理解しつつも、批判的な意見がある。「まいまいクラブ」でのコメント投稿システムに問題ありと「毎日新聞が双方向性の実験を開始した模様」(坂本の雑感・ひとりごと)が指摘している。「コメントが承認制になっている。っていうかこれ検閲じゃん。と思ってしまう」。「承認はどのようなプロセスで行われているか?承認する判断の基準は何か?」などを明示していないことを批判している。登録した上でコメントを投げて、さらに不透明な承認を待つのではブロガー一般の感覚と合わない。全国紙で初の試みにして、今ひとつ盛り上がっていない理由はここにあるのだろう。

 こうした双方向の試みが進んでいた11月に、マスコミのありようを考えさせる、思わぬ事件があった。読売ウイークリー編集部のブログで1989年の宮崎勤・幼女連続殺人事件で宮崎被告の部屋へ最初に入った読売新聞記者が「新証言」をした。6000点ともいう「おそらく、あの部屋の映像を覚えておられる方は、あのビデオはみんな、アダルトとか盗撮とかロリータとかそんな類のものだと思っているのではないでしょうか。実は違うのです」とし、ビデオも雑誌もほとんどが普通のものだったとした。「その中に『若奥様の生下着』という漫画が1冊ありました。ある民放のカメラクルーがそれを抜き取って、一番上に重ねて撮影したのです。それで、あの雑誌の山が全部、さらにビデオもほとんどがそういう類のものだという、誤ったイメージが流れてしまったのです」。さらに「犯した犯罪からすれば、そのくらいは誤解されても仕方がないかもしれません」とコメントしたのである。

 当然のことながら読んだブロガーから反発を呼び、結局、このブログ記事は削除され、トラックバックの受付も停止になった。上の引用も、Googleの一時記録から復活したものを「事件報道のリソースに『恣意的な映像』を加えていたマスコミ、それを黙認するマスコミ」が掲示しており、そこから採った。しかし、こんな良い、生きた教材は無い。当時、何があったか、どうしてそんな「やらせ」を見過ごしたのか、読者と一緒に検証すれば恣意的な報道を防ぐための貴重な指針が得られる。読売ウイークリー編集部は何のためにブログを開設して、話題を提供したのか。逃げている時ではないだろう。ここでこそ本当の「双方向」が欲しかった。
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by ydando | 2005-12-08 19:35 | ジャーナリズム
ブログ開設1年を経て
 このブログを開設して11月末で1年が過ぎました。時事ニュース系のブログ記事をテーマごとに収集し、有名無名にこだわらず、光る書き込みを選んできました。ストーリーにまとめて「ブログ時評**シリーズ」をアップするとともに、私のメールマガジンでも配信してきました。岩波書店の月刊誌『世界』への転載も12月号の「医療制度改革試案とメディアの虚栄」までで9回になりました。

 ほぼ当初計画の通りに進んできたのですが、9月の総選挙が少々、誤算でした。当時は会社で世論調査を担当している立場で選挙情勢分析もしますから、妙な先入観念を持ちたくなかった訳です。微妙な素データのあやを冷静に見るには必要です。ブログでは快刀乱麻にやるのが爽快ですが、あまりどちらかに偏した記事は作りたくなかったのです。注意深い方はこの時期、トーンが変化した事に気付かれたかも知れません。

 そうこうしている間に、春先に動きだし評判になった神奈川新聞「カナロコ」を超える形で、新聞各社でブログに挑戦するところが出てきました。素人ジャーナリズム派のライブドアPJやツカサネット新聞が「市民記者サイトは高い敷居を持つべし」で指摘した程度に止まっている中で、注目すべき現象です。次回はそれをウオッチしてみたいと思っています。
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by ydando | 2005-11-30 20:59 | ジャーナリズム
毎日新聞の《双方向》「まいまいクラブ」がオープン
 双方向コミュニケーションをうたった毎日新聞「まいまいクラブ」が11月14日にオープンしました。「記者の目・読者の目」「ニュースに一言」など提供された話題に読者からコメントが付けられるシステムです。テクノラティなどを見てもあまり話題になっていないようですが、今日15日の日中は非常に重い状態でしたから、相当のアクセスがあったと思われます。

 さて、いま一番コメントが多いコーナーは「暮らしに一言」の「ウォームビズ あなたの省エネ対策は?」の13件です。神奈川新聞カナロコが大評判になった割に、素人記者のブログに反応があっても新聞記者との「双方向交流」の点で成功とは言えませんでした。これを考慮してか、生ニュースではなく、コラムや週替わりのテーマで読者のコメントを引き出そうとしています。ただし、コメントは会員登録をした上で、管理者が読んで承認する仕組みです。書いたら直ぐに掲載されるようなフランクさはありません。

 どう育つのか、見守っていきたいと思いますが、ネットに慣れている人には不自由な印象があるかもしれませんね。毎日新聞のウェブでも案内は目立ちません。何百万部と部数を持つ新聞が1面に社告を出しているですから、当然、人は集まりますが、ブロガーを念頭に置いていないのかもしれません。毎日の「公認」ブログである理系白書ブログなどもオープンに触れていません。
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by ydando | 2005-11-15 23:01 | ジャーナリズム
メディアの公権力監視精神はどこへ [ブログ時評39]
 奈良県「子どもを犯罪の被害から守る条例」が初適用され、家宅捜索を受けた生駒市の無職男性(23)が児童ポルノDVD1枚だけの所持容疑で「書類送検へ」との記事が11月初旬、ほとんどの新聞に出た。児童ポルノ禁止法では単純所持には罰則は無いが、この条例は「30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する」とし、販売目的でない単純所持まで縛ることに、この夏の制定時から異論があった。私が驚いたのは、各紙ともに淡々と事実経過を伝えるだけで何の論評も加えなかったことだ。無職男性は他県での児童ポルノ大量販売事件の捜査から購入者として浮上したらしい。そこで家宅捜索となる時点で、私ならまず疑問を持つ。条例はもう出来てしまったから罪は罪とし、ここまで強制捜査を容認してよいのか。

 「逮捕」と事実関係を誤認しているが、「これってど~なんだろう」の、以下引用する感覚が普通の市民のものではないか。「少し怖い気がした。児童ポルノを販売した側ではなく、購入しても捕まるのだからある意味、性癖や趣味にも弾圧を受けるということになる。しかも家宅捜索までされて成人Hビデオのことまで晒されるなんて!」

 「ついにロリパージ法発動! 奈良県で単純所持容疑による逮捕者が 三次炉DVD一枚でパクられるってよ」はもっと直截に抗議している。「逮捕された23歳の青年は、具体的に児童の人権侵害に何一つ加担していない」「疑いがあったというだけで家宅捜索に踏みきり、たった一枚の裏DVDを探し当てるのに本格的なガサを叩き込んだ」「逮捕された人もどうやらガチロリというわけではなく、全般的な関心を持っているエロマニアは全て弾圧される可能性がある」

 「奈良女児誘拐殺害事件の被告は、高校時代にポルノアニメを見たことで年少女児を性の対象として見るようになったと指摘されています。しかし、そんな説明で単純に納得してしまう、その知的怠惰こそが問題なのです。性犯罪が生じるにはもっと複雑なメカニズムがあるのであって、そこに切り込んでいくことなしに事件の発生を防止することはできません」と、子どもの権利の専門家は言っている。その「奈良県『子どもを犯罪の被害から守る条例(案)』」は単純所持・保管について「児童買春・児童ポルノ法の制定・改正過程でさんざん議論されました。児童買春・児童ポルノ法改正(2004年)で単純所持禁止の宣言規定でさえ導入されなかったのには相応の理由があるのですが、今回の提案はその経緯をほとんど無視しているかのようです」と指摘する。

 条例初適用の場面でメディア側に、家宅捜索という公権力行使へのチェック意思が全く見られなかったことを憂慮する。公権力監視の精神に衰えがあると感じざるを得ない。警察担当は多くの報道機関で駆け出し記者を訓練する格好の場になっている。世間の荒波を知らない若手に社会勉強をしてもらい、個性的なキャラクターが多い警察官との付き合い方も学ぶ。事件・事故の原稿は短いから訓練がし易い。表面的にはそういう事情だが、サツ回りの第一義は警察による公権力行使に不当がないか監視することだと、私は教えられたし、後輩にも教えた。日常の事件事故取材は、不当な人権侵害が無いか、あぶり出す手段のようなものだ。

 NHK大津放送局の警察担当記者による放火事件のショックを、私は報道一般と少し違った文脈から感じている。2年生記者は上司から連日のように叱責されて、うつ病的状態になった。どんな説教をしたのかまでは聞いていないが、サツ回りの第一義をきちんと教えたのだろうか。日常は走り使いをしているようでも、公権力監視の最前線を任されていることを理解させただろうか。理解していたら放火に走ることはなかろう。ブログの世界を見回すと「どこの会社でも放火犯くらい出る。記者だからと非難するのはマスコミ人の思い上がりだ」との批判がある。でも、少しは違うと理解してもらえよう。人権侵害という比較的わかり易い場面の監視訓練を経て、次は行政機関の利権がらみの画策や、為すべきことをしない怠慢のチェックへと進む。先日、「医療制度改革試案とメディアの虚栄 [ブログ時評37]」で論じたように、困ったことに中央官庁周辺でも公権力監視精神に衰えがある。
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by ydando | 2005-11-13 22:06 | ジャーナリズム
民主党代表懇談会セットに新報道機関プラン
 行動派ブロガー、泉あいさんのGripBlogが次々に新機軸を打ち出しています。民主の前原代表に単独インタビューを申し込んでオーケーが出たので、自民党が開く第2回メルマガ・ブログ懇談会(1日:また招待状が来ましたが…)をヒントに、ブロガーによる共同インタビューに切り替えてもらったとのこと。31日に泉さんが募った10人と民主党本部に乗り込むそうです。組閣の日ですね。ニュースが多い日になりそうです。

 もうひとつ、彼女は従来の取材を中断して、「新しい報道機関と記者クラブを作るために走ります」と宣言しています。設立趣旨によれば、市民とジャーナリストの双方向交流の接点が無いために、いつまでも交わらぬレールのようになっているので、その場をビルトインした報道機関を作るのだそうです。言われる通り、そういう接点はマスメディア側が用意するものでしょう。17年前、パソコン通信時代に「サイエンスネット」でその接点を実現したことがあるのですが、しばらく絶えたままです。この時代にこそ必要だと社内でも言っていることです。
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by ydando | 2005-10-29 19:28 | ジャーナリズム
ブログ選挙!? 実力のほどをわきまえて謙虚に
 自民党の幹事長がメルマガやブログの作者を招いて懇談した初物現象も加わってか、「ブログ選挙」という言葉が一人歩きを始めようとしています。ブログの隆盛期とぶつかった総選挙に何らかの影響をもたらすはずですが、ブログの実力はまだ、たかが知れていることをデータで示し、ブロガー側が磨かねばならない課題を指摘したいと思います。

 【簡単なブログ伝播力の測定結果】

 ブロガーの皆さんからも秀作推薦を募り、200編以上のブログ記事を読んで書いた「小泉郵政解散へ賛成論と反対論まとめ [ブログ時評32]」は多くのウェブやブログから好意的な評価をいただきました。例えば「はてなブックマーク」で「このエントリーをブックマークしているユーザー 」の数は50は超えていたようです。

 私の持つ二つのサイト「インターネットで読み解く!」「ブログ時評」とで21日から公開、その後5日間にどれくらい、この「まとめ」にアクセスがあったか集計すると約2万件です。メルマガで配信した約14000部はこれには含みません。

 では2万件のうちブログを経由しきたアクセスはどれくらいでしょうか。「はてなブックマーク」関係やRSSリーダー経由と思われるものを加え、最大に見積もって4000件にしかならないのです。残りの圧倒的多数は個人ニュースサイトと呼ばれるところ経由です。今回の大所は「TBN」「かーずSP」で、前者が3500件、後者が2000件くらい。さらに多数の個人ニュースサイトが参加して例の「津波アクセス」が起きました。

 ブログ上の総選挙をめぐる議論は傍目にはとても盛り上がっているように見えますが、ブログの情報伝播力を客観的に評価すれば、まだ、この程度の力しかありません。あちこちのブログでオススメにしてもらっていても、ブログによるリンクの力は弱いのです。おそらく時事・論壇系のブログに出入りする人口は大した規模でないのでしょう。一方、1日に何万件もアクセスがある個人ニュースサイトはそれぞれに趣味系の強力な売りモノを持っていて、そこに来る人たちの1、2割が時事系の話題に反応する構図になっています。世論に影響を与えるとまでは言わないにせよ、「ブログ選挙スタート」と胸を張るためには、国内で先発しているネットパワー、メルマガや個人ニュースサイトの力を借りざるを得ないと思います。

 【視野狭窄と知的衰弱から脱皮を】

 今回の「まとめ」を書こうと思いついたのは、個々のブログが先鋭であればあるほど視野狭窄に陥る可能性が高いと見たからです。訪問してくる熱心なファンと一緒になって盛り上がってくると、批判的なコメントを残す人に「そんなのは○○派のブログに行ってやれ」と罵声を浴びせる有様にもなっています。解散総選挙となれば論点は非常に多岐になります。どれかを語ったから済むはずもありません。具体的に多くの論点を見てもらうのが一番です。

 私の企画に対して異論もありました。「はてなブックマーク」の多数支持エントリーを集めたら、自然に優れた賛否両論が集まるさ、と楽観的に言われる方がありましたが、すぐに無理と気づかれたようです。賛否のバランスが崩れているし、人気エントリーが質的にも高いとは限らないのは、ちょっと読めば見て取れます。適当なハブサイトが自然に生まれる状況でもありませんでしたし、手間を承知で私の鑑識眼で読み集めるしか無いと判断しました。

 劇場型の「わかりやすさ」に流れる現状では、論点が多い記事を読むのはとても辛いようです。優れた意見も並列でずらりと並べられたのでは、読むのがしんどいのです。今回の「まとめ」について「頭が煮えている私にはちょうど良い」と、どなたかが評されていたように、各要素がどう関連しているのか見えるようにストーリー仕立てになっています。これで必要な視野を確保して各論に踏み込んでいただきたい、というのが私の希望です。既に突っ込んだ各論があちこちで展開され始めています。選挙の裏話的なものに突き進みがちなメディア報道より、しっかりした分析が読めます。この際、広く見渡して勉強しましょう。敢えて申し上げておきます。一言で言える結論しか見えていない知的衰弱が、大盛況のブログにもあると。
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by ydando | 2005-08-30 15:31 | ジャーナリズム