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by ydando
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ニートだけか、生き方の迷い子たち [ブログ時評01]
 2004年5月にフリーター問題の陰に隠れて見えなかった働かぬ若年層「ニート」(NEET:Not in Employment, Education or Training)の存在が表面化し、秋になると各種の統計データが出され、ブログの世界あちこちで議論が盛り上がっている。厚生労働省のまとめでは2003年現在、15~34歳層で、フリーター217万人、働く意欲はある失業者164万人に対し、働くことも学ぶことも放棄しているニートは52万人とされる。

 最新のヒットは「R::30マーケティング社会時評」の「ニートになりたい僕たち」。「要するに結婚してない無職男性がカジテツって自称できないからニートなんだね。女性は結婚せず仕事もしなくてもカジテツかよ。男でもカジテツって呼べよ!とか思うのは僕だけだろうか」と意外な切り口を打ち出した。

 「実は以前から人に『将来何を目指しているの?』と聞かれるたびに『専業主夫』と、半ば冗談で答えるようにしている」「僕がニートという言葉に何かもやもやしたものを感じていた理由というのは、この言葉自体が『いい年した男性は結婚して働いているべきだ』という社会的偏見をたっぷりと含んでいるからじゃないのか」と、世間的常識にしっぺ返しをしたのが受けて、3日間で6000人以上が訪れたそうだ。

 むしろ面白いのは、これに続いて書いた「結婚したら負けかなと思ってる」で「ニートと非婚化の何が共通しているかというと、それは親の存在だ。ニートでも『むりやり就職しなくてもいいという親』の存在がニートを(経済的、精神的に)許してしまっているという声があるが、結婚だって同じなのである」と少子・非婚化との関わりを見つけている点だろう。ニートの親世代はいわゆる団塊の世代であり、夫婦は自分勝手をしている家庭内別居状態が多い。そんな結婚をしてもと子ども世代は思う。同様に会社人間の父親の背中を見て、こうはなりたくないと思う若者が出て不思議はない。

 「ホームレス問題対策と自立支援:ミッドナイト・ホームレス・ブルー」の「ニートと引きこもり&フリーター(1)」も気になる問題の立て方をしている。裏付けには当事者だからこその実感も混じっているかも知れない。

 「ホームレスのアンケート調査などを比べると、引きこもりと似通った点が多い」「少なくともホームレスの一部は、まずまちがいなく引きこもりとおなじメンタリティを持っているだろう」「ホームレスの問題を単なる失業問題と同意に解釈している人も多いと思う。だが、単なる失業者ならいざ知らず、ニートや引きこもりは明らかに雇用の問題ではない。そして、彼らがなんらかの事情で住む家を失ったとき、その先に待ち受けているのはホームレス状態である」

 ブログ上にはニートあるいは、その寸前らしい人のものも幾つも見つけられる。「ターミネイターにならないために--フリーターの本当の姿を知ってください! フリーターが語る渡り奉公人事情 」の「ガラスの板~赤信号」は、服がボロボロで面接に行けなくなる、服毒自殺に失敗、街角のフリーペーパー情報誌にさえ手が出せなくなる「退行」の例を恐ろしくリアルに読ませてくれる。フリーターからニートや引きこもり、ホームレスと結ぶ内的な脈絡が存在すると考えてよかろう。

 こうして52万人ニートの問題は、非婚化からホームレスまで実に幅広い社会的関連を持つと知れる。ニートは英国で出来た概念だが、日本でも同じ実情・実態と考えるべきではなかろう。このあたりで専門家の意見も聞いてみたい。

 「ニート――フリーターでもなく失業者でもなく」(幻冬舎)を書いた玄田有史・東大助教授にインタビューをしてきたという「Talk & Diary」の「"個性"を強制する教育システム??」は玄田助教授の言葉としてこう伝える。

 「ニートの一番の問題は、『何でもかんでも個性を出せという教育だ』とおっしゃった。『個性なんてみんなにあるもんじゃない。特に個性や才能のない人はどうすればいいの?普通の人にとって、とても生きにくい世の中になっている。そういう意味では、ニートというのは特別な問題ではなく、この社会のすべての人の問題なのだ』というのだ」。そして、作者は、学区制を廃止した上で生徒が選択できるよう各都立高校に特徴を出せと簡単に言い募る都教委の姿勢に疑問を投げる。日本の社会はどうしてかくも、みんな一律が好きなのか。少し前までは平均点の子ばかりにしようとし、気が付けば、今度はみんな個性がある子ばかりとは。

 マスメディアがこれまで伝えてきた中には、ニートに発達障害のようなものが関係する見方もある。一部に可能性があることは否定しないが、本筋は違おう。私が2年前に書いた第124回「少子化対策の的は外れるばかり」で、精神分析家・野田正彰さんの講演「少年犯罪と教育―エピソードを持って生きよう」を引用している。

 「欧米でも『一人っ子的二人っ子』は日本より早く到来しましたが、日本とは対処が違いました。欧米では、子どもたちどうしの社会をつくることを進めた」「日本では、細切れのスキルを付けさせようとしました。この結果、自閉型の遊びが増えました。ゲームウオッチ、テレビゲームがそれです」
 「その結果か、感情表現が乏しくなりました」「奇妙なことに、『心が傷つく』という不可思議な言葉が当り前に多用されるようになりました」「傷つかなければ人間でないように思い始め、さらに『心が傷つく』と、『心』を実体化させるようになりました。『心』は実体ではなく、人と人との関係の中で生まれるものにもかかわらず、『心』を実体化させることによって、ただ耐えるだけになってしまった」

 他人と結んだ関係の中にこそ、その人の本質が存在する――社会的動物としての人間存在が理解されず、日本では特異な誤解が広まってしまった。非婚化は相手を考えない身勝手な結婚観を自分の「心」だと決めつける結果だし、他人との間に関係を築くトレーニングが乏しいために、引きこもりから抜け出しにくい。それは少年犯罪、ホームレス状態へも延びていく。10年、20年先を考えることもなく、少子化対策に表面的な手しか打てない政府と合わせて「国に続き個人も生き方モデルを見失った」と私は総括した。

 米国ではニートや引きこもりは問題にならないし、女性が一生に産む子供の数、合計特殊出生率が「2」を超える唯一の先進国である。ヒスパニック系が持ち上げている面があるものの白人も出生率が高い。何故だろう。私が推察するところ宗教の力だ。ブッシュ大統領再選には宗教右派の力が絶大だったとされる。葬式宗教ばかりの日本人と違い、日曜以外にも教会に足を運ぶ人たちは「生き方の迷い子」にはならないはずである。

追補】米国の市民生活における宗教の大きさは、日本人の理解を超えるかもしれない。第29回「過労死と働くことの意味」で紹介した「仕事中心性・国際調査」では個人生活を100点満点で評価して、「レジャー、地域社会、仕事、宗教、家庭」の5部門に割り振ると、米国人は宗教に10点くらいを配分するのが当たり前になっている。
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by ydando | 2004-11-28 15:31 | 社会・教育
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