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by ydando
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メディアの公権力監視精神はどこへ [ブログ時評39]
 奈良県「子どもを犯罪の被害から守る条例」が初適用され、家宅捜索を受けた生駒市の無職男性(23)が児童ポルノDVD1枚だけの所持容疑で「書類送検へ」との記事が11月初旬、ほとんどの新聞に出た。児童ポルノ禁止法では単純所持には罰則は無いが、この条例は「30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する」とし、販売目的でない単純所持まで縛ることに、この夏の制定時から異論があった。私が驚いたのは、各紙ともに淡々と事実経過を伝えるだけで何の論評も加えなかったことだ。無職男性は他県での児童ポルノ大量販売事件の捜査から購入者として浮上したらしい。そこで家宅捜索となる時点で、私ならまず疑問を持つ。条例はもう出来てしまったから罪は罪とし、ここまで強制捜査を容認してよいのか。

 「逮捕」と事実関係を誤認しているが、「これってど~なんだろう」の、以下引用する感覚が普通の市民のものではないか。「少し怖い気がした。児童ポルノを販売した側ではなく、購入しても捕まるのだからある意味、性癖や趣味にも弾圧を受けるということになる。しかも家宅捜索までされて成人Hビデオのことまで晒されるなんて!」

 「ついにロリパージ法発動! 奈良県で単純所持容疑による逮捕者が 三次炉DVD一枚でパクられるってよ」はもっと直截に抗議している。「逮捕された23歳の青年は、具体的に児童の人権侵害に何一つ加担していない」「疑いがあったというだけで家宅捜索に踏みきり、たった一枚の裏DVDを探し当てるのに本格的なガサを叩き込んだ」「逮捕された人もどうやらガチロリというわけではなく、全般的な関心を持っているエロマニアは全て弾圧される可能性がある」

 「奈良女児誘拐殺害事件の被告は、高校時代にポルノアニメを見たことで年少女児を性の対象として見るようになったと指摘されています。しかし、そんな説明で単純に納得してしまう、その知的怠惰こそが問題なのです。性犯罪が生じるにはもっと複雑なメカニズムがあるのであって、そこに切り込んでいくことなしに事件の発生を防止することはできません」と、子どもの権利の専門家は言っている。その「奈良県『子どもを犯罪の被害から守る条例(案)』」は単純所持・保管について「児童買春・児童ポルノ法の制定・改正過程でさんざん議論されました。児童買春・児童ポルノ法改正(2004年)で単純所持禁止の宣言規定でさえ導入されなかったのには相応の理由があるのですが、今回の提案はその経緯をほとんど無視しているかのようです」と指摘する。

 条例初適用の場面でメディア側に、家宅捜索という公権力行使へのチェック意思が全く見られなかったことを憂慮する。公権力監視の精神に衰えがあると感じざるを得ない。警察担当は多くの報道機関で駆け出し記者を訓練する格好の場になっている。世間の荒波を知らない若手に社会勉強をしてもらい、個性的なキャラクターが多い警察官との付き合い方も学ぶ。事件・事故の原稿は短いから訓練がし易い。表面的にはそういう事情だが、サツ回りの第一義は警察による公権力行使に不当がないか監視することだと、私は教えられたし、後輩にも教えた。日常の事件事故取材は、不当な人権侵害が無いか、あぶり出す手段のようなものだ。

 NHK大津放送局の警察担当記者による放火事件のショックを、私は報道一般と少し違った文脈から感じている。2年生記者は上司から連日のように叱責されて、うつ病的状態になった。どんな説教をしたのかまでは聞いていないが、サツ回りの第一義をきちんと教えたのだろうか。日常は走り使いをしているようでも、公権力監視の最前線を任されていることを理解させただろうか。理解していたら放火に走ることはなかろう。ブログの世界を見回すと「どこの会社でも放火犯くらい出る。記者だからと非難するのはマスコミ人の思い上がりだ」との批判がある。でも、少しは違うと理解してもらえよう。人権侵害という比較的わかり易い場面の監視訓練を経て、次は行政機関の利権がらみの画策や、為すべきことをしない怠慢のチェックへと進む。先日、「医療制度改革試案とメディアの虚栄 [ブログ時評37]」で論じたように、困ったことに中央官庁周辺でも公権力監視精神に衰えがある。
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by ydando | 2005-11-13 22:06 | ジャーナリズム
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